第13話:スクランブル
ジリリリリリリッ! ジリリリリリリッ!
防空警報が鳴り響く中、静かだった格納庫に、人が一人二人と駆け込んでくると、周りが喧騒に包まれた。
「な、何?」ティテの翼から飛び降りる。
ティテの横には大きな穴が開いていて、その下からも声が聞こえる。
その穴の天井部からは光が差し込んできた。眩しくて手庇をつくる。
「ミ、ミレニア…天井が落ちてくる!」
「スフィア。エレベーターです。
少し下がって下さい」
ミレニアに手を引かれ、一歩下げられる。
ものの十数秒でエレベーター?は私の立つ床と同じ高さで止まった。
「退いて退いて!」
後ろからの声に驚くと、A6M5に、殺気立った十数人掛かりで白い服の男たちが押してエレベーターに運んでいく。
私は、ミレニアに手を引かれ、エレベーターに乗せられた。
「この位置からは動かないで下さい」
コクコクと頷く。
エレベーターが軋む音を出しながら、穴から見える空に近づいて行く。
「うわ~」
私は、船の上に出ると、感動で声が漏れた。
雪を纏った山々に囲まれ、白と青の空が広がっていた。船の縁まで駈けると深く青い湖が見て取れた。
だが、上空には10機のA6M5が飛んでいて。先程一緒に昇ってきたA6M5が、飛び立とうとしていて。
エレベーターからは引っ切り無しに、A6M5が運び出されてくる。
「私も、私も出ないと…」
そうミレニアに言うと首を振られた。
「あの機体は、今のままでは運用できません」
「運用?」
「飛んで、着艦して、補給するということです」
「でも、着艦は出来たわ」
「あれは着艦ではないですよ。無理矢理降りただけです」
眉根を寄せて言われた。
「どこが違うの?」
ミレニアは天を仰いだ。
(失礼ね)
「アイランドに行きましょう」
「アイランド?」
ミレニアは艦橋のことですと、甲板上にある建物を指差した。
***
アイランドの中も上に下にの大騒動で、全員が走っていて、歩いているのは私とミレニア位だった。
いくつものラッタルを上り。最後に垂直に近いラッタルを上ると、狭い踊り場に出た。
踊り場は大人一人が立つのが精一杯で、すぐ目の前には数型の大きなレバーを備えた鋼鉄の扉が立ちはだかっていた。
「スフィア。ここが、この船の心臓部。羅針艦橋です」
ミレニアは慣れた手つきで重いレバーを回した。
ギィ、という金属の摩擦音とともに扉が開かれた瞬間、それまでの狭く暗い階段室とは対照的な、強烈な情報の嵐が私を襲った。
扉を跨いだ先は、三十平米位の四方が窓に囲まれた、細長く、それでいて機械がぎっしりと詰まった空間――機械の部屋だった
「全ての窯に火を入れろ! 妖精たちの火と風が絶えないようにしろ!」
鉄の扉一枚を隔てただけで、戦場へと放り出されたような錯覚に陥る。
振り返れば、今通ってきた扉のすぐ脇に一段低い場所にも部屋があった。
「そちらは飛行管制所です」
ミレニアが私の視線に気づいて説明してくれる。
そこには、様々な指示を矢継ぎ早に出している人たちが詰めていた。
外を見ている人の視線の先には、陽光を反射する広大な甲板の上を、信号旗を振って何かを伝える人や、機体に向かって走り回る人が豆粒のように見えた。
(みんな必死…)
コクリと喉が鳴る。
視線を戻し、羅針艦橋の一段高い固定椅子に座った人物を見る。
座っていたのはビンセントで、私に気づくと横に来るように促した。
「申し訳ありません、お嬢様。今は緊急時にて失礼をお許しください」
「かまいません、何事なのですか?」
「偵察機が此方に向かっている、機体を発見しました」
「王国ですか?」
私が聞くと、ビンセントは緩く首を振った。
「通信状況が悪く、詳細の確認が取れておりません。
このような場所ですので、敵機と想定し迎撃態勢を取っております」
「この船は飛んで逃げられないのですか?」
「錨泊していたため、全ての窯は落していませんでしたが、急いでも始動まで20分は掛かる見込みです」
(そんなに…)
「やっぱり、私もティテで…」
そう言うと、ミレニアにガシッっと肩を強く押さえられた。
「な、なな、何?」
「何じゃありません大人しくしていてください」
「ビンセント艦長!敵機が見えます」
右側で双眼鏡を覗いていた人が声を張り上げた。
「数20!」
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