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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第四章 国家編

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第七話 知りたい

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 翌日。

 リリアナは珍しく早く学院へ来ていた。


 理由は自分でも分からない。

 分からないことにしていた。


 教室へ入る。

 まだ人は少ない。


 窓際の席。

 レオは既に来ていた。


 本を読んでいる。


 以前からそうだったはずなのに。

 今は少し違って見える。


 近付きたい。

 でも何を話せばいいのか分からない。


 結局。


「おはよう」


 それだけだった。


 レオが顔を上げる。


「おはようございます」


 少しだけ笑う。


 その笑顔を見て。

 胸の奥が温かくなる。


 そして。

 少しだけ悔しくなった。


 たったそれだけで嬉しくなる自分に。


***


 授業が始まる。

 終わる。


 昼休み。


 レオはまた書類を読んでいた。


 見たこともない資料。


 地図。

 数字。

 領地名。


 何かを調べている。


「それ」


 気付けば声を掛けていた。


 レオが顔を上げる。


「はい?」


「何を見ているの?」


 少しだけ。

 本当に少しだけ。


 期待した。


 今度こそ教えてくれるかもしれないと。


 だが。


「仕事です」


 その返事だった。


 頭が痛くなる。


「仕事なのは分かってるわ」


「そうですか」


「そうじゃなくて」


 言葉が止まる。


 私は何を聞きたいのだろう。


 仕事の内容?

 課題?


 違う。


 たぶん。

 知りたかったのは。


 レオのことだ。


 この一か月。

 何をしていたのか。

 何を考えていたのか。

 どうして戻ってきたのか。


 全部。


 レオは少し困った顔をした。


「申し訳ありません」


「またそれね」


 思わず笑ってしまう。


 怒る気にもなれなかった。


***


 放課後。


 いつものようにレオは立ち上がる。


「失礼します」


 そして教室を出て行く。


 以前ならここで終わりだった。


 けれど。

 リリアナは立ち上がった。


 ルイーゼが目を丸くする。


「リリアナ様?」


「少し用事よ」


 そう言い残し。

 教室を出る。


 長い廊下。

 レオの背中が見えた。


 少し早足になる。


 昔。

 何度も見ていた背中。


 でもいつも。

 追いかけていたのはレオだった。


 私じゃない。


「レオ」


 呼ぶ。


 レオが振り返った。


「お嬢様?」


 追い付いた。


 少しだけ息が上がっている。


 そんな自分がおかしかった。


「今日は王都?」


「はい」


「そう」


 そこで会話が途切く。


 呼び止めたのに。

 話したいことが山ほどあったのに。


 何も出てこない。


 レオが静かに待っていた。

 昔からそうだった。


 私が話すまで待ってくれる。


 だから。

 やっと言えた。


「無茶しないで」


 レオが少し驚いた顔をした。


「課題なんでしょう?」


「はい」


「だったら」


 視線を逸らす。

 恥ずかしかった。


 でも。

 言わなければならない気がした。


「ちゃんと戻ってきなさい」


 静かな沈黙。


 レオはしばらく何も言わなかった。


 やがて。


「はい」


 優しく笑った。


「必ず」


 その返事を聞いた瞬間。

 少しだけ安心した。


 本当に少しだけ。


 馬車へ向かうレオの背中を見送る。


 以前と同じ背中。

 でも少し違う。


 遠くなったようで。

 近付いたようでもある。


 リリアナは気付いていなかった。


 今日初めて。


 自分からレオを追いかけたことに。

お読み頂き、ありがとうございます。

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