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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第四章 国家編

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第三話 遠い背中

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 レオが学院へ戻ってきて一週間。


 けれど。

 戻ってきたのは姿だけだった。


***


 朝。

 教室へ入る。


 レオは既に席にいる。


 以前なら。

 授業が始まるまで話していた。


 今は違う。


 本を読んでいる。


 時々書類を確認している。


 見たことのない紋章が押されていた。


「おはようございます」


 視線が合う。


「おはよう」


 それだけ。


 会話が続かない。

 続けられない。


 何を話せばいいのか分からなくなっていた。


***


 昼休み。

 レオの席には人だかりができていた。


「また王都へ行くのか?」


 アレクシスが聞いている。


「はい」


「毎日じゃねぇか」


「仕事なので」


 その返答ばかりだった。


 仕事。

 課題。


 それしか言わない。


 ルイーゼが小さく呟く。


「なんだか別人みたいですわ」


 リリアナもそう思った。


 前より大人になった。

 前より落ち着いた。


 でも。

 どこか遠い。


***


 放課後。

 鐘が鳴る。


 レオが立ち上がる。


「失礼します」


 そのまま教室を出ていく。


 以前なら。

 訓練場へ向かった。


 あるいは。


『お嬢様』


 そう呼ばれた。

 今はない。


 何となく窓へ近付く。


 校門の外。

 一台の馬車が待っていた。


 王都の紋章。

 レオはそれへ乗り込む。


 そして走り去る。


「……」


 気付けば見送っていた。

 以前の私なら考えもしなかったことだ。


***


 その日の夜。

 食堂。


「オルスタッドは順調だ」


 突然父が言った。


 スプーンが止まる。


「そうですか」


「既に幾つか成果も出している」


「何をしているのですか」


 初めて自分から聞いた。

 父が私を見る。


「言えん」


 またそれだった。


 最近ずっとそうだ。


 誰も教えてくれない。


 父も。

 レオも。

 ヴァルでさえ。


「その課題とやらは」


 少し強い声になる。


「そんなに秘密なんですか」


 父は答えない。


 ただ静かに食事を続ける。


 それが余計に腹立たしかった。


***


 夜。

 部屋へ戻る。


 机には青いペンダント。


 指先で触れる。


 冷たい。


 誕生日会の日を思い出す。


 あの日。

 私は何も知らなかった。


 でも嬉しかった。


 それだけだった。


 今も同じだった。


 何も知らない。

 何も教えてもらえない。


 ただ。

 レオが遠い場所へ行ってしまいそうで。

 それだけが少し怖かった。


 窓の外では夜風が木々を揺らしている。


 その音を聞きながら。

 リリアナは初めて考えた。


 課題を越えられなかったら。

 婚約が解消されたら。

 どうなるのだろうと。


 そして。

 その答えを考えたくない自分がいることに気付いてしまった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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