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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第四章 国家編

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第十六話 隣に立つために

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 その日から。

 リリアナの毎日はさらに忙しくなった。


 学院。

 授業。

 放課後。

 執務室。

 帰宅後も勉強。


 以前のお茶会よりずっと大変だった。


 だが。

 不思議と嫌ではない。


「街道の整備費用について説明しろ」


 父の声。


 リリアナは資料へ視線を落とす。


「現在の流通量を考えるなら西街道が優先です」


「理由は」


「商業都市との交易量が増えています」


「続けろ」


 以前なら答えられなかった。


 今は少し違う。


 分からないなりに。

 考えられるようになってきていた。


 父が静かに頷く。


「前よりは良い」


 その一言だけだった。


 それでも嬉しかった。


***


 授業が終わる。

 執務室を出る。


 廊下を歩きながら大きく息を吐いた。


「疲れましたか?」


 声がした。

 振り返る。


 レオだった。


 最近はよく会う。

 父の仕事で出入りしているからだろう。


「疲れたわ」


「顔に出ています」


「失礼ね」


 即答する。


 レオが少し笑った。


 その顔を見ると。

 なぜかこちらまで笑ってしまう。


「今日は何をしていたの?」


 聞いてから思う。


 最近の私はよく質問する。

 前なら聞かなかった。


 待っていれば良かったから。


 今は違う。


 知りたい。


 少しでも。


「商人の方々と話をしていました」


 珍しく答えが返ってきた。


 リリアナは少し驚く。


「教えてくれるの?」


「話せることだけです」


「ずるいわね」


「よく言われます」


 本当に反省していない顔だった。


 少しだけ腹が立つ。

 少しだけ安心する。


 以前のレオだ。


 変わったように見えても。

 全部が変わったわけではない。


 二人で並んで廊下を歩く。


 沈黙が続く。


 でも嫌ではない。


「お嬢様」


 レオが不意に口を開いた。


「なに?」


「最近頑張っていますね」


 思わず足が止まる。


「見ていたの?」


「はい」


 当たり前のように答える。


 少し恥ずかしくなる。


 父に叱られたこと。

 零点を取ったこと。

 何度もやり直したこと。


 全部知られている気がした。


「私だって頑張るわよ」


 言い返すと。

 レオは真面目な顔になった。


「知っています」


 その返事が予想外だった。


「だから」


 レオは少しだけ笑う。


「負けられません」


 胸の奥が熱くなる。


 負けられない。


 その言葉は。

 何度も聞いてきた。


 課題の度に。

 無茶な目標の度に。


 何度も。


 何度も。


 そして全部達成してきた。


 だから。

 リリアナも笑った。


「私もよ」


 レオが目を丸くする。


「私だって負けないわ」


 領地経営。

 勉強。

 未来。


 全部。


 諦めるつもりはなかった。


 窓の外では夕日が沈み始めている。


 少し前まで。

 その背中を見上げるだけだった。


 追いかけられる側だった。


 課題を出す側だった。


 でも今は違う。

 同じ方向へ歩いている。


 まだ隣ではない。

 まだ届いていない。


 それでも。

 いつか。


 その時。

 胸を張って隣に立ちたいと思った。


 昔のレオがそうだったように。

お読み頂き、ありがとうございます。

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