秋の秋桜と優しい雨と子犬と恋の始まりと……。
『もー。また喧嘩?どうしていっつもそんな乱暴な出来事に関わるの?いつまでもガキんちょなんだから!己を律せよ。未熟者。』
絆創膏を手に、そう言ったのは
この物語の主人公、
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むね
よし)。
『いてて。やれやれ。もっと優しく絆創膏を貼れないのかよ。だけども、こうして好きなお前に、喧嘩でできた大したことの無い傷に絆創膏を貼ってもらう、それはとても嬉しい事です。』
乱雑な絆創膏貼り行為に、やれやれしたのは、
クールな雰囲気なのに、ガキんちょみたいに暴れん坊な一面のある。で、お馴染みの
伊藤一刀斎景久(いとういっとうさいかげひ
さ)。
『なによー。心配して絆創膏してあげてるのに、そんな言い方しないでよ。』
『やれやれ。まあ、サンキューな。と、軽くお礼を言ったのは、それは俺は俺のキャラというか、そういったものを守るため。さらには、まだこのお前への好きだという気持ちを伝える勇気が無いから。やれやれ。好き。』
幼馴染の2人のいつものやりとり。
——
秋だから、とりあえず雨をふらせます。
雨。
街の喧騒も、人々の気持ちも、
雨の音で優しく包まれて、
日常も非日常も、リバーブ多めみたいに曖昧。
傘をさして、水たまりを、歩くのは、
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むね
よし)。
足の運びを敵に読まれないようにするため
幼少期より行ってきた厳しい修行の成果は、
水たまりを歩く足音さえ完全に無音にした。
ふと秋桜の公園の方を見ると、見慣れた傘、
伊藤一刀斎景久(いとういっとうさいかげひ
さ)。
の後ろ姿を発見した。
『こんな雨ふりに、こんなとこで何してるんだろう?また喧嘩かな?まったくもう。』
心配した
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むね
よし)。
が、様子を見るために
伊藤一刀斎景久(いとういっとうさいかげひ
さ)。
へと近づく。
その足音は無音。
声が聞こえる距離まで近づくと、
声が聞こえてきた。
声が聞こえる距離だから。
『やれやれ。こんな雨ふりにこんなとこに1人かよ。仕方ねえな。雨がやむまで俺が一緒にいてやるよ。て事を、俺は今、この公園に捨てられた段ボール、段ボールの中には子犬。その子犬に話しかけている。そして、子犬がこれ以上、雨に濡れてしまわないように、傘をそうしてあげている。なぜそんなことをするのか、それは今、俺の背後に好きな子がいて、俺の声を聞いているって事をわかった上でそうしている。ギャップ萌え発動中。優しさのアピールをしている。いつもは傲岸不遜な態度の俺。先程も喧嘩での怪我、絆創膏という流れがあるから、この優しさアピールはとても効果的だといいな。やれやれ。抱きしめたい。そんな俺を人は計算高い奴だと笑うだろうか?それでもかまわない。それくらいに俺は恋をしているから。やれやれ。抱きしめたい。』
『……いつもはガキんちょみたいに、暴れん坊で、どうしようもないのに……
こんな優しい顔もするんだね………』
……トゥクン……。
この胸の……
……異常心音は……
………胸がしめつけられるような………
……わたし
……もしかして…
。




