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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第一章 学院編

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第五話 剣術実技

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 入学から数日。

 私はある事実に気付いていた。


 レオは勉強もできる。

 剣も強い。

 礼儀作法も意外とまとも。

 そして顔も良い。


 ……神様は少し配分を考えるべきだと思う。


「今日の授業は剣術実技だ」


 訓練場で教師が告げる。

 生徒達の表情が引き締まった。


 貴族学院では武術も重要だ。

 特に男子は騎士や領主になる者も多い。


「順番に模擬戦を行う」


 ざわりと空気が変わる。

 男子達の目が輝く。

 やはり戦える機会は嬉しいらしい。


「リリアナ様」


 隣にいたルイーゼが小声で話しかけてきた。


「どうかしたの?」


「レオさんって本当に強いんですの?」


「え?」


「Aランク冒険者なのでしょう?」


 周囲の女子達も興味津々だった。


「見てみたいですわ」


「私も」


「どれくらい強いのかしら」


 私は訓練場の向こうを見る。


 レオは木剣を受け取っていた。

 特に緊張している様子もない。


 普段通り。

 本当に普段通りだった。


 だから逆に怖い。


***


 一回戦。


 二回戦。


 三回戦。


 生徒達の試合が続いていく。

 貴族の子供だけあって皆それなりに強い。


 だが。


「次。アレクシス・フォン・ローゼン」


 歓声が上がった。


 首席候補。

 侯爵家の嫡男。

 誰もが注目する。


 対戦相手は伯爵家の男子生徒だった。


 結果は。


「そこまで」


 一撃。

 わずか十秒。

 アレクシスの圧勝だった。


「流石だ……」


「強いな」


「優勝候補だろ」


 周囲がざわめく。


 アレクシスは余裕の表情で木剣を肩に担いだ。


 確かに強い。

 幼い頃から鍛えられてきたことが分かる。


 そして。


「次。レオ」


 場の空気が変わった。


 全員の視線が集まる。

 レオの対戦相手は大柄な少年だった。


 入学初日にレオへ話しかけてきた友人。

 ガレスという名前だったはずだ。


「手加減しろよ?」


 ガレスが笑う。


「努力します」


 レオが頷く。


「絶対手加減する気ねぇな!?」


 周囲が笑った。

 緊張が少し緩む。


「始め!」


 教師の合図。


 ガレスが踏み込む。


 速い。


 かなりの実力者だ。


 だが。

 次の瞬間。


 木剣が宙を舞った。


「え?」


 誰かが呟く。


 ガレスの剣だった。

 手から離れ、数メートル先へ転がる。


 レオの木剣は既にガレスの喉元へ突き付けられていた。


 静寂。


 一瞬だった。

 本当に一瞬。


「そこまで」


 教師が宣言する。

 訓練場がざわめいた。


「今何した?」


「見えなかったぞ」


「打ち落としたのか?」


 私も分からなかった。

 本当に見えなかった。


 そして。

 レオは首を傾げた。


「大丈夫ですか?」


「お前なぁ……」


 ガレスが苦笑する。


「強くなりすぎだろ」


「そうでしょうか」


「そうなんだよ!」


 また笑いが起きる。


***


 だが。

 問題はここからだった。


「レオ」


 アレクシスが前へ出る。

 真っ直ぐ見据える。


「少し付き合え」


 周囲がざわつく。

 教師も眉を上げた。


「模擬戦ですか?」


「ああ」


 アレクシスは笑う。


「気になって仕方がない」


 当然だろう。

 今の試合を見れば誰だって試したくなる。


「教師」


 アレクシスが振り返る。


「許可を」


「……いいだろう」


 訓練場が沸いた。

 入学早々の頂上決戦。

 首席候補同士。


 誰もが見たかった組み合わせだ。


 私も思わず身を乗り出す。


 レオとアレクシス。

 どちらが強いのか。


 正直少し気になっていた。


「始め!」


 合図と同時。

 アレクシスが踏み込む。


 速い。

 今まで見た誰よりも速い。


 だが。

 レオは動かなかった。


 いや。

 動いた。


 剣がぶつかる。

 甲高い音。


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 アレクシスの猛攻。

 しかし全て受け止められる。


 そして。

 四撃目。


 レオが初めて踏み込んだ。


 次の瞬間。

 アレクシスの木剣が弾き飛ばされた。


 再び静寂。


 勝負は終わっていた。


「そこまで」


 教師が宣言する。

 誰も声を出せない。

 アレクシスですら固まっていた。


「……負けたか」


 やがて苦笑する。

 悔しそうだった。


 でも。

 どこか楽しそうでもあった。


 レオは木剣を下ろす。


「強かったです」


「慰めになっていないぞ」


「そうですか」


「そうだ」


 周囲から笑いが漏れた。


***


 授業終了後。

 私は一人で考えていた。


 勉強は満点。

 剣も最強。

 しかも冒険者Aランク。


 改めて整理すると意味が分からない。


 すると。


「お嬢様」


 いつの間にかレオが隣にいた。

 私は驚かなくなってきた。

 慣れというのは恐ろしい。


「なに?」


「課題の相談です」


「まだその話をするの?」


「大事なので」


 真面目な顔だった。

 本当に真面目だから困る。


「お嬢様」


「だからなに?」


 レオは少し考えてから言った。


「首席と剣術大会優勝」


「え?」


「どちらを先に達成した方が喜ばれますか?」


 一瞬。

 何を言われたのか分からなかった。


 私は額を押さえる。


 駄目だ。

 この人は。

 本当に。


「……両方達成してから聞きなさい」


「分かりました」


 即答。

 迷い無し。


 私は空を見上げた。


 きっと。

 この先もずっとこんな調子なのだろう。


 なぜか少しだけ。

 笑ってしまった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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