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軍人は戦場レンタルされる  作者: 森羅秋
南天極の古蛇
18/30

18:ジョーカー候補

「……これは」


 答えが分かるからこそ、フェヴァはあえて聞き返した。

 

 コォラはにたりと笑って胸ポケットをポンポンと叩いた。

 

 クロスコードに収納されている任務指示書の一部である。

 今更出すのかと怒鳴りたくなったが、時間のロスを最小限にするための気遣いだろうと、フェヴァは良い面だけを受け取った。


「……助かった。これを基に行動しよう」


 そうしてサッと配置を頭に入れる。


 地下三階は冷凍保存室、解凍室、巨大収容室、掘削区画。各エリアに封鎖ゲートがある。

 地下四階は機械室があり、冷却や空調、電源設備や非常用冷却タンクなどが置かれている。温度管理の心臓部だ。


「通路に沿って移動すれば間違えることないだろう」


「キシシ、傍にいて良かったコォラ様だろ」


「……傍にいると殴りたくなる」


 フェヴァは冷たい眼差しを向けながら地図をバックパックに入れた。掘削区画に足を向けるとコォラが車両格納庫に視線を向ける。名残惜しそうな表情を見て、フェヴァはため息を吐いた。


「一応言っとくけど、車には乗らないからな」


「いや? 乗らないけど」


 コォラが不思議そうに聞き返したので、フェヴァは驚いたように目を見開く。彼は状況を混乱させるためいつも無茶ぶりをするのだが、今回は物わかりの良さを見せた。何か裏があるのではと勘ぐって、眉をひそめた。


「まともな発言だが……意外な気分だ」


「ん?」


「おびき寄せるために乗ると言い張るかと」


 コォラは頭の後ろで両手を組みながら、車両格納庫とフェヴァを交互に見る。


「まーーーーあ。それも良いんだが……。ほら、俺は敵の正面から攻撃するよりも、後ろ姿を攻撃するのが好きなんだ。驚きと絶望が浮き出た敵の表情を堪能しながら殺す方がスッキリ気分爽快するからな。おまけに反撃を食らわない一石二鳥」


「……せめて奇襲が得意と言え」


 フェヴァは無表情で、ちらりと、ハッサルとサマモリの様子を窺う。彼らはドン引きしており引きつった表情でこちらを見つめていた。


 凶悪のレッテルを貼られるだろうが、取り繕う意味はないので無視する。


「わかっているならいい。行くぞ」


「おっけー行こうぜやったるぜー」


 コォラが手を挙げて喜ぶと、研究員たちを見据える。


「くるか?」


「行きます!」


 呼びかけに乗ったのがハッサルだ。

 その場にいる全員が不思議そうに首をひねった。


「……マジで?」


 てっきり拒否されると思っていたコォラが、苦笑いを浮かべて聞き返す。ハッサルは鼻息を荒くして「勿論です!」と両手を握ってファイティングポーズになった。


「そのために来たんですから。最初に言いましたよね。私、蛇の生態詳しいって」


「いやでも……蛇は蛇でも、常識ではない蛇では……上に逃げた方が」


 サマモリがこわごわと聞き返すと、ハッサルが横を向いてムッとした表情を見せる。


「忘れたんですか。地上に逃げても追って来たじゃないですか。摂氏マイナスで生活できるフロストサーペントがなぜここに陣取っているか。餌があるからじゃない。だったら強い人達の横に居た方が倒せるかもですし、生存率上がります」


「俺、結構見捨てる気だけど?」


 コォラが水を差すが、ハッサルがフェヴァを示す。


「こっちの副隊長さんは常識人です。サマモリさんと同じ匂いがします。案外、見捨ててくれない人です」


「それを言っちゃうのかー。マジで見殺しにするぜ」


 コォラが笑うと、ハッサルが胸を張る。


「別にいいですもん。私も隊長さん見殺しにしてサマモリさん守りますから」


「駄目だってカノノさん。邪魔になるって」


「何を言ってるんですかサマモリさん。私達が邪魔になるはずないじゃないですか。この研究所の間取りを熟知しているし、フロストサーペントだって、大きくなくて腕くらいの太さなら全然問題なかったです。こう、火鉢で、えいって」


 火鉢で取る真似をするハッサルを見て、コォラが腹を抱えて笑った。


「ヒッヒッヒ! やべぇ! まじおもろ。いいぜいいぜついて来なよ。威勢のいい奴は好きだぜ。なぁフェヴァ」


 フェヴァは酷く呆れた目をして、ハッサルとサマモリを眺める。


「……その様子だと置いていくと何しでかすか分からない。ジョーカーはコォラだけで十分だ」


「よしよし。じゃあそこのバカップル。俺が先頭を歩くから後ろついてこい。フェヴァはドンケツな」


 フェヴァは頷いた。


「はい! 頑張ります」


「……すみません。足手まといにならないようにします」


 コォラの後ろにサマモリとハッサルが付くと、フェヴァは最後尾につく。


「コォラ。遅く走れよ」


「おおー。鈍亀で歩くぜ」


 ハッサルが「ドンカメで歩くんですか?」と不思議そうに呟いていたが、二人の研究員はコォラの鈍亀歩行でひぃひぃと息を上げていた。


 こうして掘削区画の巨大な封鎖ゲートに到着。


 ドォン!


 ――した途端、内側から激しい爆発音が轟いた。

 通路内が振動して、ぱらぱらと砂が落ちてきた。





読んで頂き有難うございました。

次回は8/1更新です。

物語が好みでしたら☆応援して頂けると嬉しいです。

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