第十三話 次の課題
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
舞踏会から数日。
学院はいつもの日常へ戻っていた。
授業。
試験。
鍛錬。
変わらない毎日。
でも。
私の周囲だけは少し違った。
「リリアナ様」
昼休み。
ルイーゼが机へ身を乗り出してくる。
「なによ」
「次の課題は決まりましたの?」
私は止まった。
最近そればかり聞かれる。
そして困る。
本当に困る。
「まだよ」
「珍しいですわね」
「そうかしら」
「いつもなら決まっておりますもの」
ルイーゼの言う通りだった。
今までは簡単だった。
思いついたことを言えば良かった。
でも最近は違う。
妙に悩む。
理由は自分でも分からなかった。
「お嬢様」
噂をすれば。
レオだった。
「なに?」
「課題ですか?」
やっぱり。
私はため息をついた。
「どうして皆そうなるのよ」
「違うんですか?」
「違わないけど」
レオが小さく頷く。
納得したらしい。
何に納得したのか分からない。
「なら待っています」
「待つ?」
「次の課題です」
本当に楽しみにしているらしい。
その顔を見ていると。
何だか変な気分になる。
「お嬢様」
「なに?」
「今回は少し難しい方がいいです」
私は吹き出しそうになった。
ついこの前まで。
街一番の冒険者になれと言われていた少年が。
今は自分から難しい課題を求めている。
「変な人」
「よく言われます」
***
放課後。
私は学院図書館の窓際へ座っていた。
本を開いている。
けれど読めない。
次の課題。
本当に思いつかない。
剣は強い。
勉強もできる。
礼儀作法も覚えた。
ダンスも踊れる。
「どうしようかしら」
小さく呟く。
その時。
視界の端に動く人影。
窓の外。
レオがいた。
木剣を振っている。
一振り。
また一振り。
変わらない。
三年前から。
きっとずっと。
私はぼんやり見ていた。
その時だった。
学院の門の近く。
何台もの豪華な馬車が止まっている。
貴族達だろうか。
その様子を見ながら。
ふと考えた。
レオは確かに凄い。
でも。
公爵家の人達はどう思うだろう。
王都の貴族達は。
社交界は。
まだ分からない。
その考えが頭に残る。
***
帰り道。
レオが並んで歩いていた。
「お嬢様」
「なに?」
「何か考え事ですか?」
よく分かるものだ。
「少しね」
「課題ですか?」
またそれだった。
私は思わず笑う。
「そうかもしれないわ」
レオの表情が少し明るくなる。
本当に嬉しそうだった。
「なら頑張ります」
「まだ何も言ってないわよ」
「大丈夫です」
「何がよ」
「だいたい頑張れば何とかなります」
力強かった。
私は笑うしかなかった。
夕日が二人の影を伸ばしている。
次の課題はまだ決まっていない。
でも。
なぜだろう。
胸の奥では。
もう答えに近いものが浮かび始めていた。
レオが届くべき場所は。
学院じゃない。
もっと上。
もっと高い場所なのかもしれないと。
お読み頂き、ありがとうございます。




