春の木漏れ日の図書館の元気いっぱいキラキラ1年生の恋のキラキラは巌流島でいつか燕……。
——普通に。
クリスマスを経て。
冬休みを経て。
大晦日を経て。
年越しカウントダウンを経て。
お正月を経て。
初詣を経て。
バレンタインを終えて。
普通に。
そして、3月。
———ふたたび………春がきた。
『ワタシ、佐々木小次郎!
この春から、葉隠学園に入学するキラキラの1年生!お勉強も、部活動も、それに、
恋だってキラキラって頑張っちゃうんだからね!……まだ好きな人もいないけど。トホホ♪
武士道といふは死ぬ事と見付けたり。トホホ♪』
サラサラと——
放課後の図書館。
カーテン揺れる。
穏やかな春の日差しが木漏れ日。してる。
『高いとこにある本に手が届きません……』
本棚の高い位置にある、本に手が届かないのは
先ほどの、キラキラ1年生
佐々木小次郎!
『手が届きません。トホホ。』
佐々木小次郎!
がトホホ。していると、
スッ。
と、隣から誰かの手が伸びて、
届かなかった本をスマートに取ってくれた。
『え?……』
佐々木小次郎!
が、そのスマートで、魚みてえな長い指の持ち主、クリスマスのあの夜、
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むねよし)。
からプレゼントしてもらった手編みのマフラーを首元に巻き巻きしている、その人を認識すると同時に
その人はスマートに言った。
『やれやれ。本に手が届かなくてお困りかな?
ほらよ。オレがとってやるよ。だけども、なぜオレはこんなにも都合よくいつも図書館なんかにいるのだろう。やれやれ。きっと何か重大な、それでいて秘密な何かがあるのだろうけど、それは、オレの知るところではない。やれやれ。オレに惚れるなよ?1年生?』
その時、
佐々木小次郎!
の心の音がした。
…………キュン……。
そして、図書館に現れたスマートな巻き巻きの人は、そう。
伊藤一刀斎景久。
であった。
『あ、ありがとうございます!』
佐々木小次郎!
は、軽やかにキラキラとお礼を言った。
春の陽光を受けて、その瞳はキラキラしている。
『まあ。大したことはしてねえよ。
じゃあな。オレは図書館を出て、これから屋上に行く予定です。もちろん屋上は生徒の立ち入りが禁じられている。だけどもオレは屋上に行く。そこで、空を見るのさ。風流だろう?本来ならそこで喫煙なんかをすると、オレのオレらしさにさらにオレが加算されるわけだけど、オレは非喫煙者。やれやれ。じゃあな。1年生。オレの名前は、
伊藤一刀斎景久。今後、何かと、必要になると思うので、名前を名乗っとくぜ。やれやれ。あばよ。』
そう言って、
図書館を出ようと、
佐々木小次郎!
に、くるりと背を向けた。
『あ!あの、ワタシ……』
佐々木小次郎!
がその背中に声をかける。
『佐々木小次郎!
です!先輩の事が好きです!!』
伊藤一刀斎景久。
は、振り返ることなく、
片手をピッと、格好よくそうして
図書館を出て行った。
『伊藤一刀斎景久。先輩……』
………キュン。
春の空を、燕が飛んでいた。




