禍事。学園は危険がいっぱい。街は壊滅。初めてのプリクラ。
《いつか君に届くまで。》 10話。
ドン。
パン。
街のあちこちから、銃声が聞こえてくる。
サイレンの音。同時多発に発生する火災。黒煙。
焼け落ちる東京タワー。
こはいかなる禍事ぞ?
2028年6月25日、未明。
突如として現れたのは、歩く死人の群れ。
平和な日常を混沌の渦へとおとしめた。
ゾンビ。
———
『ふ。愚かな。この私に……この 、
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むねよし)。
に、その鈍重な牙が届くと思うてか。えい。』
と、言うなり、ゾンビを一刀のもとに斬り伏せたるは、なんだか久しぶりですね、
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むねよし)。
街と同様に、ここ葉隠学園もゾンビの群れに襲われていた。
ぬいぬい部は、
この緊急事態に全ての部員が集結。
ゾンビ殲滅のため、戦いを始めていた。
『えい。秘技、つばめがえし!』
佐々木小次郎!
『オレは狂犬!』
宮本武蔵(みやもとむさし。)
『バーンナックル! 』
ミコト部長。
『やれやれ。』
そして、
伊藤一刀斎景久(いとういっとうさいかげひさ
)。
たかが歩く死人ごときが敵う相手では無い。
たちまちのうちに学園ゾンビは一掃され、
ぬいぬい部は街の、治安回復へと。
ミコト部長はお留守番。
なぜ、ゾンビなる架空の生物が突如として、
しかも群れで発生したのであろうか?
悪い製薬会社の暗躍?
愚かなる人類への神の涙?
売れ線への二番煎じ?
全ての謎は、劇場版にて解明されるので、
ぜひ映画館へ足をお運び願いたく。候。
———
ぬいぬい部は二手に分かれた。
1年生チーム。
2年生チーム。
どちらも負けるな。頑張れドンドン。
ズビリ。ドバキャ。きゃふん。
煌めく白刃。切断、または両断。。
みたいに、1年生チームの大奮闘。
『なかなからやりおるな、小次郎!』
『お主こそ、感服いたしたぞ、武蔵!』
後に命をかけて決闘を行う、武蔵、小次郎、
互いに背中を預け、共闘する。
一方その頃、2年生チームは、
ゲーセンの前で何やらもたもたしていた。
一刀斎は、半壊の店内を見ながら,
『やれやれ。全く。プリクラ撮りたいぜ。
突然現れた人食うまぬけ、ゾンビ。そんなもんの存在に人々は不慣れゆえ、人類滅亡の可能性はゼロとは断言できねえが、オレは猛烈にプリクラが撮りたい。誰と?もちろん、今、オレの目の前にいる愛しい人。ゾンビが弱すぎて、手を繋いで走るイベントも、ピンチに陥った愛する人を格好良く救出し、あわよくば好きになってもらおうと、企むオレの企みは、完全に破綻した。やれやれ。プリクラ撮りたい。ゾンビを利用した恋愛イベントが、儚きもの。叶わぬ夢なれば、せめてプリクラだけでもお願いしたい。そのプリに、やっぴっぴ。とか、ラブとか落書きしたい。というのは贅沢な望みなのですか?プリクラ。お前を抱きしめたい。』
一刀斎の切なる願い。はたして……
『いいよ……』
柳生ちゃんは、ごく小さく首を縦に。
赤面する照れの極致。
だが、そのキラキラと、
火災の炎を反射させた瞳は
しっかりと一刀斎を見つめていた。
遠くに聞こえる遠吠えの如きサイレンの音。
黒煙の、鼻にツンする焦げ付いた匂い。
「撮るよー。3、2、1……」
プリクラに組み込まれた、からくり音声が
秒を落とす。
サイレンの音も、
秒落としさえも、
ふたりには、
もう、
聞こえてはいなかった。
ただ、
お互いの唇をとおして、微かに、
だが、確かに聞こえていたのは
恋の
………トゥクン。




