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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第二章 貴族社会編

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第八話 約束

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 春季舞踏会前日。

 学院の授業は午前で終わりだった。


 教室は朝から騒がしい。

 話題は当然、明日の舞踏会。


「緊張しますわ……」


「私は楽しみですわ」


「どなたと踊るんですの?」


 参加するのであろう令嬢達が盛り上がっている。


 私は窓際の席で本を開いていた。

 もちろん内容は全く頭に入っていない。


 明日のことを考えていた。


 舞踏会。


 そして。

 レオのことを。


「お嬢様」


 本人だった。


「なに?」


「明日ですね」


「そうね」


「課題の日です」


 やっぱりそれだった。


 私は思わず笑ってしまう。


「舞踏会は課題じゃないわよ」


「舞踏会で恥をかかないことは課題です」


「そうだったわね」


 レオは真面目だった。


***


 そのまま授業は終わり。

 放課後。


 最後のダンス練習。


 舞踏室には私とレオだけ。


 音楽が流れる。

 手を取る。

 歩く。

 回る。


 最初の頃とは比べものにならない。


 自然だった。


「完璧ね」


 気付けば口から出ていた。


「本当ですか?」


「ええ」


「良かったです」


 レオが嬉しそうに笑う。


 私は少しだけ視線を逸らした。


 こういう顔を見ると弱い。


 本当に。

 弱い。


「これなら明日恥はかかないわ」


「それなら課題達成ですね」


「まだよ」


 私は首を振る。


「本番は明日でしょう」


 レオが納得したように頷いた。


***


 練習が終わる。

 窓の外は夕焼けだった。


 帰ろうとした時。


「お嬢様」


 レオが私を呼び止めた。


「なに?」


 珍しく真面目な声だった。


「一つ確認したいことがあります」


 私は自然と姿勢を正した。


「何かしら」


 レオは少しだけ考えて。


 そして聞いた。


「お嬢様のエスコート役は決まっておりますか?」


 一瞬。


 時間が止まった。


 心臓が大きく鳴る。


 エスコート役。


 つまり。

 明日、最初から最後まで隣にいる相手。


 そういうことだ。


「まだ決まってないけど……」


 私の声は少しだけ小さかった。


 理由は分からない。

 ただ妙に緊張した。


 レオは小さく頷いた。


「良かったです」


「何が?」


「課題がありますので」


 私は少し安心した。


 やっぱりそれ。

 やっぱりレオだ。


「舞踏会で恥をかかないこと」


「そうね」


「そのためには」


 レオが真っ直ぐ私を見る。


「最初から最後まで責任を持つ必要があります」


 夕日が差し込む。

 窓の外が赤い。


「ですので」


 一歩前へ出る。


「明日は俺がエスコートします」


 胸が苦しくなる。


 少しだけ。

 本当に少しだけ。


 嬉しいと思ってしまった。


 きっと課題だから。

 そういうことにしておく。


「……仕方ないわね」


 私は顔を逸らした。


「課題だもの」


 レオが笑う。


「はい」


「必ず達成します」


 その返事に。

 私は小さく頷いた。


***


 窓の外では夕陽が沈み始めている。


 明日は舞踏会。

 本当なら何度も経験しているはずなのに。


 なぜだろう。


 こんなに楽しみなのは初めてだった。


 そして私はまだ気付いていない。


 明日、一緒に会場へ入る瞬間。

 それがただの課題ではないことを。


 まだ。

 気付いていなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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