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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第四章 国家編

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第十五話 同じ場所

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 領地経営の勉強を始めて一か月。


 授業。

 帰宅。

 執務室。

 書類。

 数字。

 税。

 商業。

 街道。


 以前なら途中で逃げ出していた。


 今は違う。

 分からないなりに。

 少しずつ理解できるようになっていた。


「ここです」


 リリアナは資料を差し出す。


 父が目を通す。

 一枚。

 また一枚。


 そして机へ置いた。


「合格だ」


 リリアナは目を瞬かせた。


「本当ですか?」


「今回はな」


 口元が少しだけ緩む。

 思わず笑顔になった。


 零点から始まった。

 何度もやり直した。


 悔しくて泣きそうになった日もある。


 それでも。

 結果が出た。


 それが嬉しかった。


「ありがとうございます」


 父は何も言わなかった。


 だが。

 少しだけ満足そうだった。


***


 執務室を出る。

 廊下を歩く。


 すると向こうから人影が見えた。


 レオだった。


「お嬢様」


「レオ」


 自然に笑みが浮かぶ。


 最近はそれが増えた。

 自分でも分かるくらい。


「良いことがありましたか?」


 レオが聞く。


 少しだけ悩む。

 昔の自分なら言わなかった。


 でも。


「褒められたの」


 そう答えた。


 レオが目を丸くする。


「領地経営ですか?」


「ええ」


「すごいですね」


 本気で嬉しそうな顔だった。

 まるで自分のことみたいに。


 その顔を見て。

 少しだけ前を思い出した。


 首席を取った時。


 大会で勝った時。


 課題を達成した時。


 私はちゃんとこういう顔をしていただろうか。


「ありがとう」


 小さく答える。


 レオは頷いた。


「お嬢様ならできます」


「簡単に言うわね」


「簡単じゃありません」


 真面目な返答だった。


 思わず笑ってしまう。


 レオも少しだけ笑った。


 以前と同じ。

 でも違う。


 今は私にも課題がある。

 私にも目指す場所がある。


 ただ待っているだけじゃない。


 そのことが少し嬉しかった。


 窓の外を見る。

 夕日が庭を赤く染めている。


 レオもその先を見る。


 同じ景色だった。


 前は。

 ずっと前を走る背中を見ていた。


 追いつけるはずもないと思っていた。


 でも最近は違う。


 まだ遠い。

 全然遠い。


 それでも。

 同じ方向を向いている気がした。


「レオ」


「はい」


「絶対に課題を達成しなさい」


 レオは一瞬だけ驚いた。


 そして。

 前と同じように笑った。


「もちろんです」


 迷いのない返事だった。


 だから。

 リリアナも笑う。


 負けるものかと思った。


 課題にも。

 未来にも。


 そして。

 この人の隣に立つことにも。

お読み頂き、ありがとうございます。

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