ガチ◯コファイトクラブ
「ガチ◯コファイトクラブ・・・?」
俺はパンフレットに書かれた地図通りにやってきたはずだが、目の前にあるのはボクシングジムではなくただの高校。校舎の中へ入り記載のあった3Fの3年A組に向かうと教室の中から怒号が聞こえる。
「上等じゃオラ!!」
俺が教室に入ると、中にはおぞましい光景。
ヤンキースライムが教壇に立つ教師スライムの胸ぐらを、いやスライムには掴む胸ぐらがないから胸あたりのスライムを掴んでいた。声だけだとヤンキースライムがむなぐらを掴みかかっているように見えなくはないが、実際にはスライム同士がぬちゃぬちゃぶつかり合ってるだけの見るに耐えない光景を前に、俺は教室を後にした。
「スライムやったら・・・パンパンやなお前」
教室の方から声が気がしたが俺は振り向かなかった。なぜならこの手のノリに付き合うとろくなことはないし、こういったものは見ている分には楽しいけれど自分が実際にそこにいたいかというとそうではないからだ。
「いくらを希望しますか」
3年C組の教室から男の声が聞こえたので中を見ると、そこには面接会場のような、というより圧迫面接のような一対複数人形式で座る者たちの姿があった。
「1000万円です」
一人席に座る男が真剣な眼差しで答えている。なんだこの放送終わって何年後かにパロディでこすられるような伝説の深夜番組みたいなノリはと思いつつ、俺は身を乗り出していた。その一部始終をご覧あれ、と言わんばかりの光景。
「1000万円・・・」
「そのお金の使い道は」
「魔王を倒すために、冒険に出ます!」
複数人席側のスライムたちは懐疑な顔をしている。
一匹の眼鏡をかけたスライムが口を開く。
「勇者さんね、ごめんなさい。言ってる意味が全然分からんのだけれども。」
「いや、ですから・・・」
「魔王を倒すのに、お金が必要なんですか?」
「冒険にも旅の資金が必要なので・・・」
一匹の落ち着いたスライムがゆっくりと話す。
「つまり貴方は、多額の資金があれば、優秀な仲間を集められる、そうおっしゃりたいわけなんですね。効率よく魔王を倒す、そういうことですね。」
「そうです!・・・ですから・・・」
「ハッキリ言っちゃうとさぁ、君、甘いよ」
一匹の熱血スライムが口を開く。
「勇者だかなんだか知らないけどさ、人を金で買うっていう発想がまず、気にいらないね。」
「別に金で買うとかそういうとことでは・・・」
一匹の敏腕スライムもつかさず口を出す。
「勇者であれよ!!!」
「え・・・」
「本物の勇者やったらね、、、お金なんかなくたって、なんぼでも人よってきますわ、、、」
「・・・」
「お金で集まった人たちで魔王を倒したとして、ぼく勇者ですって胸張っていえます?」
「言えないです・・・」
「言えないですよね、勇者やったら己の力だけで人集めて、育てていって、最後、みんなで力を合わせて、魔王を倒しにいく。」
「それが勇者じゃないですか?違いますか?」
「・・・」
俺は志願者とスライムたちの会話を真剣な表情で聞き入っていた。勇者の魔王を倒したいという真剣な思いは本当だが、他力本願ではいけない。いや仲間に頼るという他力本願も少しはあってもいいが、お金に頼るというのはちょっと違うだろうと、そう思いながら俺はスライムたちの話に頷いていた。
「ノーマネーでフィニッシュです」
俺は天井を見上げた。
虚しい気持ちと爽やかな気持ちの両方を抱えたまま俺は高校のような建物を後にした。
「今のは一体何の時間だっだんだ」
明日早く起きなきゃいけないのにふとつけた深夜番組が思いのほか面白くて見るのだけど、いざ終わってみると思いのほかしょうもなかったなみたいな時間無駄にしちゃったなみたいな罪悪感を感じていた。
ふと手元を見る。
現実。
俺の手には赤いグローブ。魔王を倒すまで外せない呪いのグローブ。魔王に対しては約10億倍の攻撃力エンハンス、魔王以外に対しては約10億分の1の攻撃力となる。
現実からは目を背けられない。
「これからどうやって生きようか・・・」




