第六話 話し合い
朝食を食べ終えたシロとネコ。彼らは同じ部屋で作戦会議をすることになった。ポテトチップスをつまみながら。
朝食を食べ終わった事務所内は、どこか静けさを放っていてやや寂しく思えた。そもそも二人しかいないのだから当たり前だったが。机の上は空……ではなく、シロがどこからか持ち出してきたポテトチップスが開けられていた。ネコはというと、冷蔵庫からコーラを取り出し、コップに注いでいる。今から身辺調査の作戦会議をするとは思えないほどのんきなものだった。
「俺氷ほしいな~。」
「了解。」
ネコはシロの要望通り、コップに氷を入れた。ネコのコップにはストローが刺さっている。ことっと音を奏でて机に置くと、ようやくメンバーがそろった。たった二人の何でも屋だ。
「その一。ターゲットの接点の作り方、もしくは創作の仕方。何か意見あるやつ~?」
シロがけだるげに話を振ってきた。振っているようで、ほぼお任せしているようにも見える。つまりは、頭脳戦があまり得意ではない。
「それ僕に全振りしているだろ。仕方ない。作戦は三つある。相手が公務員だから、表はやはりガードが強いだろう。だから三つとも裏から攻める作戦だ。」
プリントにまとめたのか三枚ともシロの前に差し出された。明らかにいやそうな顔をしている。
「ええ、文字読むのもやだ。」
「わがまま言わない。読み上げてやるから覚悟しろ。」
「えー。簡潔にまとめてよ。」
駄々をこねる様子は、まるで散歩中に進行を拒む柴犬のようだった。何が嫌なのかを口で伝えないあたり、めんどくさがり屋なのだろうか。
「はあ、仕方ない。実行係が馬鹿だと困ったもんだな。」
ネコは並べた三枚の紙を引き戻し文字を読み直す。そしてシロにわかりやすいように話した。簡潔に、そして雑に。
「一つ目。いっているといわれてる、キャバクラを調査する。直接か、関節かはお任せ。」
「二つ目。データベースにアクセスして身辺調査をする。これは完全に僕が受け持つ形だ。」
「そして三つ目。お前がキャバ嬢になって接触する。」
シロはしばらくうなずいていたが、数秒が「は?」と素っ頓狂な声を漏らした。
「いやいや、三つ目バグってるだろ。なんでだよ?」
顔を赤らめる……とまでいかないが、大変困惑しているようだ。首をぶんぶんと振って全力拒否していた。
「バカバカ。俺が女装したらターゲット死ぬって。」
まさかのそっちの心配である。シロはついでに他のことも否定した。
「キャバクラに行く確信もないのに調査も接触も厳しいだろ。あと、ネコちゃんが一人で抱えるのは絶対なしな!!俺たちは相棒だ!てか、なんでどっちもキャバクラ関係なんだ!?」
それは魂の叫びのように響き渡る。ネコは耳をふさいでいた。うるさいと言わんばかりに。
しぶしぶ肩を落とすと白状した。
「……こいつの奥さんと子供は表の人間だ。接触して関係を探られたら困る。変装は冗談だ。」
「なんだ冗談か……まぁ。それなら妥協するが。てか、一つ目立った場合俺等は客でしていくのか?それともデータ盗みに行くのか?」
ネコはあごに手を当てて悩む。ぶっちゃけどちらでも構わないらしい。白はそれに気づくと指を上げた。
「酒飲みたいし、女の子とお話したいから直接行こうか?」
「……まぁ。別にいいが。聞くまで大変だと思うぞ。ターゲットである渋谷大翔のデータをスタッフから引き出せないといけないからな。」
シロは理解したらしく、こくりこくりと頷いている。そして、腰に手を当ててニコッと微笑んだ。
「だから、お小遣いちょーだい?」
「はいはい。」
ネコは立ち上がり自室に向かう。雑なやりとりだが方針は決まったようだ。
シロに十万を渡し、ネコは再度渋谷大翔の通っていると言われるキャバクラを調べ始めた。カタカタと心地よい、キーボードが跳ねる音が聞こえるだろう。シロはそれを頬杖をつきながら、眺めていた。
「相変わらず、タイピング早いなぁ。」
「ほめるな。気が散る。」
シロに声をかけられたネコは明らかに動揺したように、何度もスペースキーを押している。そして、若干耳の先が赤かった。
それを見たシロは満足そうに目を細める。まだ、じーっと見つめていた。
一方的にネコが見つめられていると、声を漏らした。
「見つけた。やっぱり行ってるのは間違いないようだ。」
ノートパソコンで調べていたのか、そのままパソコンを持ってくる。くるっと向きを変えるとそこには、キャバクラに通った顧客リストが表示されていた。男性から女性までいろんな客層がそこのキャバクラに通っているようで、ターゲットの渋谷大翔の名前も記載されていた。
下手な口笛をシロは挟みつつ、立ち上がる。
「毎週何曜日とか決まってる感じ?」
シロの問いにネコは少しだけ調べて答える。
「金曜日に多い傾向だ。飲み会と称してそのキャバクラ”アンテナ”にいっているか、給料日が金曜日だったとか。まあ、どちらにしろ個人的な理由だろうな。奥さんに黙っているとおもうぞ。」
あくまでも推測で淡々と話すと、シロは首を動かしてうなずく。
「なるほどね。じゃあ、今週の金曜日から張り込んでみようか。土日もあつい感じ?」
「まあまあ、あつい。」
「よし。決まり。じゃあ、さっそく金曜日から行ってみるよ。」
具体的な計画が決まったころ、日は登りお昼の鐘が町中に響き渡った。今日は特に何もない。昼間ぐらいはのんびりできるだろうか。




