第十六話 気になる
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
翌日。
私は決めていた。
決して尾行ではない。
そう。
決して。
「お嬢様」
エミリーが呆れた顔をしている。
「なによ」
「それを尾行と呼ぶのでは?」
「違うわ」
即答した。
「課題の進捗確認よ」
「課題は誕生日会参加だったと思いますが」
「そのための確認よ」
我ながら苦しい。
エミリーもそう思っている顔だった。
非常に腹立たしい。
***
授業終了の鐘が鳴る。
「失礼します」
レオが立ち上がる。
やはり今日も木剣を持っていない。
そしてそのまま教室を出ていく。
「行くわよ」
「本当に行くんですね」
「確認よ」
「確認ですね」
全く信じていない声だった。
学院を出る。
少し距離を取る。
レオは真っ直ぐ町の方へ歩いていた。
迷いがない。
何度も通っている道なのだろう。
「依頼ではなさそうですね」
エミリーが呟く。
「そうね」
冒険者ギルドの方向ではない。
住宅街を抜ける。
商店街へ入る。
そして。
足を止めた。
「ここ?」
私も止まる。
レオが入っていったのは小さな店だった。
看板を見る。
『宝飾工房』
私は瞬きをした。
「宝飾?」
思っていた場所ではない。
もっと危険な場所だと思っていた。
もっと無茶なことをしているのかと。
なのに。
宝飾工房。
レオはその中へ入っていった。
「何をしているのでしょう」
「さあ……」
分からない。
本当に。
全く。
***
しばらく待つ。
一時間。
二時間。
夕方になる。
それでも出てこない。
「長いですね」
「そうね」
何をしているのだろう。
まさか。
アクセサリーでも買っているのだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。
私は慌てて首を振った。
違う。
そうじゃない。
誕生日会のためかもしれない。
でも。
そうだとしても。
どうしてこんなに気になるのだろう。
ようやくレオが出てきた。
顔に煤が付いている。
制服も少し汚れていた。
でも。
表情は真剣だった。
何かを抱えるように胸元を押さえながら歩いていく。
「帰るわよ」
私は立ち上がった。
「もういいんですか?」
「ええ」
十分だった。
少なくとも。
危険な依頼ではない。
怪我をしているわけでもない。
それだけ分かれば。
それでいい。
***
その日の夜。
ベッドへ入っても。
なぜか宝飾工房が頭から離れなかった。
何をしているのだろう。
何を作っているのだろう。
どうして毎日通っているのだろう。
気になる。
本当に気になる。
そして。
そんなことを考えている自分に。
少しだけ驚いていた。
いつからだろう。
私は。
レオのことばかり考えるようになっていた。
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