表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第一章 学院編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/76

第八話 気に入らない

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 人には認めたくない感情というものがある。


 例えば。

 負けたくない相手に負けた時。

 嫌いな野菜を食べなければならない時。


 そして。

 気になる人が他の女の子と仲良くしている時。


「……」


 私は自室で紅茶を飲みながらそんなことを考えていた。


 いや。

 考えていない。

 断じて考えていない。


 気のせいだ。

 全部気のせい。


「お嬢様」


 エミリーが不思議そうな顔をしていた。


「どうしたの?」


「いえ」


「なに?」


「今日は機嫌が良いのですね」


 私は止まった。


「そう見える?」


「はい」


「……そんなことないわ」


 エミリーが微笑んだ。


 納得していない顔だった。


***


 翌日。

 私は少し早めに教室へ来た。


 何となく。

 本当に何となく。

 理由なんてない。


 ないのだけど。


 教室の扉を開いた瞬間。


「あ」


 いた。


 レオ。


 既に席について本を読んでいる。


 その姿を見た瞬間。

 少しだけ安心した。


 自分でも意味が分からない。


「おはようございます、お嬢様」


「おはよう」


 自然に挨拶が返る。

 最近は慣れてしまった。


 良いことなのか悪いことなのかは分からないけれど。


「今日は早いのね」


「勉強です」


「そう」


「首席を取らないといけませんので」


 やっぱり課題だった。

 少し安心する。

 この人はいつも通りだ。


***


 そして授業開始直前。


「レオ君!」


 女子生徒の声。

 先日一緒にいた子達だった。


「今度図書館で勉強会しない?」


「勉強会ですか」


「うん!」


 私は何となく耳を傾ける。

 別に気になったわけではない。

 断じて。


「良さそうですね」


 レオが頷いた。

 女子達の顔が明るくなる。


「本当!?」


「はい」


「じゃあ放課後!」


「分かりました」


 楽しそうだ。

 女子達も。

 レオも。


 なぜだろう。

 少しだけ面白くない。


 理由は不明。

 本当に不明。


***


 昼休み。


「リリアナ嬢」


 アレクシスが来た。

 最近よく話しかけられる。


「なにかしら」


「少し時間はあるか?」


「ええ」


 アレクシスは一冊の本を差し出した。


「先日の授業で話題になった歴史書だ」


「あら」


 貴重な本だった。

 王都でもなかなか手に入らない。


「貸していただけるの?」


「もちろん」


「ありがとう」


 素直に嬉しい。

 私は本が好きだ。

 面白そうな本を前にすると機嫌も良くなる。


「読み終わったら感想を聞かせてほしい」


「ええ」


「楽しみにしている」


 アレクシスが微笑んだ。

 周囲の女子達が騒いでいる。

 私は気付かないふりをした。


***


 そして。

 不意に視線を感じた。


 レオだった。

 こちらを見ている。

 珍しい。


 自分からじっと見てくることは少ない。


「なに?」


 聞いてみる。

 するとレオは少し考えた。


「仲が良いですね」


 私は首を傾げた。


「アレクシスのこと?」


「はい」


「普通よ」


 そう答える。

 実際その通りだ。


 同級生。

 それ以上でもそれ以下でもない。


「そうですか」


 レオは頷いた。

 それだけだった。


 いつものように。

 それ以上何も言わない。


***


 放課後。

 私は図書館へ向かっていた。


 借りたい本があったからだ。


 すると。

 奥の席に見覚えのある姿があった。


 レオ。

 そして女子生徒三人。

 勉強会らしい。


 楽しそうに話している。

 女子達もかなり距離が近い。


 人気者ね。

 そんな感想が浮かぶ。


 それだけのはずだった。


「リリアナ様?」


 ルイーゼが声を掛けてきた。


「どうしたの?」


「いえ」


「なに?」


「少し怖い顔をされていますわ」


 私は固まった。


「え?」


「ご気分でも悪いんですの?」


 慌てて表情を整える。

 そんなはずがない。

 だって私は。


「別になんでもないわ」


「そうですの?」


「ええ」


 なんでもない。


 本当に。

 少しだけ。

 ほんの少しだけ。

 気に入らなかっただけ。


 その時だった。

 レオがこちらに気付く。


 立ち上がる。

 そして迷いなくやって来た。


「お嬢様」


「な、なに?」


「本を探しに来たんですか?」


「そうよ」


「一緒に探します」


「勉強会は?」


 思わず聞いてしまった。


 レオは首を傾げる。


「終わりました」


「そう」


「お嬢様の方が大事なので」


 さらりと言った。


 さらりと。

 本当にさらりと。


 心臓が変な音を立てる。


「……そう」


 それしか言えなかった。


 レオはいつも通りだった。

 何も意識していない。

 だからこそ厄介だった。


「どんな本を探しているんですか?」


「歴史書よ」


「なら手伝います」


「お願い」


 気付けば頼んでいた。


 二人で本棚の間を歩く。

 静かな図書館。

 少しだけ近い距離。

 なぜか落ち着く。


 窓から差し込む夕日を見ながら。

 私はふと思った。


 もしかすると。

 本当に少しずつ。

 私はこの時間が好きになっているのかもしれない、と。


お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ