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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第四章 国家編

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第五話 届かない場所

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 レオが婚約者候補になってから一か月。

 学院ではもう誰も驚かなくなっていた。


「また早退?」


 アレクシスが呆れた声を出す。


「はい」


 レオは席を立つ。


「では失礼します」


 それだけ言って教室を出ていく。


 誰も引き留めない。

 もう慣れてしまった。


 校門の外には迎えの馬車。

 扉が閉まり。

 走り去る。

 いつもの光景。


 私は窓からそれを見送った。


「最近本当に忙しいですわね」


 ルイーゼがぽつりと言う。


「そうね」


「王都でも有名になっているらしいですし」


 有名。


 その言葉に少しだけ違和感を覚えた。


 以前のレオは。

 学院首席。

 剣術大会優勝。


 それくらいだった。


 今は違う。


 私の知らない場所で。

 私の知らない人達と会っている。


 それが妙に遠く感じた。


---


 放課後。

 帰宅すると来客が来ていた。


 王都からの使者。

 父との面会らしい。


 応接間の前を通った時。

 扉が少しだけ開いていた。


「想定より早いな」


 父の声。


「はい」


 聞こえたのはレオの声だった。


 思わず足が止まる。


「だが問題はこの先だ」


「承知しております」


「王城の連中は結果しか見ん」


「結果を出します」


 迷いのない声だった。


 私は聞き耳を立てている自分に気付いて慌てて離れた。


 何をしているのだろう。


 公爵令嬢が。

 まるで子供みたいに。


 それでも。

 気になった。


---


 夜。

 食事の席。


「お父様」


 珍しく自分から話し掛ける。


「なんだ」


「レオは何をしているのですか」


 父はナイフを置いた。

 少しだけ考える。


「働いている」


「それは見れば分かります」


「なら十分だ」


 またそれだった。


 私はため息を飲み込む。


 これ以上聞いても無駄。


 もう分かっていた。


「一つだけ教えてやろう」


 父が不意に言った。


 思わず顔を上げる。


「課題は進んでいる」


「どれくらい?」


「順調だ」


 それだけだった。


 でも。

 少しだけ安心した自分がいた。


---


 部屋へ戻る。

 窓を開ける。


 夜風が入ってくる。


 机の上には青いペンダント。


 指先で触れる。


 昔は追いかけられる側だった。


 課題を出す側だった。


 レオが走っていた。


 私は待っていた。


 今は逆だ。


 私は待つことしかできない。


 何も知らない。

 何も手伝えない。


 ただ結果を聞くだけ。


 それがこんなに苦しいとは思わなかった。


 窓の外では雲が流れていく。


 その向こうに王都がある。


 そして今も。

 レオはどこかで前へ進んでいる。


 私の知らない場所へ。

 届かない場所へ。


 置いていかれたくない。


 ふと浮かんだその気持ちに。

 リリアナは静かに目を閉じた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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