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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第三章 公爵編

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第四話 心配

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 レオがいなくなって一か月。

 教室の空席にも慣れた。


 慣れてしまった。

 それが少し嫌だった。


***


 朝。


 教室へ入る。

 席へ着く。

 授業を受ける。


 気付けば窓際を見ている。


 誰もいない。


 当たり前だった。


「リリアナ様」


 ルイーゼが心配そうな顔をしていた。


「なに?」


「最近、本当に大丈夫ですの?」


 またその話だった。


「大丈夫よ」


「大丈夫な人はそんな顔をしませんわ」


 返事ができなかった。


 ルイーゼはため息を吐く。


「アレクシス様も心配しておりますし」


「そう」


「レオさんもいなくなりましたし」


 その名前が出た瞬間。


 胸が少し痛んだ。


「その話はやめましょう」


 ルイーゼは何も言わなかった。


 それが逆に辛かった。


***


 昼休み。

 アレクシスが机へ肘をつく。


「見かけたら殴ってやる」


「誰を?」


「レオ」


 思わず顔を上げた。


「どうしてよ」


「理由も言わず消えた」


 アレクシスは不機嫌だった。


「仲間失格だろ」


 少しだけ嬉しくなる。

 心配しているのは私だけじゃなかった。


「そうね」


 小さく返した。


「戻って来たら説教だな」


「ええ」


 本当は。


 説教なんてどうでもよかった。


 ただ。


 顔を見たい。


 それだけだった。


***


 放課後。

 また顔合わせだった。


 伯爵家の嫡男。

 礼儀正しい。

 優秀。

 将来有望。

 父も満足している。


 だが。

 私には何も響かなかった。


「趣味はありますか?」


 聞かれる。


「読書です」


 嘘だった。


 最近は本も読めていない。

 文字が頭に入らない。


「好きな男性のタイプは?」


 笑顔で聞かれる。


 その瞬間。

 一人の顔が浮かんだ。


 慌てて打ち消す。


「特にありません」


 伯爵子息は残念そうだった。


 どうでもよかった。


***


 帰りの馬車。

 エミリーが黙って隣に座っている。


「お嬢様」


「なに?」


「最近、夜眠れていますか?」


「眠れているわ」


 嘘だった。


 毎晩。

 同じことばかり考える。


 どこにいるのか。

 何をしているのか。

 怪我はしていないか。

 ちゃんと食べているか。


 そんなことばかり。


「お嬢様は優しいですね」


 エミリーが言った。


「違うわ」


 即答だった。


「心配なんてしていない」


「そうですか」


 エミリーはそれ以上言わなかった。


 部屋へ戻る。


 机の上には青いペンダント。

 手に取る。

 冷たい。


 でも。

 少しだけ安心する。


 その時だった。

 扉がノックされる。


「お嬢様」


 ヴァルだった。


「旦那様がお呼びです」


 まただ。


 最近増えた。

 父の呼び出し。


 理由は分かっている。

 婚約者候補。


 そう思いながら執務室へ向かう。


 父は窓の外を見ていた。

 私が入ると振り返る。


「来たか」


「はい」


 短い沈黙。


 そして。


「来週は約束の一か月後だ」


「……はい」


「正式な婚約者を決定する」


 心が少しだけ沈む。


 もう聞いた話だった。


 でも。

 こうして改めて言われると重い。


「当日は必ず出席しなさい」


「分かりました」


 父は何も言わなくなった。


 私も何も言わない。


 会話は終わる。


 部屋を出る。


 長い廊下を歩く。


 窓の外は夕焼けだった。


 一週間後。


 婚約者が決まる。


 それで全部終わる。


 そう思った。


 それなのに。

 頭に浮かぶのは。


 戻ってこない少年のことばかりだった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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