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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第四章 国家編

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第九話 初めてのわがまま

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 次の日。

 リリアナは朝から機嫌が悪かった。


 自覚はあった。

 だから余計に気分が悪い。


***


 教室へ入る。


 レオは既に席にいた。


 何かの資料を読んでいる。


 最近ずっとそうだ。


 授業の合間も。

 休み時間も。


 王都へ行く馬車の中でも。


 たぶん。


 私の知らない場所でも。



 ずっと。

 前へ進んでいる。


「おはようございます」


 レオが顔を上げる。


「おはよう」


 短い会話。


 それだけ。


 以前なら。

 もっと自然に話せた気がする。


***


 昼休み。

 レオはまた囲まれていた。


「本当なのか?」


 アレクシスが聞いている。


「何がですか」


「騎士団の件」


「まだ途中です」


「否定しねぇのか」


 周囲が笑う。


 リリアナは少し離れた場所から見ていた。


 遠い。


 距離ではない。


 何かが。


 昔よりずっと。


***


 放課後。


 鐘が鳴る。


 レオが立ち上がる。


「失礼します」


 まただ。


 戻ってきてからいつもそう。


 王都。


 仕事。


 課題。


 その繰り返し。


 気付いた時には。


「待ちなさい」


 声が出ていた。


 教室が静まる。


 レオも止まる。


「お嬢様?」


 自分でも驚いた。


 皆も驚いている。


 ルイーゼまで目を丸くしていた。


 でも。

 止められなかった。


「今日は行かないで」


 言った瞬間。

 教室が凍り付いた。


 私も固まる。


 何を言っているのだろう。


 レオが一番驚いていた。


「えっと……」


 珍しく困っている。


 それでも私は視線を逸らさなかった。


「今日だけでいいから」


 声が小さくなる。


「少しくらい学院にいてもいいでしょう」


 沈黙。


 誰も喋らない。


 アレクシスでさえ。


 レオはしばらく考えていた。


 本当にしばらく。


 やがて。


「分かりました」


 小さく頷いた。


「今日だけ」


 それだけで。

 胸の奥が少し軽くなる。


 そんな自分に気付きたくなかった。


***


 夕暮れ。


 二人は学院の中庭を歩いていた。


 特別なことは何もない。


 話す内容も大したことじゃない。


 授業の話。


 ルイーゼの話。


 アレクシスの話。


 そんなものばかり。


 なのに。


 楽しかった。


 驚くほど。


「最近のお嬢様は変わりましたね」


 レオが言った。


「そうかしら」


「はい」


 少し笑う。


「昔はそんなわがまま言いませんでした」


 リリアナは足を止めた。


 わがまま。


 確かにそうだ。


 今までの私は。

 公爵令嬢だった。


 やるべきことをやる。


 我慢する。


 当たり前だった。


 でも今は。

 少しくらい。


 我慢したくなかった。


「たまにはいいでしょう」


 そう答える。


 レオは目を丸くした後。

 少しだけ笑った。


「はい」


 夕日が二人を照らしていた。


 昔は。

 追いかけていたのはレオだった。


 今は違う。


 今日。


 初めて。


 リリアナは自分のわがままで。


 レオを引き留めた。


 それが少しだけ嬉しかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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