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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第四章 国家編

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第二話 戻ってきたのに

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 翌朝。

 リリアナはいつもより早く目が覚めた。


 眠れなかった訳ではない。


 ただ。

 何度も目が覚めただけだ。


***


 制服へ着替える。

 鏡を見る。


 少しだけ顔色が悪い。


「お嬢様」


 エミリーが心配そうに見る。


「大丈夫よ」


 そう答えた。


 自分でも信じていないけれど。


***


 学院へ向かう馬車の中。

 窓の外を眺める。

 頭の中では昨日のことばかりだった。


『レオ・オルスタッドと申します』


 一か月ぶりに聞いた声。


 婚約者。

 知らない課題。


 何も教えてくれない父。

 何も話さないレオ。


 考えれば考えるほど分からなくなる。


***


 教室の扉を開く。


 そして。

 止まった。


 窓際の席。

 そこにレオが座っていた。


 当たり前のように。

 何事もなかったように。


 ただ本を読んでいる。


 その光景を見た瞬間。

 胸の奥が大きく鳴った。


「おはようございます」


 レオが顔を上げる。


 いつも通りだった。

 本当に。

 信じられないほど。


 いつも通り。


「お、おはよう」


 少し声が上ずる。


 レオは気付いていない。

 気付かないまままた本へ視線を戻した。


 それが少し腹立たしかった。


 教室中は大騒ぎだった。


「レオ!」


 アレクシスが真っ先に詰め寄る。


「どこ行ってたんだ!」


「少し用事です」


「少しじゃねぇだろ!」


 周囲から笑いが起きる。


 ルイーゼも涙目だった。


「本当に心配しましたのよ!」


「申し訳ありません」


 素直に頭を下げる。


 その様子を見ながら。

 リリアナだけが黙っていた。


 聞きたいことがある。

 山ほどある。


 でも聞けない。


 昨日。

 聞いても答えてもらえなかったから。


***


 昼休み。

 気付けばレオが隣へ来ていた。


「お嬢様」


「なによ」


「お弁当です」


 差し出される包み。


 昔と同じだった。

 何も変わらない。


 だから少しだけ混乱する。


「……ありがとう」


 受け取る。

 レオは小さく頷いた。


「今日は午後で早退します」


「え?」


 思わず顔を上げる。


「仕事がありますので」


「仕事?」


「はい」


 それ以上は話さない。


 まただ。

 昨日と同じ。


 知らないことばかり。


 そして午後。

 本当に帰ってしまった。


 教室の窓から。

 馬車へ乗る姿が見える。


 学院の生徒ではない。


 まるで。

 どこかの貴族みたいだった。


「忙しそうですわね」


 ルイーゼが呟く。


「そうね」


 リリアナは窓の外を見つめる。


 戻ってきた。

 確かに戻ってきた。


 でも。

 前と同じじゃない。


 私の知らない場所で。

 私の知らない課題へ向かっている。


 そんな気がした。


***


 その日の夜。

 公爵邸の食堂。


 父が静かに言った。


「明日からオルスタッドは王都へ出る」


 スプーンが止まる。


「王都?」


「仕事だ」


 父はそれ以上語らなかった。


 だが。

 リリアナには分かった。


 知らないところで。

 何か大きなことが動いている。


 そしてその中心に。

 レオがいるのだと。

お読み頂き、ありがとうございます。

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