エピソード31
―村人が見る世界―
俺の目は、無意識のうちにガエリア様に釘付けになっていた。
まるで太陽が人の姿を取って降りてきたようだった。 あまりに美しく、あまりに神々しいその姿に、誰もが息を呑むしかなかった。
俺たち村人にとって、あのお方は「守り手」だったはずだ。けれど今は違う。言葉を交わすことすら恐れ多い……まるで、「神」がそこにいるようだった。
村の中心に据えられた椅子に腰掛けるその姿は、ただの人間ではない。輝く眼差し。
どこか遠い異国の王のようでいて、それでも確かに“我らの主”であるという確信だけは、誰の胸にも根付いている。
ふと、俺は名を呟いた。
「……ガエリア様……」
その声は、誰にも聞かれていないはずだった。けれど、どこかで確かに“届いてしまった”ような気がして、息が詰まる。
(目が、合った?)
否、違う。それでも、見透かされた気がした。俺の願いも、愚かさも、すべてを“あの瞳”は見抜いていた。
この村は変わった。空も、木々も、人の顔つきさえも。あの夜以降、何もかもが“祝福された”ようだった。
ある者は畑の実りを誇り、ある者は病が癒えたと語る。だが、それらの全てに共通しているのは――
「ガエリア様のおかげだ」
そう信じ込んでいること。いや、信じたいのだ。
俺たちはもう、あのお方なしでは、生きていけない。
長老が、壺に入った水を掲げながら告げる。
「この水は、ガエリア様に捧げる聖なるものです」
その言葉に、誰もが自然と頭を垂れた。
祝福の歌が流れ、踊りが広場を包む。 あのお方が村に留まり続ける限り、この村は安泰であり、未来を恐れることもない。
俺は、その姿をただ見上げる。手を合わせ、祈るように胸に抱く。
(ガエリア様……どうか、我らを……)
視線の先で、微笑みが一瞬浮かんだような気がした。俺は確信する。
ガエリア様こそが、我らの神であり、未来そのものだ。そして、この村は、永遠にその名のもとに栄える。
そう信じて疑わない者たちの祈りが、夜空へと昇っていく。




