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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第五章 望み編

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第一話 落ち着かない

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 王家からの招待状が届いた。


 国家への功績を称え、王城にて表彰を行う。

 たったそれだけの内容だった。


 それなのにリリアナは三度も同じ文章を読み返していた。


「お嬢様」


 エミリーが呆れたように声を掛ける。


「何度も読んでも内容は変わりませんよ」


「分かっているわ」


 そう答えながら、もう一度目を通してしまう。


 自分でも馬鹿だと思った。

 表彰されるのは自分ではない。


 レオだ。


 喜ぶべきことだ。

 誰よりも努力していたのだから。


 それなのに胸の奥が落ち着かなかった。


***


 翌日。

 学院の教室は朝から騒がしかった。


「王城だぞ!」


 アレクシスが机を叩く。


「すげぇじゃねぇか!」


「そうですわ! 普通は一生縁がありませんのに!」


 ルイーゼも興奮している。


 教室中が祝福ムードだった。

 その中心にいるレオだけがいつも通りだった。


「大変ね」


 リリアナが声を掛ける。


 レオが顔を上げる。


「何がですか?」


「その反応よ」


 思わず笑ってしまう。


「王城に呼ばれているのよ?」


「そうですね」


「それだけ?」


「それだけです」


 本当にそう思っている顔だった。


 昔から変わらない。


 冒険者になった時も。

 学院首席を取った時も。

 剣術大会で優勝した時も。


 達成したことではなく、その先しか見ていなかった。

 今だからこそわかる。


 だから少しだけ不安になる。

 今度はどこへ行こうとしているのだろうと。


***


 放課後。

 レオはいつものように立ち上がった。


「失礼します」


 教室を出ていく。

 リリアナは窓際へ歩いた。


 校門の前には馬車が停まっている。

 レオが乗り込む。

 扉が閉まる。

 馬車は王都へ向かって走り去った。


 気付けば見えなくなるまで見送っていた。


「最近、本当に見送るようになりましたわね」


 隣でルイーゼが言う。

 リリアナは肩を震わせた。


「何のこと?」


「そういうところです」


 全く誤魔化せていないらしい。


***


 その夜。

 食堂には父もいた。


「表彰式にはお前も出席しろ」


 公爵が言う。


「私もですか?」


「当然だ」


 その返事はあまりにも当たり前だった。


「婚約者なのだからな」


 リリアナは黙り込む。

 その言葉を聞くたびに少しだけ安心する自分がいた。


 婚約者。


 まだそう呼んでくれている。

 まだ隣にいる。


 それなのに。

 王家という言葉が頭から離れない。


***


 自室。

 窓の外には星空が広がっていた。


 机の上には青いペンダント。


 手に取る。


 冷たい感触が掌に広がる。


「馬鹿みたい」


 小さく呟く。


 王家に認められることは名誉だ。

 誉れだ。

 喜ばしいことだ。


 分かっている。

 分かっているのに。


 もし。

 王家が本当にレオを望んだら。


 もし。

 もっと高い場所へ行けると言われたら。


 もし。

 自分より良い未来があると言われたら。


 レオはどうするのだろう。


 考えたくないのに。

 考えてしまう。


 リリアナはペンダントを握り締めた。


 窓の向こうには王都の灯りが見える。


 そのどこかで。

 今もレオは走っている。


 昔と同じように。

 ただひたすら前へ。


 だからこそ。

 少しだけ怖かった。


 その先に、自分がいなくなることが。

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