第十三話 誕生日会
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
舞踏会から一週間ほど経った頃だった。
昼休み。
私は教室で手紙を読んでいた。
「お嬢様?」
レオだった。
「なに?」
「難しい顔をしています」
私は手紙を畳む。
「別に」
嘘だった。
少し困っていた。
「何かありましたか?」
レオは引かなかった。
私は少しだけ迷う。
そして答えた。
「来月、誕生日会があるの」
「誕生日会」
「ええ」
レオは納得したように頷いた。
「おめでとうございます」
まだ先なのだけれど。
「ありがとう」
少し笑う。
レオもつられて笑った。
「大変なんですか?」
「まあね」
誕生日会。
言葉だけなら華やかだ。
でも実際は違う。
上位貴族が集まる。
家同士の交流。
縁談。
政治。
色々なものが絡む。
「そうですか」
レオは少し考えた。
「なら頑張ってください」
「他人事ね」
「俺は誕生日会に行ったことがないので」
それもそうだった。
私はそこで止まる。
ふと思った。
そして。
気付けば口にしていた。
「来る?」
「はい?」
レオが固まった。
私も固まった。
なぜ今そんなことを言ったのだろう。
でも。
もう遅い。
「その……」
言い訳を探す。
見つからない。
「課題よ」
出た。
我ながら酷い。
「課題ですか」
レオは真面目な顔になった。
「そう」
「誕生日会へ参加しなさい」
「分かりました」
即答だった。
少しだけ安心する。
そして少しだけ嬉しい。
「その代わり」
「はい」
「恥をかかないこと」
「課題ですね」
「そうよ」
「達成します」
本当に迷わない。
私は少し笑った。
***
放課後。
その話はすぐに広まった。
「誕生日会!?」
ルイーゼが立ち上がる。
「レオさんを招待するんですの!?」
「ええ」
「公爵家の誕生日会ですよ!?」
「そうだけど」
何か問題があるのだろうか。
いや。
問題はある。
かなりある。
普段なら呼ばない。
普通は。
でも。
今回は呼びたかった。
理由は分からない。
考えないことにする。
「課題だから」
私が言う。
ルイーゼが額を押さえた。
「もう何でも課題ですわね……」
私も少しそう思う。
窓の外ではレオが木剣を振っていた。
一振り。
また一振り。
変わらない。
あの日からずっと。
私はその姿を見る。
そして思う。
誕生日会が来るのが。
少しだけ楽しみだと。
その理由だけは。
まだ認めたくなかった。
お読み頂き、ありがとうございます。




