夏のオーケストラ。天下無双はギラギラする。灼熱の摂氏39度。
《いつか君に届くまで。》 7話。
葉隠学園に入学したのは、
佐々木小次郎!
だけでは無い。
宮本武蔵。
も、1年生の一人であった。
『天下無双を目指してやるぜ』
こんな感じ。お馴染み。
夏の日差し。蝉のオーケストラ。気温39度。
グラウンドには、再び体育教師、
雷電為右衛門
の声がメガホンする。
『長距離走の授業を今、俺は再び行っている。俺はそれを指導している。しかしマジ熱い。こんな日に長距離走を行うなど、とても正気とは思えない。狂気の沙汰。ああ、帰宅して、ポケモンがやりたい。』
容易に人死にを出してしまう灼熱の39度。
『あ……』
夏にやられて、グラウンドに倒れ込んだのは、
そう、
宮本武蔵。
であった。
『きゃあ。』
『熱中症の危険性』
『人死にが出るわ』
モブ生徒の騒ぎの中、スッと前に出て来た人がいた。
それは、やはり、
魚みてえな指。獲物を射抜く鋭き眼光。
伊藤一刀斎景久(いとういっとうさいかげひさ
)。
『やれやれ。しっかりしろよ。熱中症は本当に危険。こんな小説の中でコミカルに語っていいものでは決して無いと、オレは心得ている。だけども、発生してしまった案件ならば、やれやれ。仕方ない事だとも心得る。オレが保健室に連れて行ってやるとするか。なぜオレは1年生の体育の授業に、こんなにもスムーズに、当然のようにここに登場しているのだろう。それはおそらく、考えても答えの無い問い。それにしてもマフラーが熱い。気絶しそうなほどだ。好きな女からもらったマフラーをこんな灼熱の39度の日に、巻き巻きしているオレを、笑え。やれやれ。』
と、言いながら、クールに熱にやられて頬に熱をもつ
宮本武蔵(みやもとむさし。)
を、軽々とお姫様だっこしたのだ。
『なっ。やめろよ。オレは男だぜ。
己の力で歩いていけらあ。おろせ!』
宮本武蔵(みやもとむさし。)
は、己の鍛え抜いた鋼の肉体、約98kgが、
まるでタンバリンでも振るかの如くに、
お姫様抱っこされたことに驚きを隠せない。
『男だとか。関係ないぜ。やれやれ。
大人しくしてろ。』
逆光の光の輪郭。
伊藤一刀斎景久(いとういっとうさいかげひさ
)。
その時
トゥクン!
宮本武蔵(みやもとむさし。)
の心の臓が、何かに貫かれた。
それは電撃のようであった。
宮本武蔵の頬は、
熱中症の影響であろうか
ピンク色に染まっていた。




