第十二話 昨日の舞踏会
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
翌朝。
教室へ入った瞬間だった。
「来た!」
大きな声が響く。
私は反射的に立ち止まった。
「リリアナ様!」
「舞踏会どうでしたの!?」
「本当にレオさんがエスコートしたんですの!?」
令嬢達に囲まれる。
しまった。
春季舞踏会は学院でも最大級の話題になる。
当然。
目立った者の話も広まる。
「落ち着きなさい」
そう言いながら席へ向かう。
だが誰も落ち着かなかった。
「見ましたわ!」
「わたくしも!」
「入場からずっと一緒でしたわ!」
顔が熱くなる。
何を見ていたのよ。
全部だろうけれど。
「普通のことよ」
「普通ではありませんわ!」
ルイーゼが即答した。
「公爵令嬢を平民の少年がエスコートしていたんですのよ?」
確かにそう言われると珍しい。
でも。
「課題だから」
私が言う。
一瞬静かになる。
そして。
全員が吹き出した。
「また課題!」
「万能すぎますわ!」
「もう何でも課題ですのね!」
笑いが起きる。
私は頬杖をついた。
どうしてこんなことになったのだろう。
「おはようございます」
その時。
レオが教室へ入ってきた。
視線が一斉に集まる。
本人だけが分かっていない。
「おはよう」
私が言う。
「おはようございます、お嬢様」
いつも通り。
本当にいつも通り。
だから少しだけ安心する。
「舞踏会どうだった!?」
男子生徒達も集まってきた。
「どうと言われても」
レオは少し考える。
「課題は達成しました」
教室が笑いに包まれた。
またそれだった。
「違う違う!」
「ダンス!」
「エスコート!」
「令嬢達!」
質問攻めになる。
レオは真面目に考えた。
「ダンスは合格を貰いました」
視線が私へ集まる。
最悪だった。
「リリアナ様が?」
「そうです」
「やっぱり踊ったんですのね!」
余計なことまで言う。
教室がさらに盛り上がる。
私は机に額をぶつけたくなった。
その時。
「なるほど」
アレクシスだった。
面白そうにこちらを見ている。
「課題は順調らしいな」
「そうみたいね」
「次は何だ?」
その言葉に。
私は止まった。
次。
確かに。
舞踏会の課題は終わった。
また新しい課題を考えなければならない。
なのに。
何も思い付かなかった。
ただ一つ。
頭に浮かんだのは。
昨日。
一緒に歩いた時間だけだった。
私は窓の外を見る。
そして小さく息を吐いた。
どうしてだろう。
最近。
課題を考える度に。
レオと一緒にいられる理由ばかり探している気がした。
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