表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第五章 望み編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/77

第三話 王城へ

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 表彰式当日。


 朝から屋敷は慌ただしかった。

 使用人達が走り回り、馬車の準備が進められている。


 リリアナは鏡の前に座っていた。


「お嬢様」


 エミリーが髪を整える。


「緊張されていますか?」


「してないわ」


 即答した。

 だが鏡の中の自分は少し強張っている。


 エミリーは何も言わなかった。

 ただ少しだけ笑った。


***


 王城は大きかった。

 何度か来たことはある。

 それでも今日は違った。


 門をくぐる貴族達。

 王家の騎士達。

 見たこともないほど豪華な装飾。


 そして。

 国中から集まった有力者達。


「すごいですわね……」


 ルイーゼが思わず声を漏らす。

 アレクシスも珍しく大人しい。


「場違いな気がしてきた」


「あなたは最初から場違いでしょう」


「ひどくね?」


 そんなやり取りに少しだけ肩の力が抜けた。


***


 会場の入口で足が止まる。


 視線の先。

 そこにレオがいた。


 黒を基調とした正装。

 見慣れない姿だった。

 背筋を伸ばし、王城の役人と話している。


 いつもの学院の制服ではない。

 木剣を振っている少年でもない。


 気付けば見つめていた。


「お嬢様?」


 レオがこちらに気付く。


「……似合ってるわね」


 それが精一杯だった。


 レオは少し困ったように笑う。


「ありがとうございます」


 それだけ。

 いつも通りだった。


 なのに妙に安心した。


***


 開会まで少し時間があった。

 貴族達が談笑している。


 その中でリリアナは何度もレオを探していた。

 そして見つけるたびに安心していた。


 自分でも意味が分からない。

 少し視界から消えただけで気になる。

 誰かと話しているだけで落ち着かない。


 馬鹿みたいだった。


***


 視線を移す。


 王族席。

 そこには王女の姿もあった。


 年齢はレオとそれほど変わらない。


 美しく、気品がある。


 そして。

 何かを探すように会場を見渡していた。


 やがて視線が止まる。


 レオだった。

 王女は小さく微笑む。


 それを見た瞬間。

 リリアナの胸が嫌な音を立てた。


「……何よ」


 誰にも聞こえない声だった。

 自分でも理由が分からない。


 ただ面白くなかった。


***


 会場へ入るよう案内が始まる。

 中央には長い赤絨毯が敷かれていた。


 その先に玉座。

 国王が座る場所。


 貴族達が次々と席へ着いていく。

 リリアナも公爵の隣へ座った。


「お父様」


「なんだ」


「王女殿下は」


 そこまで言って言葉が止まる。

 公爵が横目で見る。


「なんでもありません」


 父は小さくため息を吐いた。

 何も言わない。


 それが余計に気に入らなかった。


***


 やがて。

 ラッパの音が響く。


 会場全体が静まり返った。


 国王が入場する。

 全員が立ち上がる。


 重苦しい空気。

 厳かな雰囲気。


 そして。

 赤絨毯の前に立つレオ。


 リリアナは無意識に息を止めた。


 表彰が始まる。


 その先に何が待っているのか。

 まだ誰も知らなかった。


***


 国王が壇上へ進む。

 会場の全員が頭を下げた。


 静寂。


 数百人はいるはずなのに、誰一人声を出さない。

 国王は玉座へ腰を下ろした。


「楽にせよ」


 その一言で空気が少しだけ緩む。

 だが緊張は消えない。


 リリアナは無意識に手を握り締めていた。


 視線の先。

 赤い絨毯の上にはレオが立っている。


 背筋は真っ直ぐ。

 緊張している様子もない。

 昔と変わらない。


 どれだけ大きな舞台でも。

 やることは同じなのだろう。


「レオ・オルスタッド」


 国王の声が響く。


「前へ」


「はい」


 レオが進み出る。


 会場中の視線が集まった。


 貴族達。

 騎士達。

 王族達。


 その全てを受けながら。


 レオは何も変わらない。


「聞いている」


 国王が笑う。


「面白い男だそうだな」


「恐れ入ります」


「褒めておる」


 会場から小さな笑い声が漏れた。


 国王は続ける。


「商人達をまとめ、流通を整えた」


「騎士団の補給問題も解決した」


「若くしてよく成し遂げた」


 リリアナは驚いていた。


 父は何も教えてくれなかった。

 レオも何も話さなかった。

 だから知らなかった。


 思っていた以上に。

 大きなことをしていたことを。


 国王が立ち上がる。


「よって其方を表彰する」


 会場から拍手が起こる。

 大きな拍手だった。


 レオは頭を下げる。

 それだけ。

 自慢することもなければ誇ることもない。


 淡々としている。

 いつも通りだ。


 だから。

 リリアナは少しだけ誇らしかった。


***


 表彰が終わる。

 本来ならここで終わりだった。


 だが。

 国王は席へ戻らなかった。


「さて」


 その一言で会場が静まる。


 国王が笑う。


「褒美の話をしよう」


 貴族達がざわめいた。

 リリアナも息を呑む。


 まだあるのか。


「望みを言え」


 国王は楽しそうだった。


「余で叶えられることであれば叶えよう」


 会場中の視線がレオへ向かう。


 爵位。

 領地。

 金。


 誰もがそう思った。


 リリアナもそう思った。


 だが。

 嫌な予感がした。


 胸がざわつく。


「さらに」


 国王が続ける。


「望むのであれば」


 国王の隣。

 王女へ視線を向ける。


「王女との婚姻も認めよう」


 会場が揺れた。


 どよめき。

 驚き。

 息を呑む音。

 一瞬で広がる。


 リリアナの心臓が止まった。


 王女。

 婚姻。

 王家。


 頭の中が真っ白になる。


 父を見る。

 父も険しい顔をしていた。


 その隣で。

 レオだけが静かだった。


 いつもの顔だった。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ