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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第五章 望み編

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第二話 王家の噂

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 王城から正式な招待状が届いてから数日。

 学院でも王都でも、その話ばかりになっていた。


「聞きました?」


 昼休み。

 令嬢達が楽しそうに話している。


「王家がかなり期待しているそうですわ」


「当然ですわよ。あの年齢であれだけの成果を出したのですもの」


 リリアナは本を開いたまま耳だけを傾けていた。


 本当は読みたいわけではない。

 ただ会話に参加したくなかった。


「表彰だけでは終わらないかもしれませんわね」


「それはそうでしょう」


「王城へ招く理由がありますもの」


 ページをめくる手が止まる。

 嫌な言葉だった。


「どういう意味?」


 気付けば口を挟んでいた。

 令嬢達が驚いた顔をする。


「リリアナ様」


「いえ、深い意味ではありませんの」


 だが少し楽しそうに笑う。


「有能な人材は王家も欲しがりますでしょう?」


 胸が少し痛んだ。


 それ以上は聞きたくなかった。


 リリアナは静かに本を閉じた。


***


 放課後。

 校門の前には王家の馬車が停まっていた。


 最近は珍しくもない光景だ。

 レオは教師へ一礼し、そのまま馬車へ向かう。


「忙しそうですね」


 隣にいたルイーゼが呟く。


「そうね」


「なんだか遠い人みたいですわ」


 リリアナは答えられなかった。


 その言葉を。

 最近ずっと考えていたから。


 レオが馬車へ乗り込む。

 扉が閉まる。

 走り去る姿を見送る。


 昔は毎日訓練場にいた。

 放課後になれば木剣を振っていた。


 気付けば隣にいた。

 それが当たり前だった。


 今は違う。


 王都へ行く。

 王城へ呼ばれる。

 貴族達と会う。


 自分の知らない場所で。

 知らない人達と。

 話をしている。


 少しだけ。

 本当に少しだけ。


 置いていかれそうな気がした。


***


 その日の夜。

 食後。

 リリアナは父の執務室を訪れた。


「どうした」


「王家は本気なのですか」


 公爵はペンを置いた。


「何の話だ」


「レオのことです」


 短い沈黙。

 父は椅子にもたれた。


「本気だろうな」


 予想していた答えだった。

 それなのに胸が苦しくなる。


「王家直属の話ですか」


「ああ」


「断れるのですか」


 公爵は少しだけ目を細めた。


「本人が望まなければな」


 その返答に安心するべきだった。

 なのに安心できない。


「お前はどうして欲しい」


 突然そう聞かれた。


 リリアナは言葉を失う。


 どうして欲しいか。


 そんなの。

 決まっている。


 でも。

 口にしたら終わりな気がした。


「……分かりません」


 結局そう答えた。

 父は何も言わなかった。


***


 部屋へ戻る。


 机の上には青いペンダント。


 自然と手が伸びる。

 指先で撫でる。


 冷たい感触。


 誕生日の日。

 レオがくれたもの。


 あの時はただ嬉しかった。

 何も考えていなかった。


 今は違う。

 考えてしまう。


 もし王家へ行ったら。

 もし王都で暮らすことになったら。


 もし。

 自分の知らない場所へ行ってしまったら。


「……嫌ね」


 ぽつりと零れた。


 誰も聞いていない。

 聞かれなくて良かったと思った。


 窓の外には王都の灯りが見える。

 その中心に王城がある。


 リリアナはペンダントを握りしめた。


 王家だろうと。

 王城だろうと。

 どれだけ大きな場所だろうと。


 ただ一つだけ。


 レオが遠くへ行ってしまうのは嫌だった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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