第十四話 贈り物
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
誕生日会まで残り二週間。
その話をしてからというもの。
レオは妙に真面目だった。
いや。
元から真面目なのだけれど。
今回は少し違う。
「お嬢様」
「なに?」
「誕生日会とは何をする場所なんですか?」
朝一番で聞かれた。
「貴族が集まるのよ」
「はい」
「挨拶をして、食事をして、話をして」
「なるほど」
「それから贈り物を渡したりするわ」
そこでレオの動きが止まった。
「贈り物」
「そうよ」
「必要なんですか?」
「普通はね」
レオが黙り込む。
嫌な予感がした。
「まさか」
「はい」
「考えてなかったの?」
「忘れていました」
私は額を押さえた。
本当にこの人は。
剣と課題以外になると急に抜ける。
「絶対に忘れてはいけないことでしょう!」
「そうなんですか」
「そうなの!」
教室中から笑い声が上がった。
「レオらしいな」
アレクシスまで笑っている。
「勉強は首席」
「剣術大会優勝」
「でも贈り物は忘れる」
「仕方ありません」
レオは真面目だった。
本当に真面目だった。
だから余計に面白い。
***
放課後。
私は図書館へ向かっていた。
すると中庭でレオを見かける。
珍しいことに木剣を振っていなかった。
ベンチに座り。
何かの紙と睨めっこをしている。
「何してるの?」
後ろから声を掛ける。
レオが驚いて振り返った。
「お嬢様」
「その紙は?」
ちらりと見える。
そこには文字が並んでいた。
『女性への贈り物』
『貴族の誕生日』
『人気』
私は固まった。
「……」
「……」
沈黙。
レオも固まっている。
先に口を開いたのは私だった。
「べ、別に見てないわ」
「見えていました」
そうね。
見えていたわね。
穴があったら入りたい。
「その」
レオが少し困った顔をする。
「何を贈ればいいか分からなくて」
その顔を見て。
少しだけ胸が温かくなった。
課題だから。
そう言って参加すると決めたのに。
ちゃんと考えている。
真剣に。
私の誕生日会を。
「高価な物はいらないわよ」
「そうなんですか?」
「ええ」
本当に必要ない。
公爵家には大抵の物がある。
宝石。
絵画。
装飾品。
何でも。
「大事なのは気持ちよ」
言ってから少し恥ずかしくなる。
何を言っているのだろう。
だがレオは真剣だった。
「なるほど」
そして。
頷く。
「分かりました」
「本当に?」
「はい」
何か決意したような顔だった。
少し嫌な予感もする。
この人の決意は大体大事になる。
***
帰り道。
私はふと思う。
どんな物を持ってくるのだろう。
レオだから。
きっと変な物かもしれない。
すごく真面目な顔で。
よく分からない物を持ってくるかもしれない。
そう考えたら。
自然と笑みがこぼれた。
自分でも気付かないうちに。
私はもう。
誕生日会そのものより。
レオが何を持ってくるのかの方が。
少しだけ楽しみになっていた。
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