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軍人は戦場レンタルされる  作者: 森羅秋
南天極の古蛇
26/30

26:連携ばっちり

「……よし」


 フェヴァは安堵の息をつくと、コォラが横ではしゃいだ。


「たーまやー!」


「違うだろ。花火にするな」


 ロケットランチャーを肩から降ろしつつフェヴァがジト目になると、コォラはゴーグルをつけながら、横たわるフロストサーペントを示した。


「多少汚いけど花火みたいだったじゃん。きれぇな赤が白い色に混じってピンク色に……って思うと、感動しねぇ?」


「しねぇよ。それに雪の上に血を垂らしても赤いままだ。絵具じゃない」


「ええー。ピンク色を想像しようぜ。夢がないんだから」


「そんな夢捨ててしまえ」


 そう吐き捨てながら、フェヴァはフロストサーペントを注視する。頭をふっ飛ばしたので流石に生きてはいないだろう。


「……死んでいる、よな?」


 過去に頭をふっ飛ばしても死ななかったクリーチャーもいた。そのためフェヴァはやや疑心を募らせている。


 コォラはさり気なくフェヴァからロケットランチャーを奪い、胸ポケットに突っ込む。


「さぁな。まぁ生きていてもこの寒さで凍死は確実。放っておけって」


「……そうだな」


「そんなに不安なら、確認しに向かうか? 俺も付き合うぜ」


 コォラが胸ポケットに手を突っ込んで、何かを探している。

 フェヴァは首を横に振った。


「真っ平御免だ」


「えー。面白くなーい。意気地なしフェヴァめ」


 コォラは茶化すように言いながら後ろ向きに歩き、フェヴァから離れて研究施設のゲージへ進んだ。


 フェヴァは深いため息をつきながら、左手で顔半分を隠して下を向く。


「なんとでも言え。俺はもー……ツッコミに疲れた」


 コォラはぴたりと止まり、両手を振りながら笑った。


「じゃあ。また明日頼む」


「待て。今日の分のツッコミが終わったみたいな言い方するんじゃない」


 頭上からプロペラ音が近づいてくる。

 軍事用輸送ヘリがこちらにやってきているようだ。


「キシシ。疲れたなら消耗電池を背中にはめてやろうか?」


「人を何だと思っている!」


 フェヴァが怒鳴りながら顔を上げ、コォラを見た。

 そして彼が避難用の発煙筒を両手に持っていることに気づいて、フェヴァは眉をひそめながら、全体を見た。


 コォラはヘリポートの中央に立ち、指示をしながらゆっくりと後ろに下がっていた。


 フェヴァは頭痛がするように頭に手を添え、首元についている風射隊専用の連絡無線機に話しかける。


「コォラ。ちょっと聞いていいか?」


『なんだ?』


「お前、いつから誘導している?」


『あー? 蛇を落っことしてちょっとした後にな。フェヴァが寒いって言ってたから、早く帰ろうと思ってさー』


 フェヴァはジト目で発煙筒を見据えた。


「その発煙筒はいつから入れていたんだ?」


『乗って来た時に』


 フェヴァはもう一度、頭痛がするように頭を押さえた。


「入れた物は必ず俺に伝えてくれ」


 走行している間に、軍事用輸送ヘリが無事にヘリポートに到着する。やや雪に埋まっているが飛び立つのは問題なさそうだ。


 フェヴァはヘリを観察した。ハッチにフロストサーペントが噛みついて出来たへこみがあり、いくつか牙が突き刺さっていた。


(もし、蛇が大きかったから……ヘリごと飲み込まれていたかもしれないな)


 そうすると助ける手立てがなかったと思いながら、牙の本数と位置をチェックする。そこへコォラが、雪を掻き分けながらやってきた。


「残念ながらエロ本はなかったんだよなー」


「いらねぇ。盗った備品の種類を書きたいだけだ」


「真面目だねぇ」


 コォラは肩をすくめると、コックピットの窓から機長が顔を出して手を振った。


「お疲れさん。帰ろうぜ。乗れや」


「おーう」


 コォラが手を振って応えると、ハッチが開いた。


「お、そうだ」


 閃いたとばかりにコォラは足元の雪を掻き集めて、足元にばらまく。


 フェヴァは装甲を破って突きでているフロストサーペントの牙を見た。一番長くて太い牙の先端から液体が垂れている。おそらく毒液だ。


(通る時に大腿部に引っかかりそうだな)


 そう思い、フェヴァはバックパックに入れている布を取り出して拭き、ビニール袋に入れて収めた。


 改めて、乗っていた研究員たちを一瞥する。全員が目を回しており、椅子に座ったままぐったりしていた。


「終わったぜー」


 コォラはアラストの前に行き、平手で頬をぺしんと叩いた。


「コォラ。殺すなよ」


 フェヴァがジト目で眺めるので、コォラは「キシシ」と笑った。


「安心しろ。遍七刻国民だから手加減しまくってるって。それにこんな小物、殺ってもおもしろくねーし」


 そう言いながら、コォラはアラストの脛を蹴った。


「うぐあ!」


 弁慶の泣き所といわれる脛は、少し蹴っただけでも痛みが走る。アラストは脛を押さえて痛みに呻く。


「え、何が……」


 アラストの声が目覚ましになったのか、研究員たちが次々と目を覚まし、呆然とした顔で互いを見合わせたあと、最後にコォラとフェヴァに注目する。


 コォラは胸を張り、にやりと笑った。


「蛇、片付けたぜ。軍人レンタルありがとーな!」



読んで頂き有難うございました。

次回は8/20更新です。

物語が好みでしたら☆応援して頂けると嬉しいです。

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