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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第四章 国家編

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第十四話 追いつくために

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 領地経営の勉強を始めて二週間。

 リリアナの日常は変わっていた。


***


 朝。

 学院へ行く。


 授業を受ける。


 放課後は帰宅。


 そして執務室。


 以前なら考えられなかった生活だった。


「税率を上げれば終わる話ではない」


 父の声が響く。


「領民が離れる」


「商人も減る」


「結果的に税収は下がる」


 リリアナは必死に手を動かした。


 難しい。

 本当に難しい。


 剣の方が分かりやすい。


 勉強の方がまだ楽だ。


 数字ばかり。

 人の生活ばかり。


 正解が一つじゃない。


 それが余計に難しかった。


 だが。

 不思議と嫌ではなかった。


「ここは?」


 自分から質問する。


 父が答える。


 また質問する。


 また答える。


 昔なら途中で投げていた。


 それでも続けている。


 理由は簡単だった。


 追いつきたいから。


***


 夜。

 ようやく解放される。


 執務室を出る。

 廊下を歩く。


 疲れた。

 本当に疲れた。


 すると。


「お嬢様」


 聞き慣れた声。


 顔を上げる。


 レオだった。


 思わず立ち止まる。


「どうしてここに」


「旦那様に呼ばれました」


 当然のように答える。


 今ではそれも日常らしい。


 少しだけ悔しかった。


 私より先にいる。

 私より多く知っている。


 そんな気がした。


「疲れていますね」


 レオが言う。


「誰のせいだと思ってるの」


 思わず返していた。


 レオが目を丸くする。


「俺ですか?」


「あなたよ」


 即答だった。


 レオは本気で困っている。


 その顔が少し面白い。


「勉強始めたんでしょう?」


「知ってるの?」


「ヴァルさんから」


 またヴァルだった。


 全部筒抜けらしい。


「大変ですか」


 聞かれる。


 リリアナは少し考えた。

 大変だった。


 正直。

 心が折れそうになる日もある。


 でも。


「そうね」


 小さく笑う。


「大変よ」


「でも楽しいわ」


 レオが静かに笑った。


「良かったです」


 それだけだった。


 以前なら分からなかった。


 今なら少し分かる。


 課題に向かう楽しさ。

 成長する楽しさ。


 諦めない理由。


 全部ではない。


 ほんの少しだけ。


 それでも。

 前よりずっと近付けた気がした。


 窓の外は夕暮れだった。


 オレンジ色の光が差し込む。


 レオは執務室へ向かう。


 父との仕事があるのだろう。


 また先へ進む。


 でも。

 今日は違った。


 背中が遠く見えない。


 少しだけ。

 本当に少しだけ。


 近付けた気がした。


「レオ」


 呼び止める。


 振り返る。


「はい」


 リリアナは少しだけ笑った。


「私も頑張るから」


 レオが一瞬だけ驚く。


 そして。

 前と同じように笑った。


「はい」


 その返事が。


 何だか少し嬉しかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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