夏のグラウンドの日差しと焼けるような日差しと熱中症の中で……。
ツーン。
ツーンとするような、強烈な太陽光線。8月。
生きながらに焼かれているような—
焼かれていないような—
『んっ。』
高校の体育の授業風景、
運動が苦手的な声をあげているのは
この物語の主人公、
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むねよし)。
体育教師の、
雷電爲右エ門。
が声をメガホンする。
『長距離走の授業を今、行っている。俺はそれを指導している。長距離とは、己との戦い。己に打ち勝つ為に精神を鍛える事は、これすなわち先の人生において襲いくる様々な困難、苦難を乗り越えるための必須項目と心得る。熱いなあ。日陰でさぼりてえなあ。』
長距離走訓練の生徒たちは、口々に
雷電爲右エ門。への不満を表明するが、夏は熱い。
その時—
『ふらり。』
熱にやられてしまったのは、
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むねよし)。
グラウンドにふらり倒れた。
きゃあ、大変。
しっかりして、柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むねよし)。
誰か保健室へ連れていってあげて。
騒然とする、名前の無い生徒たち。
その時—
スッ。
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むねよし)。
の身体が宙に浮いた。
『あ。』
それは、魚みてえな長い指。
サラサラの前髪。
整った顔立ち。
細いのに、結構筋肉のついた肉体派。
伊藤一刀斎景久(いとう いっとうさい かげひさ)。
『やれやれ。仕方ない。俺が保健室まで連れていってやるとするか。やれやれ。てゆうか、思ってたより体重が軽くて良かった。俺はこんな時のために、むしろ、この瞬間の為に筋力トレーニングをしてきたのだから。重くて腰砕け、そうなると、俺の生きている価値は無いと言っても過言では無いだろう。汗。体温。熱中症の疑いがあるから、今、恋心を繊細に描写している時間は無いのかもしれない。それでも抑えきれない、溢れるお前へのこの想い。やれやれ。好きだぜ。みたいな告白は今、この段階ではするべきではない。やれやれ。』
と言って、
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むねよし)。
の身体を、いとも簡単にかるがると
お姫様だっこしたのだ。
さらに、
伊藤一刀斎景久(いとう いっとうさい かげひさ)。
は、クールに言う。
『軽いなあ。ちゃんと食べてるのか?夏は朝昼晩きちんと食べないとダメだと、政府も言ってるぜ。いまさらダイエットなんて気にすんなよな。軽い軽い。
折り紙でできてんの?』
ポッ。と
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むねよし)
の頬が熱を帯びる……
『もう!信じらんない。こんな人の生き死にの関わる場面で体重や、ダイエットの話なんて、非常識にもほどがある!
昔っから、そういうデリカシーの無いところがあるんだから!もう!まったく!
でも……こんなに簡単にお姫様だっこしちゃうなんて……たくましくなってるんだね。いつまでも小さい頃の、伊藤一刀斎景久(いとう いっとうさい かげひさ)。では無いんだね……。』
……トゥクン……。
この胸の……
……異常心音は……
………頬の熱は………
……なに?




