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令嬢戦記~断罪された侯爵令嬢、妖精戦闘機で天翔けて逆転する~  作者: 奏楽雅


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24/40

第24話:結納品

応接室の扉の前に立っていた、正装したフットマンの二人が、両開きの扉を室内に向かって静かに押し開けてくれる。


開くと同時に「ジュリアン様、およびスフィアルイーゼ侯爵令嬢でございます!」

家令?が大きな声で私の来訪を告げた。


天井の高い、テラスに続く窓のある、シックな内装の部屋だった。


私は、室内の主人に対して軽くカーテシーを捧げて来訪を示した。


最高礼装であるグランド・トワレットを纏い、ジュリアンの横を、膝をあまり曲げず、足の裏を地面に滑らせるようクリノリンが揺れないように、上半身を固定して歩く。高位貴族の令嬢としてのマナーだ。


ヴァディス伯爵の前で、片足を斜め後ろに引き、背筋を伸ばしたまま垂直に膝を曲げ、目を伏せる。正式なカーテシー。

一連の流れは、既に身に染みついている。


伯爵が頷くのが見えた。

(ああ、記憶にあるお顔だ)


「よく来てくれた。どうぞ掛けてくれたまえ」

私は、ソファの前に立ち、クリノリンの鋼がしなやかにしなるのを感じながら、両手でドレスの端を軽く前に寄せ、背筋をピンと伸ばしたまま浅く腰掛ける。


「流石、王妃になる筈だっただけのことはあるね。完璧な令嬢だ。小さかったころを知ってるだけに感慨深いよ。久しぶり。本当によく来てくれた」


ヴァディスは縁戚にあたる家門で、小さいころに何度も会ったことのある伯爵に褒められるのは嬉しい反面、照れくさかった。


「ご無沙汰しておりました。この度は王国による危機からお救いいただきましてありがとうございます。」


「本来君は、王家の横やりが無ければ、私の娘になったかもしれないんだ、見過ごせないよ」

朗らかな目を私に向けてくる。


「ありがとうございます」

その話は、先日知ったばかりなので。私にとっては居心地の悪い話だ…

心の中での顔は眉がハの字になってしまう。


「折角来て貰ったのに、申し訳ないんだが、実はあまり時間がなくてね」

目を瞑り苦渋そうに伯爵は言い出した。


「父上?」


「王国、いや新国王の動きが早くてね。

反体制陣営の準備が終わる前に攻勢を受けそうなんだよ」


「そんな、アルマリン以外にまで…」


「今夜改めて時間を作るよ、そうだな会食しよう。それで許してくれ」


「はい、わかりました」

私はそう言うしかない、伯爵も飛び回るしかない状況なのだろう。


「ジュリアン、令嬢をエスコートしてあげなさい」

伯爵は既に立ち上がり、ジュリアンにそう言って目配せしている。


「ああ、ビンセントくんを借りても良いかな?戦力把握をしておきたい」


「はい…」

伯爵の意図や目的もわからないが、ビンセントなら上手くやってくれることだろう。


「ありがとう」そう言い残して、早足で家令を連れて部屋から出ていってしまった。


(……肩透かし?)

なんか、緊張していたのが馬鹿みたいだ。


「スフィアは、この領は初めてだろう、街でも案内するよ…」

ジュリアンとしてもバツが悪いのだろう、そう提案してきた。


***


「ここなら、街を一望できる」

ジュリアンは高台にあたる公園に案内してくれた。

左右に広がる街並みと、正面の街の先に海が一望できる場所だった。

「すごい、色とりどりの屋根のお家が多いのね」

青い空に、青い海。白い外壁の家に、赤、黄色、オレンジ、青に緑の屋根。まるで絵の具箱を見ているような街だった。


今の私は、正式なドレス、グランド・トワレットから、軽快で少し裾が短いヴィジット・ドレスに着替えている。

コルセットまで外すと夜の会食前に一時間以上取られるので外さず、髪型も維持するため大きなリボンのついた帽子を被っている。

(早く脱いでしまいたい…)

王都では気にならなかったが、今の私はなんだか、ドレス姿がシックリしない気がしている。

(なんでだろう?)


そのまま、指先でほんの少しだけドレスの布地をつまみ上げて、街の中心地へと降りる。

活気のある街。アルマリンと同じだ。

海に面した港街ということもあるのか、人々の声が大きく威勢がいい。


マルシェも、人を呼び込む声に包まれていた。

「これは、ジュリアン様」

「おお、ジュリアン様」

「また、お忍びで?」

街の人がジュリアンに話しかけてくる。

(あら、ジュリアンは人気者なのね。またと言ってる人もいるけど…)

貴族に普通に話しかけてくる、それを許すという人柄なのだろう。


「こちらのお美しい貴婦人は?」

「すごい綺麗」

小さな女の子が褒めてくれる。

「ありがとう」

「奥方ですか?」

「ジュリアン様はまだ結婚してないだろう」

「じゃあ、婚約者か」

(え?)

「どうかジュリアン様を宜しく」

「この街を宜しく」


肯定も否定もできないまま、話がどんどん進んでく…

ジュリアンも笑ってるだけで何も言わない。

(ジュリアンの作為を感じちゃうわ!)


どうぞ、どうぞと

果物や、食べ物が私とジュリアンに抱えるほど渡されてしまう。


「え、え、え、こ、困ります」

「いいから、いいから」

(これが結納品で私って貰われちゃうのー!?)


お読みいただき有難う御座います。

少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。

作者が折れないため是非ご協力ください。

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