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『承認欲求強めの最強勇者、魔法動画でバズって前世のヒロインたちを召喚してしまう~今世の幼馴染が管理しきれないほど愛が重すぎる~』  作者: 悪癖


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第63話 黒い魔女は、世界の回線を静かに奪う

 夜の静寂が支配する株式会社炎の勇者の仮オフィス。


 照明を落とした一室だけが、青白いモニターの光に照らされていた。


 そこへ映し出されているのは、世界地図。


 無数の線が世界中へ張り巡らされ、その中心の一つだけが赤く脈打っている。


 黒沼摩夜は椅子へ深く腰掛けたまま、静かにその光景を眺めていた。


「……次はこちらだね」


 その声には、感情らしい感情はほとんど含まれていない。


 隣に立つ西園寺聖奈もまた、同じ画面へ視線を向ける。


「こちらが真利さんの保有企業ですね」


 摩夜は軽くうなずいた。


 画面中央に企業情報が表示される。


 企業名。


 『オムニスフィア・ネットワークス』


 本拠地。


 アメリカ合衆国。


 カリフォルニア州。


 サンホライズ市。


 世界中の人々が毎日利用する検索サービス。


 動画配信。


 クラウド保存。


 翻訳。


 地図。


 広告配信。


 人工知能。


 電子決済。


 そして数え切れないほどのネットサービスを一つの巨大企業が握っている。


 現代社会の生活基盤そのもの。


 その企業の筆頭株主が、真利・R・ヴァインだった。


「想像以上ですわね……」


 聖奈が静かに息を漏らす。


「これほど生活へ深く入り込んでいるとは思いませんでした。」


「異世界でもそうだった。」


 摩夜は画面を切り替える。


 株式比率。


 子会社一覧。


 関連企業。


 通信網。


 巨大な企業グループが蜘蛛の巣のように世界中へ広がっていた。


「真利は一つの会社を育てるんじゃない。」


「会社が会社を生み、その会社がさらに別の会社を買収する。」


「気付いた時には誰も逆らえなくなる。」


「昔から同じやり方だったよ。」


 聖奈は苦笑した。


「まさに商人らしい戦い方ですわね。」


「うん。」


 摩夜は淡々と続ける。


「そして、この企業は情報戦では最重要拠点。」


「動画も検索も広告も全部ここ。」


「君の会社を世間へ届ける道も、半分以上はここを経由している。」


 株式会社炎の勇者。


 炎の勇者チャンネル。


 世界中へ動画が届く仕組み。


 その土台には、オムニスフィア・ネットワークスのサービスが数多く使われている。


 だからこそ。


 真利は最初から勝っていた。


 自分の土俵で戦わせる限り。


 情報戦だけは絶対に負けない。


 そう考えていたはずだった。


「ですが。」


 聖奈は摩夜へ視線を向ける。


「摩夜さんなら、その土俵ごと壊せます。」


「……買いかぶりだよ。」


「いいえ。」


 即答だった。


「勇者様が戦うなら。」


「私たちは、それぞれの最強で戦います。」


「武なら凛さん。」


「資本なら私。」


「情報なら摩夜さん。」


「勇者様は一人で世界を救われました。」


「ですが現代では、私たちがお支えします。」


 摩夜は一瞬だけ目を細めた。


「君は、本当にぶれないね。」


「当然です。」


 聖奈は優雅に微笑む。


「勇者様のお役に立つこと以上の優先事項はありません。」


 短いやり取り。


 それだけで十分だった。


 摩夜は再びモニターへ向き直る。


 画面には世界中の有料サービス一覧が表示されている。


「攻撃対象を確認。」


 淡々とした声。


「無料利用者には触れない。」


「一般利用者への影響も極力避ける。」


「狙うのは、有料会員への送金管理システムだけ。」


 聖奈が静かにうなずいた。


「真面目に働いている社員の方々まで巻き込むことになります。」


「理解しています。」


「うん。」


 摩夜も否定しない。


「だからこそ最小限。」


「この会社の信用だけを壊す。」


「利用者は被害者。」


「社員も被害者。」


「悪いのは、この会社を戦場へ持ち込んだ真利。」


 その結論は、既に何度も検討を重ねた末のものだった。


 もっと派手な方法はいくらでもある。


 全サーバーを止める。


 全データを消す。


 株式市場を破壊する。


 通信を世界から消す。


 どれも摩夜には実行できる。


 だが、それでは関係ない人々まで傷付く。


 だから選ばなかった。


 代わりに選んだのは。


 企業だけが耐えられない攻撃。


「有料会員。」


「その全員へ。」


「企業資産を送金し続ける。」


 聖奈が画面へ目を向ける。


 送金先。


 世界中。


 数千万。


 いや。


 数億単位の契約者。


「停止条件は。」


「ない。」


「残高がゼロになっても?」


「借りる。」


「借りられなくなったら?」


「売る。」


「売る物がなくなったら?」


「終わり。」


 あまりにも静かな声だった。


 だからこそ恐ろしい。


 これは爆発ではない。


 戦争でもない。


 一つの巨大企業が、自らの仕組みによって静かに資産を失い続けるだけ。


 それだけの攻撃だった。


「もちろん。」


 摩夜はキーボードへ指を置く。


「私がやったとは分からないよう細工はする。」


「完全ではないけどね。」


「いずれ世界中の情報機関は気付く。」


「ブラックハッカー、モルガナが動いたと。」


 その名が世界へ再び現れる。


 それは避けられない。


 だが。


「構わない。」


 摩夜は小さくつぶやいた。


「君へ手を出した代償は。」


「世界中へ教えないと。」


 静かな部屋へ、キーボードを叩く音だけが響き始めた。


 黒い画面へ、次々と文字列が流れていく。


 世界中へ張り巡らされた通信経路。


 数千。


 数万。


 数十万。


 無数の経路が一本の糸となって摩夜の指先へ集まっていた。


「始まった。」


 静かな一言。


 その瞬間だった。


 モニターの一角が赤く点滅する。


『侵入検知』


『異常通信を確認』


『レベル1』


 続いて二つ。


 三つ。


 十。


 百。


 警告が一気に増殖した。


 オムニスフィア・ネットワークス本社。


 世界最高峰と呼ばれる監視システムが、一斉に異常を検知したのだ。


「反応は予想より速い。」


 摩夜は表情を変えない。


 世界中の通信を扱う企業だけある。


 侵入を検知する速度だけなら国家機関にも匹敵する。


 だが。


「検知できることと。」


 カタカタ、と指が動く。


「止められることは別問題。」


 画面の一つへ大量の英数字が流れ込む。


 侵入経路。


 追跡開始。


 逆探知。


 送信元特定。


 世界中の監視網が一斉に動き出した。


 それは巨大企業が誇る人工知能だった。


 異常通信を学習し。


 特徴を抽出し。


 侵入者の位置を割り出す。


 人間では到底追い付けない速度。


 数秒後には、別のモニターへ新たな表示が現れた。


『ホワイトチーム接続』


『インシデントレベル・ブラック』


『全担当者招集』


 摩夜は画面を見つめたまま、小さく笑う。


「本気だね。」


 オムニスフィア・ネットワークスには、世界中から集められた天才がいた。


 表舞台では決して名を明かさない。


 政府からも依頼を受ける超一流のホワイトハッカー。


 彼らが今、世界中から一斉に接続してくる。


「七十二人。」


 聖奈が人数を読み上げる。


「さらに増えています。」


「最終的には百人を超える。」


 摩夜は淡々と答えた。


「世界でも最高クラス。」


「だから、このくらいは当然。」


 次の瞬間。


 画面が変わる。


 世界地図の上へ、青い光点が一斉に広がった。


 ニューヨーク。


 ロンドン。


 ベルリン。


 シンガポール。


 東京。


 ソウル。


 シドニー。


 世界各地から専門家たちが接続している。


 目的は一つ。


 侵入者の正体を暴くこと。


「逆探知開始。」


 摩夜は静かにつぶやく。


 それを待っていた。


「……来た。」


 一本の光が日本列島へ向かって伸びる。


 続いて十本。


 百本。


 千本。


 世界中から無数の視線が日本へ集中する。


「通常なら。」


 摩夜はキーを一つ押した。


「ここで終わり。」


 画面が一瞬だけ暗転する。


 その直後。


 日本へ向かっていた全ての光が、突然四散した。


「え……?」


 思わず聖奈が声を漏らす。


 追跡していた光が。


 日本ではなく。


 世界中へ散らばっていく。


 北極。


 南極。


 砂漠。


 海底。


 無人島。


 人工衛星。


 停止中のサーバー。


 何年も前に役目を終えた通信設備。


 存在しない住所。


 すべてが送信元として表示され始めた。


「逆探知を逆利用した。」


 摩夜が静かに説明する。


「追えば追うほど。」


「偽物が増える。」


 聖奈は目を見開く。


「つまり……」


「百人で追えば。」


「百人分の偽装。」


「千人なら。」


「千通り。」


「一万人なら。」


「一万通り。」


「相手が本気になるほど。」


「迷路は広がる。」


 それは摩夜が異世界で使っていた幻惑魔法と同じ理屈だった。


 敵へ偽物を見せるのではない。


 敵自身へ、無限に選択肢を作らせる。


 自ら迷わせる魔術。


 現代では、それをプログラムだけで再現していた。


「人工知能なら?」


 聖奈が尋ねる。


「学習する。」


「だから。」


 摩夜は新たな画面を開いた。


「学習させる。」


 そこへ表示されたのは数百万件という通信記録。


 すべて偽物。


 存在しない通信。


 存在しない侵入。


 存在しない攻撃。


「毎秒。」


「新しい特徴を覚える。」


「全部。」


「間違い。」


 人工知能は優秀だからこそ。


 学習した。


 学習し続けた。


 そして。


 間違った知識だけを蓄積していく。


 数分後。


 モニターの一つが緑色へ変わる。


『異常なし』


『誤検知』


『監視レベル低下』


 聖奈が息をのむ。


「……自ら安全だと判断しましたの。」


「うん。」


「侵入者はいない。」


「そう学習した。」


 その間も。


 本命の通信だけは静かに流れ続けている。


 誰にも見付からず。


 誰にも止められず。


「異世界でも。」


 摩夜はふっと目を細めた。


「私は正面から戦わない。」


「敵が勝手に負ける盤面を作る。」


「それが魔女だから。」


 静かな部屋へ、再びキーボードを打つ音だけが響く。


 世界最高峰のセキュリティ。


 世界最高峰の人工知能。


 世界最高峰のホワイトハッカー。


 その全員が、たった一人の魔女が作った迷路の中を、必死に走り回っていた。


 世界地図の上を流れていた光点が、一つ、また一つと消えていく。


 オムニスフィア・ネットワークスが誇る監視網は、いまだ侵入者を追い続けていた。


 しかし、その追跡対象はすべて幻影。


 本命へ到達する経路は、誰一人として見付けられていない。


 摩夜は最後のモニターを開いた。


 そこには、巨大な文字が浮かんでいる。


『管理者権限』


『取得完了』


 数秒の沈黙。


 そして。


「終わり。」


 摩夜は短く告げた。


 その声と同時に、画面いっぱいへ新たな表示が広がる。


 世界中のデータセンター。


 数え切れないサーバー。


 無数の管理ノード。


 そのすべてが、一つの管理画面へ統合されていた。


 巨大企業が何十年も積み上げてきた情報基盤。


 今この瞬間だけは、その頂点に座るのは経営者でも技術責任者でもない。


 黒沼摩夜だった。


「……本当に。」


 聖奈は息をのむ。


「掌握してしまいましたのね。」


「うん。」


 摩夜は淡々とうなずく。


「ここまで来れば。」


「もう攻撃じゃない。」


「運営。」


 その言葉には、自慢も高揚もなかった。


 事実を述べただけ。


 彼女の指先が静かに動く。


 新たなウィンドウが一つ。


 また一つ。


 さらに一つ。


 すべて同じ表示だった。


『自動送金管理』


『待機』


『実行条件設定済』


 聖奈は画面を見つめる。


「これが。」


「最初から用意していたもの。」


「そう。」


 摩夜は視線を外さない。


「送金そのものは単純。」


「本当に重要なのは。」


 画面が切り替わる。


 そこへ表示されたのは、無数の監視マークだった。


 自動送金機能の周囲を幾重にも取り囲む保護領域。


 まるで城壁のように幾層にも重なっている。


「守ること。」


 摩夜は静かに言った。


「相手は必ず送金を止めようとする。」


「だから。」


「止められないようにする。」


 聖奈は小さく笑う。


「攻撃より、防御の方が得意なのですね。」


「魔女だから。」


 その一言だけだった。


 異世界でも同じだった。


 敵陣へ踏み込むことよりも。


 自分の領域を築き、その中で敵を翻弄すること。


 それこそが黒き魔女の戦い方。


「この仕組みは。」


 摩夜はモニターへ表示された構成図を眺める。


「一か所を壊しても。」


「別の場所が引き継ぐ。」


「それも止めれば。」


「また別。」


「全部同時には。」


「無理。」


 画面には、世界各地へ広がる送金管理の流れが可視化されている。


 一つを遮断しても。


 別の経路が補完する。


 さらに封じても。


 また別の仕組みが引き継ぐ。


 巨大企業が長年かけて築いた冗長化技術。


 摩夜はその思想を逆手に取り、自らの仕組みをその内部へ溶け込ませていた。


「向こうは。」


 聖奈が静かに問いかける。


「排除できますか。」


 摩夜は首を横へ振った。


「できない。」


 迷いのない断言だった。


「どうして。」


「もう。」


 摩夜は静かにモニターを閉じる。


「この会社が持っている情報。」


「その一部になったから。」


 聖奈はその意味を理解し、表情を引き締める。


「つまり……。」


「消すなら。」


「全部。」


 摩夜は静かな声で続ける。


「オムニスフィア・ネットワークスがネット上に保有している情報。」


「記録。」


「設定。」


「履歴。」


「管理情報。」


「復旧情報。」


「その全部を消さない限り。」


「完全には排除できない。」


 それは、単なる防御ではなかった。


 企業そのものと一体化した状態。


 送金管理だけを切り離すことはできない。


 切り離そうとすれば、企業自身の基盤へ手を入れることになる。


「でも。」


 聖奈は小さく微笑む。


「そんなことは不可能ですわね。」


「うん。」


 摩夜もうなずいた。


「全部を消した時点で。」


「会社そのものが残らない。」


 静かな沈黙が部屋を包む。


 準備は終わった。


 送金の仕組みは配置され。


 それを支える防壁も完成した。


 摩夜は最後に画面を一瞥すると、ゆっくりとキーボードから手を離す。


「じゃあ。」


「帰ろう。」


 送金はまだ始まっていない。


 だが、舞台は整った。


 黒き魔女は、自らの痕跡すら夜の闇へ溶け込ませるように、静かにその場を去っていった。


 静寂が戻った部屋で、摩夜はゆっくりと椅子の背もたれへ身を預けた。


 モニターには、二つの企業名だけが並んでいる。


 アーク・アーマメント・システムズ。


 オムニスフィア・ネットワークス。


 どちらも世界を代表する巨大企業。


 そして、そのどちらも真利・R・ヴァインが支配する中核企業だった。


 聖奈は表示された資料へ視線を落とす。


「これで……。」


「終わりました。」


「うん。」


 摩夜は短く答える。


「私の仕事は。」


 画面が切り替わる。


 そこへ映し出されたのは、真利が保有する企業群を円グラフで示した資産構成だった。


 軍事産業。


 情報通信。


 金融。


 エネルギー。


 医療。


 物流。


 宇宙開発。


 世界中へ広がる巨大な資産網。


 その中で、赤く表示されているのは二つだけ。


 アーク・アーマメント・システムズ。


 オムニスフィア・ネットワークス。


 聖奈は静かに数字を読み上げた。


「この二社だけで……。」


「約六割。」


「そう。」


 摩夜がうなずく。


「真利の資産は。」


「見た目ではまだ減ってない。」


「でも。」


 その細い指が二つの企業名を指す。


「中身は違う。」


「爆弾。」


 その一言で十分だった。


 アーク・アーマメント・システムズでは、凛が仕掛けた仕組みによって世界中の兵器契約が破綻寸前となっている。


 一つの判断を誤れば、違約金と補償だけで企業価値は暴落する。


 一方。


 オムニスフィア・ネットワークスでは、自動送金システムが静かに眠っている。


 起動した瞬間、企業資産は有料会員へ流出し続ける。


 止める術はない。


 二つとも。


 まだ爆発していない。


 だが。


 導火線へ火は点いている。


「つまり。」


 聖奈は資料を閉じた。


「真利さんは現在。」


「総資産の約六割が、いつ吹き飛んでもおかしくない状態ということですわね。」


「そういうこと。」


 摩夜の返事はあまりにもあっさりしていた。


 資産を奪ったわけではない。


 会社を倒産させたわけでもない。


 ただ。


 いつでも崩壊する状態へ変えただけ。


 だからこそ恐ろしい。


 巨大企業ほど、信用の上に成り立っている。


 もし世界中がその事実を知れば。


 株主。


 取引先。


 金融機関。


 すべてが一斉に動き出す。


 その瞬間、本当に六割が吹き飛ぶ。


 そんな均衡の上へ、真利は立たされていた。


「十分です。」


 聖奈はゆっくりとうなずく。


「これ以上は必要ありません。」


 摩夜も異論はない。


「うん。」


「ここから先は。」


 彼女はモニターの電源を一つずつ落としていく。


 世界地図が消え。


 通信ログが消え。


 監視画面も消える。


 最後に部屋へ残ったのは静寂だけだった。


「私は裏。」


「君は表。」


 その役割は最初から決まっていた。


 摩夜は証拠を残さず盤面を整える。


 聖奈は西園寺グループ幹部として、真正面から相手を追い詰める。


 どちらか一人では成立しない。


 だが二人なら、裏と表の両面から包囲できる。


「頃合いを見て。」


 聖奈は静かに微笑んだ。


「私が正面から参ります。」


「真利さんの逃げ道ごと、断たせていただきますわ。」


 その声音には、財閥当主としての揺るぎない自信が宿っていた。


 摩夜は小さく口元を緩める。


「君なら。」


「できる。」


「ありがとうございます。」


 聖奈は一礼する。


「勇者様のためですもの。」


 摩夜は立ち上がり、椅子を静かに机へ戻した。


「じゃあ。」


 黒いパーカーのフードを軽く整えながら、扉へ向かって歩き出す。


 途中で一度だけ立ち止まり、振り返ることなく言った。


「後は任せる。」


 その一言には、完全な信頼が込められていた。


「はい。」


 聖奈は力強くうなずく。


「必ず、勇者様へ手を出したことを後悔させて差し上げます。」


 部屋の扉が静かに閉まる。


 黒き魔女の戦いは終わった。


 そして次は――。


 世界最強の財閥令嬢が、正面から王手をかける番だった。



【SNSへの投稿まとめ】


【速報】

オムニスフィア・ネットワークス、有料会員への大規模送金か?

世界各国で「身に覚えのない入金」が相次いで報告される。


――――――――――――――――


【投稿1】


**@takumi_0418(高橋 匠)**


え……?


口座見たら320万円くらい振り込まれてるんだけど。


怖すぎる。


#オムニスフィア


――――――――――――――――


【投稿2】


**@RinGameLifeりん**


プレミアム会員なんだけど540万入ってるwww


いや笑えねぇ……


誰か同じ人いる?


――――――――――――――――


【投稿3】


**@economy_watch(経済ウォッチ速報)**


日本だけではなく海外でも同様の報告が急増中。


世界規模のシステム障害の可能性。


――――――――――――――――


【投稿4】


**@sakura_works(佐倉 美咲)**


送金元が全部オムニスフィアになってる。


こんなの初めて見た……


――――――――――――――――


【投稿5】


**@neko_punchねこぱんち**


コラ画像だと思ってた。


俺の口座にも入ってた。


終わった。


――――――――――――――――


【投稿6】


**@hiro_studentひろ**


有料会員だけっぽい。


無料のサブ垢は何も起きてない。


――――――――――――――――


【投稿7】


**@Yamada_1989(山田 誠)**


銀行から「高額入金の確認です」って電話来た。


いや俺も知らん。


――――――――――――――――


【投稿8】


**@OL_memo(経理の独り言)**


会社の問い合わせ電話が鳴りっぱなし。


社内が修羅場です。


――――――――――――――――


【投稿9】


**@GlobalNewsJP(Global News)**


Redditも海外SNSもこの話題一色。


完全に世界同時発生。


――――――――――――――――


【投稿10】


**@family_Papa(四児の父)**


家族全員プレミアム会員なんだけど、


全員に数百万円入ってる……


何これ。


――――――――――――――――


【投稿11】


**@legal_question(法務メモ)**


「返してください」って言われても、


勝手に振り込まれたお金ってどう扱うんだ?


――――――――――――――――


【投稿12】


**@mochi_daifukuもち**


公式サイト落ちてる。


サポートも繋がらない。


完全にパンクしてるじゃん。


――――――――――――――――


【投稿13】


**@Investor_K(K投資日記)**


株価エグい。


一直線に落ちてる。


――――――――――――――――


【投稿14】


**@TVnews_clip(ニュース切り抜き)**


テレビつけたら全局これ。


マジで歴史的事件。


――――――――――――――――


【投稿15】


**@mikan_box(みかん箱)**


「システム障害です」


いや障害で数百万送金される会社あるか?w


――――――――――――――――


【投稿16】


**@coffee_break(コーヒー中毒)**


また振り込まれた。


これ止まらないの?


――――――――――――――――


【投稿17】


**@Aoi_07(蒼井)**


二回目確認。


普通に怖い。


――――――――――――――――


【投稿18】


**@salaryman_taro(営業マン太郎)**


口座残高がおかしい。


夢かと思って何回も見直した。


――――――――――――――――


【投稿19】


**@History_otaku(歴史好き)**


これ絶対教科書載る。


「世界同時送金事件」とか名前付きそう。


――――――――――――――――


【投稿20】


**@anonymous_sec(Anonymous)**


社内情報。


ホワイトハッカー総動員中らしい。


それでも止まらない。


――――――――――――――――


【投稿21】


**@insider_today(内部情報速報)**


復旧見込みなし。


って流れてきた。


マジなら終わり。


――――――――――――――――


【投稿22】


**@KAZU_live(KAZU)**


ニュースでは停止って言ってるのに


今また入金されたぞ。


――――――――――――――――


【投稿23】


**@network_engineer(回線屋)**


データセンター切り離しても止まらないとか


設計どうなってるんだよ……


――――――――――――――――


【投稿24】


**@server_room(鯖缶A)**


バックアップ復元でも駄目らしい。


現場胃痛だろこれ。


――――――――――――――――


【投稿25】


**@zero_trace(Zero)**


犯人探しより先に、


どう侵入したか知りたい。


――――――――――――――――


【投稿26】


**@military_eye(軍事・安全保障)**


ここまで来ると国家レベルどころじゃない。


常識外れ。


――――――――――――――――


【投稿27】


**@movie_freak(映画好きトム)**


ハリウッド映画でもこんな脚本ない。


――――――――――――――――


【投稿28】


**@IT_media_now(IT NOW)**


昨日まで世界一安全と言われてた企業が、


今日は世界一危険になってる。


――――――――――――――――


【投稿29】


**@office_worker(名無し会社員)**


真面目に働いてる社員さんが一番気の毒。


責任取れる話じゃない。


――――――――――――――――


【投稿30】


**@market_flash(Market Flash)**


このままだと……


オムニスフィア、本当に倒産あるぞ。


――――――――――――――――


【投稿31】


**@curious_penguinぺんぎん**


誰も止められない送金システムとか


都市伝説じゃなかったの?


――――――――――――――――


【投稿32】


**@breaking24(速報24)**


経済番組で


「史上最大規模の資産流出事件」


って速報出た。


鳥肌。


――――――――――――――――


【投稿33】


**@whitehat_dev(セキュリティ研究員)**


世界中の専門家が集まっても進展ゼロ。


本当に何が起きてるんだ。


――――――――――――――――


【投稿34】


**@lucky_or_not(幸運?)**


今日だけで人生変わった人、


世界中に何百万人いるんだ……


――――――――――――――――


【投稿35】


**@nightowl_02(夜更かし勢)**


これ……


まだ序章なんじゃないか。


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