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第十四話 暴力という名の反抗心

空き巣事件の犯人を突き止めるため、実際に現場に向かうことなった。だが途中で、男性と出会う。

 二人が変な反応をしている間も、男性はじっとこちらを見ていた。何かを見極めているのは確か。だが、何を?


 それを即座に判断できるほど、彼らは警戒していなかった。今はまだ。


 男性はそれを見かねて、ため息をつきゆっくり金属バットを構えた。


「あんたら、俺を見たからには覚悟できてんのか?あん?」

「うわうわ、でたよ。典型的なヤンキー。もしくはその他。」


 シロが馬鹿にするようにそういうと、男性はクスッと笑う。

「俺はそんなちんけなものじゃない。ヤクザだよ。」


 次の瞬間。近くに置いてあった、ゴミ箱を金属バットで思いっきり殴った。中身が散乱し、生ごみやら他の匂いが充満する。シロとネコは一気に笑みを消す……かに思えた。


 そんなことなく、あざ笑うようにそれらを見つめているではないか。彼等は肝が据わりすぎている。


「へえ。ヤクザってゴミ漁りしかしないのかな?」

「違うだろ。その匂いが大好きなんだ。」

「……お前ら。舐めてんのか?」


 おそらくなめている。男性はそのまま数歩近づいてきた。シロはネコの前に出てかばう形になる。

 ネコもじっと男性を見るだけで攻撃する姿勢を見せなかった。


 両方、隙がなさすぎる。にらみ合いをせざる負えなくなった。


 先に仕掛けたのは男性だった。ニ・三歩踏み込み振りかぶる。徹底的にやるつもりらしい。


 容赦なく、振り下ろした。


 しかし、シロも負けていない。そのバットを両手で押さえつけたのだ。ネコはじっと見続けているというのに。


「ほう。口先だけじゃないのか?」

「もちろんだぜ、ヤクザさん?」


 二人は同時に後ずさった。片方は武器あり、片方は素手で。それでも気配は変わらなかった。

 シロは肩をすくめながら尋ねる。


「あんた、そのバットで何したんだ?」


 本来なら直接聞いても何も帰ってこないだろう。相手が普通でなければもちろんだ。だが、男性は小さく笑った。


「借金取りでね、お金を返さないやつを成敗していただけだよ。」

「ああ、そうなんすね。それは災難だ。……で、その有様を見てもいないのに襲い掛かるのはなんでっすか?」


 単刀直入に、何のためらいもなくシロは聞いた。部外者をいきなり襲うというのはやましい理由があるからだと、そういいたいらしい。


 男性は再度構えながらにやりと笑う。


「俺らのシマを探られるのは困るんでね。それと、さっきから守られてばっかの”ネコ”とか言ったか。あんたの頭脳と技術は欲しいなぁ。」


 それを聞いたネコは金色の目を丸くして驚く。

「ほう、ほしいといわれたのは久々だ。大抵は商売にならないからと殺したがるものだが。」


 怖気づく気配こそないようだが、その瞳は若干の好奇心がちらついていた。まるで得物を見つけた猫のように爛々と輝いている。


 男性はその目を見てもなんとも思わなかったが、油断していたのは確かだ。そのすきを見て、シロが懐に潜る。


「しまっ――」


 シロが男性を押し倒すように突進した。姿勢は低く、両手を男性の腰に回してそのまま前進。いくらガタイがいい男性でも、その攻撃は予想外だったようだ。ゴンッという、鈍い音がする。


 男性はケラケラ笑っていた。


「やるな、あんた。名前は?」


 ネコはしっていたが、シロのことは知らなかったらしい。シロは男性を抑えながらにやりと笑う。


「俺はシロ。よろしくな?」


 白髪を揺らしながら、一人の男性を抑えつけたシロ。それは、警察犬が犯人を捕らえったときのような高揚で満ち溢れていた。




 男性は、攻撃の意思をなくしたのか、壁際に立ちおとなしくした。シロもネコもそれを理解しているのか、向かい合わせで寄りかかる。ふと、ネコが尋ねた。


「なあ。もしかして、あんたらここらへんで起きてる空き巣事件について何か知っているか?」

「あ?」


 煙草を吸いながら、素っ頓狂な声を漏らす。煙が立ち上げており、辺りはわずかに白く濁っている。しかし、何か引っかかっているのか、男性はしばらく煙を見ていた。


「俺らが、そんなちんけなもので金を稼ぐことはない。だが、まあ話題には上がってるな。なんでも、普通過ぎて犯人がわからないってところか。」

「ああ。能ある鷹は爪を隠すってところだろうな。普通過ぎて、当たり前すぎて見過ごす。そんな違和感をうまく利用してやがる。」


 ネコはやや不機嫌そうに言う。いつもならすらすら調べ終えるはずのネコが苦戦したらしい。男性はそれをなんとなくかぎ取り、ふんと鼻を鳴らした。


「あんたは、大物しかしっぽを掴めないからな。」

「黙ってろ。今回は調子が悪かったんだ。」

「はいはい。」


 まるで旧友に話すような口調で、ネコをあしらった。シロは目をぱちくりさせた。


「お前ら、相性もしかしていい?」

「どこをどう見て判断したんだよ。」


 ネコは不服そうに目をジトっとシロに向ける。シロは両手を上げた。


「そうかっかしないでよ、ネコちゃん。それで、ヤクザさん?知っていることがあるなら聞くよ。ちゃんと金払ってもいいぜ?」

「ほう?」


 金に目がないのか、あるいは小遣い稼ぎ程度にはいいと思ったのか前向きに考えてくれたようだ。シロはにやりと笑い、ネコの肩に手を置く。


「よかったなネコちゃん。現場検証の前に、重要な情報を手に入れるかもよ?」

「こいつは大して持ってなさそうだけどな。」


 二人とも馬鹿正直に言うものだ。男性はニヤリと笑う。


「いったな?」


 その目にはもう、先ほどまでの殺気はなくなっていた。

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