第二十二話 返ってこない
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
翌朝。
リリアナは少しだけ緊張していた。
昨日。
あんなことを言った。
傷付けた。
間違いなく。
だから。
今日はどうなるのだろうと思っていた。
きっと。
レオはいつも通り来る。
少し困った顔をして。
「おはようございます」
そう言う。
そして何事もなかったように接してくる。
そう思っていた。
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教室へ入る。
レオの席を見る。
空だった。
「まだ来てないのね」
小さく呟く。
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昼になった。
まだ来ない。
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放課後。
来なかった。
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翌日。
やはり来ない。
「お休みだそうです」
ルイーゼが言う。
「そう」
平静を装った。
でも心臓が嫌な音を立てる。
まただ。
一か月前。
突然いなくなった時と同じ。
落ち着かない。
三日目。
四日目。
五日目。
やはり来ない。
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授業が終わる。
教室に残る。
気付けば窓の外を見ていた。
訓練場。
木剣を振る姿はない。
「お嬢様」
エミリーが心配そうな顔をする。
「なによ」
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「最近ずっと窓を見ています」
返事ができなかった。
図星だった。
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六日目。
七日目。
来ない。
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とうとう我慢できなくなった。
「ルイーゼ」
「はい?」
「レオのこと何か知らない?」
言ってから固まる。
自分から聞いてしまった。
ルイーゼも驚いていた。
「いえ……」
「そう」
「ですが」
ルイーゼが声を落とす。
「少し妙な噂は聞きました」
胸が跳ねる。
「何?」
「王都の貴族街で見かけたという話です」
貴族街。
レオが。
なぜ。
「どこで?」
「それは……」
ルイーゼが迷う。
「クラインベルク公爵家だとか」
時間が止まった。
心臓が鳴る。
大きく。
嫌な予感と一緒に。
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放課後。
リリアナは真っ先に帰宅した。
そして。
「エミリー」
「はい」
「最近屋敷へ来客は?」
エミリーが少し驚く。
「ありました」
「誰?」
「レオ様です」
息が止まる。
「いつ」
「三日前です」
三日前。
「何をしに?」
「それは存じません」
使用人達も詳しく知らないらしい。
ただ。
ヴァルと話し。
公爵へ面会を求め。
その後も何度か屋敷へ来た。
それだけだった。
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夜。
ベッドへ座る。
眠れない。
考えてしまう。
どうして。
どうして公爵家へ。
どうして父に。
そして。
なぜ私には何も言わないのか。
分からない。
だけど一つだけ。
嫌なほど分かることがあった。
あの日。
自分が突き放した。
だから。
何かを一人で抱え込んでいる。
昔からそうだった。
無茶な課題も。
冒険者も。
首席も。
全部。
一人でやってきた。
そして今も。
また一人で何かをしようとしている。
窓の外を見る。
夜空だった。
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リリアナは知らない。
その頃レオが。
公爵家の門の前で。
何度も追い返されながら。
それでも帰らず。
たった一つの答えを探していることを。
なぜ。
リリアナが自分を遠ざけたのか。
その理由を。
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