冬。とても静かな、優しいBGM。
《いつか君に届くまで。》 9話。
宮本武蔵(みやもとむさし。)
狂犬であり、火の玉であった。
場所は、渋谷のアニメイトの裏の路地での戦い。
歴史に名高い
一乗寺下り松の決闘。である。
ただ1人で、敵対するヤンチャグループ、
吉岡一門の100人を切り伏せた武蔵。
命は拾ったが、傷を負い、路地裏にいた。
そこに現れたのは、やはり
魚みてえな細く美しく、色気のある指。
伊藤一刀斎景久(いとういっとうさいかげひさ
)。
であった。
『やれやれ。ボロボロじゃねえか。』
負傷した武蔵を見て、クールに心配をする。
『………伊藤。』
夜のネオンの逆光。
伊藤の眼差し。
『家まで送っててやるよ。
やれやれ。立てるか?』
伊藤は、武蔵へと手を差し出した。
———
シャワーの音が響く、室内。
場所は武蔵の自宅、都内のワンルーム。
とても静かな、優しい音楽がBGM。
『助かったぜ。ありがとうな伊藤。』
シャワーを終えた武蔵。
上半身は裸で、
その鍛え上げられた鋼の肉体は、
生命力に満ち溢れている。
『全くやれやれだぜ。さて、
それじゃあオレは帰るとするかな……』
伊藤がそう言って、立ち上がった時だった、
ドン。
狭いワンルーム。
伊藤の背後には壁。
壁ドン。
『なっ……何するんだ!』
逃げられない伊藤が、困惑の表情。
武蔵、シャワー上がりの、
まだ濡れたままの髪で、
言う。
『なあ。……このまま帰れると思ってるの?』
熱い吐息。
生命力の鼓動。
その目はまさに狂犬。
『……ばっ。ばっか、冗談やめろよ』
伊藤は、武蔵の燃えるその瞳を直視できない。
思わず顔を背けてしまう。
武蔵、
その背けた伊藤の顔、顎に手を添え、
こちらを半ば強制的に向かせた。
『……冗談じゃねえ……って言ったら、
どうする?』
『……え?』
武蔵の燃える息づかいを
感じるほどの超至近距離。
伊藤の心臓は早鐘。
武蔵の唇。
伊藤の唇。
BGMはただ静かに、2人を包んでいた。




