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第86話 発見!

勇斗とアンジェロは、遂に地下七階で隠しエリアを発見する!

「ディテクト・シークレット!」

 勇斗がトリガーワードを唱えると、壁面に扉が現れた。


 何のことはない、最初から最も怪しい場所に、それはあった。何もない長い通路の行き止まり――その正面の壁にである。

 他の冒険者に見つからなかったのが不思議なほどである。しかしそれも

仕方がないだろう。地下七階に到達した冒険者は、それほど多くはない。


「あ、開けるぞ?」

 ごくりと唾を飲み込んで、勇斗は言った。


「うん!」


 アンジェロが大きく頷くのを見て、勇斗はゆっくりと扉を開いていく。

 扉の向こうには、ここまで来たのと同じ、真っ直ぐに伸びた通路があった。


「ここが……?」

 とアンジェロが問う。


 ああ、と勇斗は答えた。

「探していた隠しエリアだ」

 言ってから、勇斗は扉をくぐった。


「大丈夫? モンスターはいない?」


「ディテクト・ライフにも、ディテクト・マジックにも反応がない。大丈夫だ」


 それでも勇斗は、ゆっくりと歩を進める。

 勇斗に続いてアンジェロが通路に足を踏み入れると、扉はすうっと壁に溶けるように消えた。


 二人ははそのまま、しばらく通路を進む。


「あれ?」

 と先を歩くアンジェロが言った。

「行き止まりだ……」

 少し残念そうな声音である。


 問題ない、と勇斗は言って、呪文を詠唱する。


「ディテクト・シークレット」


 正面の壁に、再び扉が現れた。


 なるほど、と言ってアンジェロが嘆息する。

「隠し扉の先に、隠し扉ってわけか」


「ま、よくあるパターンだな」


 扉をくぐるアンジェロに続いて、勇斗も奥に進む。そして、ため息をついた。

「またかよ……」


 先ほどと全く同じ形状の通路が、そこにはあった。

 再び最奥まで進んで、突き当りの壁にディテクト・シークレットをかける。


「あれ?」

 とアンジェロが首をひねる。


 今度は、隠し扉が出現しなかった。


「なるほどね」

 勇斗は苦笑した。

「一筋縄ではいかないってわけか……」


 おそらく、通路の別の場所に隠し扉があるのである。


「ま、手当たり次第にかけてってもいいが……魔石の無駄だよな」


「魔石はそんなに高くないけど、節約はしたいよね」


 そんなに高くないと言っても、一個で聖銀貨五枚はする。節約できるに越したことはない。


 勇斗は尋ねた。

「これまで、隠し扉が見つかった壁に、何か特徴とかなかったか?」


「特徴ねえ……」

 とアンジェロは顎に手を当てて考え込む。

「……ごめん。わかんない」


「だよな……」

 勇斗は腕を組んで考え込み、それから言った。

「よし。一旦戻る」


「え!? 戻るの?」


「隠し扉のあった壁を観察して、何かないか調べるんだ」



 前の通路に戻って確認したが、扉のあった壁に、目立った特徴は見られなかった。


 ダンジョンの壁面は画一的であったものの、自然石を削り出して組み上げたような見た目であって、それぞれの石の形状は均一ではなく、どれも違っている。なので、同じように見えても、よくよく見ればすべての壁の形状は違っていて、その中から隠し扉のある壁の特徴を探し出すというのは、非常に骨が折れた。


「落とし穴はバレバレだったのにねー」


 アンジェロの言葉に、勇斗は頷く。落とし穴のある床は、他と比べて妙に古びていて、一目で見分けがついたのである。


 アンジェロが壁に手を触れて、あれ、と呟いた。

 触れているのは、隠し扉のある位置である。


「ここ、ちょっと手触りが違うかも」


「まじか!?」

 叫んで、勇斗も壁に手を這わせる。すぐに首をひねった。

「そうか?」


「そうだよ! 他の石はかなりざらついた感触だけど、ここは少し滑らかだ」


 言われて、右手にある別の壁を触ってから、隠し扉のあたりに手を触れる。


「……そうか?」

 まるでピンとこない。


「ユートは鈍感だからなぁ」


「俺のどこが鈍感なんだよ!」


「服買う時、ちゃんと肌触りとか確認しないでしょ?」


「しねーよ。着れればいいんだよ、着れれば。あと安けりゃ」

 元の世界でもユニクロしか行っていない。


「とにかく、僕、わかったかも」


「本当かぁ?」

 疑わしげに勇斗はアンジェロを睨む。


 アンジェロは胸を反らした。

「まあまあ。僕に任せておいてよ」



 アンジェロの言葉は正しかった。

 勇斗にはまるでわからなかったが、アンジェロは次々と隠し扉の位置を正確に示していったのである。


「アンジェロ、すげーな! 隠し扉を見分けるなんて、たぶん他の冒険者もできないぜ?」


「でしょでしょー。もっと褒めてくれていいからね!」

 アンジェロは得意満面である。


 そうやって二人は、いくつかの隠し扉を抜け、隠しエリアの地図も少しずつ埋まっていった。


「それにしても、お宝はまだか!?」


「同じような場所ばっかりで飽き飽きしてきたねぇ」


 いい加減、うんざりしていたところに、不意にそれは来た。

 扉を開けた先に、空間が広がっていたのである。


「えええっ!」

 アンジェロが声を上げた。


 勇斗は、声も出ない。


 そこにあったのは、赤黒い、クリスタルのような結晶体であった。

 ――それも、巨大な。


 高さは三メートル程度。左右には十メートルほど広がっている。

 奥にも続いているようであるが、ここからは見えない。


「なんだこれ……?」


 思わず呟いた勇斗に、アンジェロが言った。


「魔晶石だ……」


「魔晶石?」


「魔石の結晶体だよ! これだけあると、いくつ分になるんだろ……?」


「えっ! 魔石って鉱物だったのか?」


「当たり前でしょ。石なんだから」


 ごくり、と勇斗は唾を飲み込んだ。

「これって、俺たちが見つけたんだよな」


 はっとしたように、アンジェロが頷いた。


「じゃ、じゃあ、俺たちのものってことで、いいんだな?」


「た……たぶん……」


 勇斗は懐から魔石を取り出した。

「三センチ四方程度のこれが、聖銀貨五枚で取引されてるだろ……? これ、何個分あるんだ……?」


「……わかんない」


「奥! 奥いってみようぜ!」

 奥にも鉱脈は続いている。見たところで、それが幾ら分になるかなど想像はつかないが、とにかく全容を知りたかったのである。


 勇斗の頭の中は、完全に欲に支配されていた。


 奥に進むにつれ、魔晶石はより大きくなっていった。奥は高さが、四メートル、いや、五メートルはありそうだ。


 目の中で、ちかちかと火花が瞬いた。脳内麻薬が放出されている感覚がする。

 しばし放心して、勇斗はその場に立ちすくむ。


 頭の中では、取らぬ狸の皮算用が、たちまち進んでいく。

 いや、取らぬではない。もう取ったのだ。勇斗たちは、隠されたお宝――膨大な魔晶石の鉱脈に到達したのである。


 そのとき、動かなくなった勇斗を置き捨て、そのまま奥に進んでいったアンジェロが、叫び声をあげた。


「ユート! こっちに来て!」


 勇斗は、はっと正気に戻った。

「どうした!?」


「とにかく来て! 見ればわかるから!」


 勇斗は急いでアンジェロのもとに駆け付ける。そこで、勇斗も見た。


 ――魔晶石の中にいる、三人の冒険者の姿を。まるで生きたまま時が止まったような、その姿を。


 勇斗は叫んだ。


「ノルム!」

 パーティリーダーにして狩人の少年。


「シャーリー!」

 パーティの紅一点、僧侶の少女。


「ガルベス!」

 パーティの守護役である偉丈夫の戦士。


 かつて、勇斗の眼前で転移して消えた、三人のパーティメンバーが、そこにいた。

すみません。1日遅れてしまいました…。

次回更新は3/11予定です。

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