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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第四章 国家編

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第一話 知らない課題

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 思考が止まっていた。


「レオ……?」


 目の前の青年が小さく微笑む。


「お久しぶりです」


 聞き慣れた声。

 間違いない。


 一か月以上姿を消していた。


 何も言わずに。

 何も残さずに。


 そのレオだった。


 言いたいことは山ほどあった。

 どこへ行っていたのか。

 何をしていたのか。

 どうして何も言わなかったのか。


 なのに。

 言葉が出ない。


 父が静かに席へ座った。


「話を進める」


 その一言で空気が変わる。


 レオも表情を引き締めた。


 私だけが取り残されている。


「リリアナ」


「はい」


「オルスタッドを正式な婚約者として認める」


 言葉の意味を理解するまで少し時間がかかった。


 婚約者。


 レオが。


 公爵家の。


 私の。


 頭の中が真っ白になる。


「ただし」


 父が続ける。


 その声は厳しかった。


「オルスタッドに出した課題を越えられなければ、この婚約は即座に解消する」


「承知しております」


 レオは迷わず答えた。


 まるで。

 最初から知っていたみたいに。


「待って」


 気付けば口を挟んでいた。


 二人の視線が私へ向く。


「どういうこと?」


 父を見る。


 レオを見る。


「課題って何」


 誰もすぐには答えない。


 私だけ知らない。


 その事実が無性に腹立たしかった。


「お父様」


「まだ話せん」


 即答だった。


「でも」


「まだだ」


 父はそれ以上答えなかった。


 私はレオを見る。


「レオ」


「はい」


「説明して」


 一か月ぶりだった。


 ようやく聞けた言葉。


 なのに。

 レオは困った顔をした。


「申し訳ありません」


「……何よそれ」


「約束ですので」


 その言葉に。


 少しだけ昔を思い出した。


 『課題です。』


 そう言っていた頃を。


 思い出したくないのに。


 思い出してしまう。


 父が立ち上がる。


「今日は以上だ」


 話は終わりらしい。


 私は納得していなかった。


 全然。


 何も。


 でも二人は終わっている。


 私だけ置いていかれていた。


***


 応接室を出る。


 長い廊下。


 夕陽が差し込んでいる。


 私は急に立ち止まった。


「お嬢様」


 後ろから声がする。


 振り返る。


 レオだった。


 一か月ぶり。


 本当に一か月ぶり。


 近くで見る。


 少し背が伸びていた。


 雰囲気も変わった。


 でも。


 目だけは変わらない。


「何よ」


 少し強い声になる。


 自分でも分かっていた。


 怒っている。


 たぶん。


 かなり。


「申し訳ありませんでした」


 レオが頭を下げる。


「心配をかけました」


 胸が痛くなる。


 心配。


 認めたくなかった言葉。


 でも。


 一か月。


 毎日考えていた。


 毎日だ。


「本当にそう思うなら」


 声が震えた。


「勝手にいなくならないで」


 言ってしまった。


 静寂。


 レオが目を見開いている。


 私も固まった。


 何を言っているのだろう。


 慌てて顔を逸らす。


「……もういいわ」


 歩き出す。


 それ以上は言えなかった。


 後ろから追い掛けてくる足音はない。


 でも。


 聞こえた。


「はい」


 小さな返事。


 それだけだった。


***


 その夜。


 リリアナは眠れなかった。


 レオが戻ってきた。


 婚約者になっていた。


 そして。


 自分の知らない課題に挑んでいる。


 何一つ分からない。


 何も。


 それなのに。


 久しぶりに明日が気になっていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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