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第十五話 煙草の香り

ヤクザと宣言した男性は、思ったよりも素直に情報を話してくれるようだ。それが本当か嘘かは、彼しか知らない。


 男性は、煙草を吸いながらのんびりと話した。当たりさわりのない、淡々とした情報を。


「まず、俺等はそれに関与はしていねえ。それは確実だ。さっきも言った通り、そんなちんけなもので稼ぐつもりは毛頭ない。俺ももちろん、仲間ももちろん。これが大前提だ。」


 それを聞いたネコがボソッという。


「初めからそうじゃないって気づいてる。さっさと本題いえ。」

「せっかちさんだな。」


 シロはぼんやりそう言うと、横腹にネコの拳が突き刺さった。軽く小突く程度だったが、何の警戒心もなかったシロにはびっくりした話だろう。


「悪かったって、ネコちゃん。」

「……。」


 ネコは相変わらずむすっとしているが、ひとまず話を聞くきにはなったらしい。男性はあきれながらも話を続けた。


「発生地域は都市部が多め。あと一階が多い。それはもう掴んでいるか?」

「ああ。ちなみに発生時刻とかわかるか?記事には日付はかいてあったが、時間はわからないと書いてあった。だからあまり信用できなくてさ。」


 率直な疑問を猫が尋ねると、その男性は静かに言う。


「意外と昼間が多いらしいぜ。家主が出かけた後。ただ、カードキーのアパートより、鍵のアパートが狙われやすいんだと。鍵屋でも絡んでいるんだろうかね?」

「なるほど……だが、カードキーも可能性あるのか?高級マンションだろ?」


 シロとネコがいる場所は、どちらかというと都市部の外れ。近くには海が広がっていたり、公園がちらほら見えるだろう。だから、完全なる都市部とは言い切れなかった。


「まあ、カードキーに関しては盗めばいくらでも使えるし、バーコードさえ盗めれば入りたい放題だ。やり方までは俺たちも把握はしていない。」


 こくこくとネコはうなずくと、メモを残す。それをシロがじっと眺める。ふと、気が付いたというように男性に質問を問いかけた。


「そういや、なんでそんな詳しいんすか?関与してないんすよね。」

「ああ。関与していないが、かかわっていないとは言えない。俺の顧客に狙われたというやつがいてね。」

「なるほど。それで手助けがしたいと?」


 首をかしげながらそういうと男性は首を振る。そういうわけではないようだ。ではなぜ?


 男性は静かに言った。

「まあ、金返せねえ理由がそういうやつだからと言って、許す気はないって話だ。だが、全員が返せなくなったら元も子もねえ。どうにかしてくれんなら、今知っていることを話すまでさ。」


 シロはなるほどとぽんと手を打ち、にやにやし始めた。


「要するに、赤字になるのを避けたいってわけっすね。わかるますよ、その気持ち。」


 謎に同調し、ネコのメモをのぞく。プライバシーも距離感もあべこべな男である。ネコはしばらくメモを書いていると首を傾げた。


「ちなみに、男女比率は?」

「うーん。あー、意外と男性が多いかもな。理由は知らんが、おそらく短時間だけだからと鍵を開ける割合が男性の方が高いんだろ。」

「うーん。確かに、ここにはちっちゃいパチンコ屋もある。コンビニもあるな。」


 ネコは地図を開いて被害者宅とその商業施設との距離感をたどる。


「被害者はそもそものセキュリティ認識が低い可能性があるんだな。」

「そうだな。詳しくはやっぱり被害者に聞くのが手っ取り早いだろう。……そうだ。俺、今から借金の徴収に行くがついてくるか?ちょうど被害者なんだ。」


 こんな馬のいい話が合ってもいいだろうか。タイミングが良すぎるし、相手はさっきまで誰かを傷つけていた張本人である。やすやすとついていくメリットがほとんどない。ネコはカチカチとペンをノックする。ちらりとシロを見た。


「どうするシロ。僕らは別に探偵ではないからな。」

「いやいや、ネコちゃん。なんでもやって時には探偵にならなきゃいけないかもだぞ。」


 しばらく考えていると、男性は言う。

「悪い話じゃないはずだ。……たぶんな。車は出してやる。」


 その言葉に今度こそネコは目を丸くした。


「お前、僕らに恩を売って何が目的なの?」

「あ?さっきも言ったろ。損したくないだけだ。」


 本当か嘘かはやはり、この男にしかわからない。だが、その提案が決定打だった。シロとネコは互いに視線を合わせてコクリとうなずく。被害者に状況を聞くだけでもわかることがあるだろうと。





 男性の車は、高級車……ではなく、普通の黒い車だった。運転席に男性、助手席にネコ。そして後ろに横になるのはシロだ。


「すまんな、あいつ車酔いひどいんだ。」

「……まだ走って数分だが?」


 ネコがちらりと後ろを見ると、確かに顔色の悪いシロが横たわっていた。先ほどの戦闘よりも苦しそうだ。


「うう……酔い止めちょうだい~……」

「はいはい。ちょっと待ちな。」


 リュックサックから、薬とペットボトルの水を取り出すと、シロに受け渡す。それは慣れた手つきだった。

「ありがどお……」


 シロはごくごくとそれを飲む。車内はものすごく静かだった。ふと、男性が口を開く。


「そういやあんたたち、なんで何でも屋をやっているんだ?タクシー代として聞かせてくれないか?ただの興味だ。」


 ネコは沈黙を浮かべる。シロはそもそもダウンしていた。


 その質問に二人が答えるかは、数分後にわかるだろう。



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