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第二十話 組織の陰謀

シロはついに、エナジードリンクの広告を出した会社に潜入した。本当に犯人なのか、また目的は何なのか。そして空き巣をした犯人を捕まえるために向かう。

 シロがピザ配達を装い、エレベーターに乗っているシロ。欠伸をかみしめながら、のんびりしていた。一、二と上がっていく階層を横目にしているとインカム越しに、声が聞こえた。そう、ネコである。


『うまくやっているようだな。敦?』


「うわ、ネコちゃん。聞いてたの?」


『あたりまえだろ。』


 シロは頭をかきながら、目を細めた。ちょっぴり頬が赤らんでいる。


「いやあ、お恥ずかしい。それで、なんで今かけてきたの?」


 シロがネコの回答を待っていると、エレベーターが止まった。目的地の階ではない。つまり、社員。シロはネコに質問できない代わりに、ネコの話に集中できる。


 それがいいのか悪いのか。わかるはずもない。


 入ってきたのは二人組の女性。シロにぺこりと会釈をして、階数を選択した。


 十五階。その階はシロが向かっている場所でもある。妙な既視感をちらつかせながら、ネコの回答と女性らの会話に耳を傾けた。


『……とりあえず、僕が言うことに返事をするな。いいな?』


 シロは何も言わず、うなずきさえしなかった。忠実に、番犬のように守っている。ネコは数秒だまったのち、話し始めた。


『十五階では、現在会議が行われようとしている。その内容は、おそらく……さらなるターゲットを見つけるための作戦会議。外部の人間は一人もいない、敵の巣窟。お前はそこに土足で乗り込むってわけだ。』


 そしてため息を混ぜて言う。


『……これは罠かもしれない。もしもの時は、気をつけろ。自分の命優先で頼む。』


 その言葉を言うなり、ネコの言葉は聞こえなくなった。シロは、黒い瞳を一回。二回、瞬きそっと目を伏せる。


 元殺し屋。元、スナイパー。実感のない殺しというにはあまりにも惨い二つ名である。

 目の前にいる女性二人も、シロの手によればひとたまりもないだろう。それをしないのは、シロが進んで殺しをしていなかったからだ。


 親の借金を返すために、死ぬ間際で戦い続けた一匹の人間。それこそ、シロなのだ。


 シロは深くため息をつくと、そっと帽子のつばに触れる。ここは戦場になるかもしれない、気をたしかにしなければ。


「……頑張るからね、ネコちゃん。」


 誰にも聞こえないぐらい小さな声でつぶやく。すべては、犯人を捕まえるための手ごまとして、動くために。




 しばらくエレベーターに乗っていると、女性二人組はシロがいるというのにも関わらず、話し始めた。


「ねえ。この会社って本当に大丈夫なのかな。」

「ええ?何が?」


 黒髪、長髪。スーツを着こなす女性が不安そうにつぶやいた。


「だって、エナドリ一本でやってる会社……おかしくない?」


 そんな彼女を差し押さえて、茶髪のボブの女性はぐっとこぶしを握る。


「大丈夫だよ!だって、利益は出てるみたいだしさ。でも、たまにおかしいとおもうのはわかる。なんか、売上が上がり下がりしてるらしいよ。」


 勝手な偏見だが、女性は噂話に敏感である。他人がいる場でこんな話をするのはあまりよくないだろう。……と、シロは少なく思いながら、さらに自分も思考回路を巡らせる。




 売上が上がり下がりするということは、もし空き巣をしているのならその家から出た金銭等の価値にばらつきがあるということを示しているとも同義である。


 もし、違うのなら。新商品を出したか、出していないかだが、詳しい話はシロにはわからなかった。


 ひとまず、社員のなかにもその全容を知っていない人はいるらしい――と。




 シロは考えることがあまり好きではないのか、しばらくして首を振った。今は情報集めをしなくては。再び、女性が話し始める。


「どうする?もしこの会社が倒産したら!」

「ええ、そんな話しないでよ。そういうの、言ったら現実になるじゃない。」


 でもそうね……そう長髪の女性は考えた。


「やっぱり、転職って答えたいけど。正直給料よかったから、小さな旅行でも行きたいわ。」

「うわあ、ロマンチックだね!いいじゃん。私はそうだな。コンビニバイトとかやってみたい!パートでもいいからさ。」


 キャッキャと、楽しそうに会話を弾ませる二人。違和感はやはり伝わってはいるものの本質は知らない。


 ふと、シロの耳元でクスッと笑うネコの声が聞こえた。反応ができないから、気になって仕方がない。


 シロは必死になんでネコちゃんが笑ったんだと、声をかけられずにその数分を待った。




 チーンと、電子音が響き渡り、ドアが開く。女性たちが出ていくのを見守って、シロも出た。中はまだまだ入り組んでいて、廊下にドアが数枚こちらを見ている気がする。


「うわ。どこだろ。」


 階層は聞いていたが、どの部屋かを聞き忘れてしまった。もし、本物のピザ店員なら説教案件だろう。シロは廊下に人がいなかったので、一枚一枚部屋を確かめることにした。


「ピザ配達に来ましたー。」


 一つ目の部屋。撃沈。


「ピザでーす。」


 二つ目の部屋。撃沈。人一人もいやしない。


 三つ目の部屋以降は、挨拶をしなかった。その代わりに、しっかり中まで入り人を探した。……いない。


 その階層は本当に敵の巣窟と謳うほど、静けさを漂わせていた。まるで、嵐の前の静けさのように。

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