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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第三章 公爵編

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第二話 くだらないお茶会

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 レオがいなくなって二週間。

 学院の生活は続いていた。


 授業を受ける。

 試験を受ける。

 帰る。


 それだけ。


 何も変わらない。

 変わっていないはずだった。


***


 休日。

 リリアナは王都の侯爵邸にいた。


 お茶会だった。

 公爵令嬢として断れない集まり。


 最近は特に多い。

 婚約者候補の話が出てからはなおさらだった。


「リリアナ様」


 見知らぬ令嬢が話し掛けてくる。


「お会いできて光栄です」


「ありがとうございます」


 笑う。

 失礼のないように。

 綺麗に。

 慣れたものだった。


「今度、侯爵家のご子息とお会いするそうですね」


「そうらしいですわ」


「羨ましいです」


 全く羨ましくなかった。


 紅茶を口に運ぶ。

 味がしない。


 甘いのか。

 苦いのか。


 よく分からなかった。


「どの方がお気に入りですの?」


 令嬢達が楽しそうに話している。


 誰それが格好良い。

 誰それが有望だ。

 誰それは騎士団へ入る予定だ。


 どうでもよかった。


 本当に。

 どうでもいい。


 気付けば窓の外を見ている。

 空は青かった。


 ただそれだけだった。


「リリアナ様?」


 呼ばれて我に返る。


「ごめんなさい」


「お疲れですの?」


「少し」


 嘘ではなかった。


 最近ずっと疲れている。

 何もしていないのに。


 そのままお茶会は終わった。


***


 帰りの馬車。

 向かいにはエミリーが座っている。


「楽しくありませんでしたか?」


「ええ」


 隠す気にもなれなかった。


「最近はどれも同じよ」


 顔合わせ。

 お茶会。

 食事会。

 これから増える婚約者候補との会談。


 全部同じだった。


 同じ笑顔。

 同じ会話。

 同じ未来。


 考えるだけで息が詰まった。


***


 学院へ行く。


 翌日。


 いつも通り教室へ入る。


 そして。


 無意識に見てしまう。


 窓際の席。


 空席。


 今日も誰も座っていない。


 視線を逸らす。


 最近それを見られるのが嫌だった。


 まるで待っているみたいだから。


「おはようございます」


 ルイーゼが隣へ来る。


「おはよう」


「今週も休学だそうです」


 心臓が少しだけ痛んだ。


 でも顔には出さない。


「そう」


 それだけ答える。


 ルイーゼは何か言いたそうだった。


 でも言わなかった。


 最近みんなそうだ。


 心配している。


 分かっている。


 でも誰も踏み込まない。


 私自身が壁を作っているから。


***


 放課後。

 いつものように帰る。


 訓練場の前を通る。

 木剣の音は聞こえない。


 静かだった。

 昔はうるさいくらいだったのに。


 何となく立ち止まる。

 何もない場所を見る。


 そして少しだけ笑った。


 以前の私は。

 うるさいと思っていた。


 毎日毎日。

 飽きもせず剣を振っている姿を。


 なのに今は。

 その音がないことが少し寂しい。


 寂しい。


 その言葉が頭をよぎる。


 リリアナは首を振った。


 考えない。

 考えても意味がない。


 レオはもういない。


 私は公爵令嬢だ。


 婚約者も決まる。


 それで終わりだ。


 そう思いながら歩く。


 それなのに。

 夕日に染まった訓練場だけが。

 妙に目に焼き付いて離れなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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