第十三話 探りの最中の狩人
警察からの新たな依頼「空き巣を捕まえろ」
それをこなすために、まずはネコが情報を調べることとなった。
薄暗いネコの自室。パソコンの明かりだけが本来つくはずだった。バンッとシロが扉を開けて入ってくる。そしてずかずかと窓際に行ったかと思えば、カーテンを開けた。
「もう、ネコちゃん目を悪くするからちゃんと明るくしなよ!」
「……何をいまさら。」
シロはむっと頬を膨らませながら退場する。まるで嵐のように急にきてさっとかえった。ネコは困惑したようにじっと扉の先を見ながら、ようやく机に向き合う。
すでに開かれているのは、過去の空き巣事件のニュース記事。降順に並び替えて、地図に発生場所を記していく。慣れた作業だった。
「ふーん。やっぱり高齢者が多めか。ふつうの空き巣だな。」
ネコはどんどん情報を打ち込んでいく。
アパートのほうが狙われやすい。
一人暮らし。
高齢者が多め。
そのほかにも狙われたものを記載していく。
金庫。
貯金箱。
アクセサリー。
などなど。ありとあらゆるものが狙われている。どれも、やはりお金だ。ネコはため息をつきながら調べ続けた。
「単純すぎて、手ごたえがない。もっとこう、へんなやつを盗むとかしろよ。面白くないな。」
ブツブツとぼやきながらも手を動かすネコ。気まぐれなのか、あるいは仕事だから仕方なくやっているのかは定かではない。ひたすら打ち続けた。
数時間後。まとめ終えた資料を印刷して、自室から出た。今回はかなり手こずったらしい。
「似た手口が多すぎるんだよ……。」
そうぼやきながら、シロのいるダイニングテーブルまで歩いていった。シロはというと、ちゅうちゅうとパックタイプのゼリーを吸いながら、ひらひらと手を振っている。ネコが仕事をしている間に、のんきにエネルギーチャージをしていたのだろう。なんともマイペースなものである。
「何味?」
「ブドウ。ネコちゃんは何味がいい?」
「……同じの。」
了解といいながら、シロは冷蔵庫からゼリーを取り出しネコに渡す。ネコは迷うことなくマスクを下ろして吸った。
「その紙見ろ。」
「ええ……」
「僕はおなかが空いているんだ。」
いつもなら、ネコが簡潔にまとめてくれるが、今回は違うらしい。シロは明らかに不機嫌になりながら、文字を追った。
「うわ。これってターゲットをちゃんと調べてまとめたの?マメだねネコちゃん。」
感心しながら、どんどん読み進めていく。ネコはその様子をゼリーを吸いながら見つめていた。
そして理解したらしい。その時間約数分。完全にネコの仕事が楽になっている。いつでもこうすればいいのにと思うことにした。
「よし。共通点はかなりあるんだな。次は、次に狙われそうな家とか探さないとだな。」
「それは実際に行かないと分からない。それはまた、あんたに頼むよ、シロ。」
シロは了解といわんばかりに親指をたてると、ゆっくり体を起こした。まずは、被害者の自宅見ることから始めるのだろう。
「今回はネコちゃんも見に行く?」
「ああ。そうしようかな。」
珍しい話もあるものだ。普段引きこもっているようなネコも現場に向かうらしい。ネコは深く考えず、腕をのばした。
「運動不足かなって。」
「確かに、それは言えてるな!」
ただの運動不足を懸念しただけの話だった。彼らはそれぞれ着替えを終えると、事務所を出る。空き巣にあった家を見るために。
しばらく歩いていたあるときだった。シロはくんくんと鼻を引くつかせ、まるで犬のように周囲を見渡す。
「なんか、血の匂いがする。」
ネコはそれを聞いて周囲を見渡す。血の匂いというのは、同時に事件の香りがする。
「気を付けるぞ。」
「了解。」
それでも彼らは足を止めなかった。油断しているのか、ただ単に危険ではないと判断したのか。だが、その顔にはわずかに楽しみを前にして微笑みが浮かんでいた。
二人が数分ほど再度足を進めていた時だった。
ガン。
金属が折れるようなそんな音がした。シロがちらりとそちらを見ると、どうだろう。一人の男性がこちらを見ているではないか。手には、金属バット。明らかに野球をしに来たような雰囲気ではない。ネコはじっと見つつ声をかけた。
「こんにちは。いい天気ですね。」
いい天気かどうかはこの路地裏では判断付きづらい。というより上を見上げれば曇り空が広がっていた。
その男性はじろりとネコを見る。シロはそれをかばうように前に出た。
「そのバットかっこいいっすね?」
シロはなぜかほめた。ただの金属バット……いや、赤い血痕が付いている。二人とも少しだけ、姿勢を低くした。
戦闘準備だ。
相手が何であれ、負傷者がいる。それは確実だ。
男性はじっとこちらを見ていたが、にやりと笑う。
「何身構えているんだ。ああ、あんたらもしかして最近話題の”何でも屋”だっけか?儲かっているのか?」
いきなり失礼なことを言い出すではないか。シロもネコもあっけにとられて目をぱちくりさせている。
だが次の瞬間。
「あっはは!!聞いたか、ネコちゃん。金の心配されちゃったよ!!」
「マジか、僕たち貧乏人に見えるのか。」
どちらも馬鹿にするように、あっけにとられたように笑みを浮かべている。なんとも雰囲気も欠片もないそんな状況だった。




