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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第二章 貴族社会編

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第十七話 いつも通り

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 誕生日会まであと三日。


 その日。

 久しぶりにレオは訓練場にいた。


 放課後。

 学院の窓から見える場所。

 木剣を振る音が響く。


 振る。


 振る。


 また振る。


 見慣れた光景だった。


「いましたわね」


 隣でルイーゼが言う。


「そうね」


 私は窓の外を見たまま答えた。


 一週間の休学。

 謎の放課後。

 宝飾工房。


 全部。


 何事もなかったみたいに。

 レオは木剣を振っている。


「結局何だったのでしょう」


「知らないわ」


 本当に知らない。


 でも。

 少しだけ安心していた。


 いつも通りだから。

 ただそれだけで。


 自分でもおかしいと思う。


***


 教室を出る。

 訓練場の前を通る。


 レオはまだ剣を振っていた。


 汗を流しながら。

 真剣な顔で。


「お嬢様」


 私に気付く。


「なに?」


「お疲れ様です」


「お疲れ様」


 当たり前みたいな会話。

 当たり前だったはずなのに。

 ここ最近は少し違った。


 だからだろうか。

 妙に落ち着く。


「最近また訓練しているのね」


「はい」


「もう終わったので」


 終わった。


 何が。


 危うく聞きそうになる。


 でも聞かなかった。


「そう」


「はい」


 レオはそれ以上話さない。


 私も聞かない。


 不思議な沈黙だった。


 それでも嫌じゃない。


 木剣が風を切る音だけが響いていた。


「誕生日会まであと少しね」


 何となく言う。


 レオが頷いた。


「そうですね」


「準備はできているの?」


「たぶん」


 少しだけ緊張しているようだった。


 舞踏会の時と同じ。


 珍しい。


 そう思ったら少しだけ笑ってしまう。


「大丈夫よ」


「そうでしょうか」


「ええ」


 気付けばそう言っていた。


「あなたなら大丈夫」


 レオが目を丸くする。


 私は自分でも驚いた。


 でも。

 嘘ではなかった。


 無茶な課題ばかりだった。


 街一番の冒険者。

 学院首席。

 剣術大会優勝。


 全部やった。


 だから。


「ありがとうごさいます」


 レオは少しだけ笑った。


 その笑顔を見て。

 私は思う。


 やっぱり最近おかしい。


 放課後にいなくなっただけで気になった。

 怪我をしていないか心配した。


 今こうして笑っているだけで安心する。


 どうしてだろう。

 答えは分からない。

 分からないままでいいとも思った。


 夕日が訓練場を赤く染める。


 木剣を振る音がまた響く。


 久しぶりの。

 いつも通りの日常だった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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