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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第二章 貴族社会編

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第七話 舞踏会の相手

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 春季舞踏会まで残り三日。


 学院中が浮ついていた。


 誰が誰と踊るのか。

 誰が誰をエスコートするのか。


 そんな話ばかり聞こえてくる。


 大半が呼ばれるわけではないはずだが。


 やはり貴族子女だけあって。

 そういう話題は気になるのだろうか。


***


「リリアナ様」


 昼休み。

 ルイーゼが楽しそうな顔で近付いてきた。


「なに?」


「舞踏会のお相手はお決まりですか?」


 私は固まった。


 考えていなかった。


 正確には。

 考えないようにしていた。


「普通は家同士の付き合いで決まるわ」


「つまり未定ですのね」


 鋭い。


 ルイーゼが少し笑う。


「レオさんは?」


「知らないわ」


 本当に知らなかった。


 気になったけれど。

 聞いていない。


 その時。


「お嬢様」


 噂をすれば。

 レオがやって来た。


「なに?」


「舞踏会なんですが」


 嫌な予感。

 とても嫌な予感。


「相手がいません」


 教室が静かになった。


 近くにいた生徒達も聞いている。


「そう」


 必死に平静を装う。


「困りますね」


 レオが真面目な顔で言った。


 本当に困っているらしい。


 すると。


「なら私が——」


 近くにいた令嬢が口を開く。


 私は反射的にそちらを見た。


 令嬢は少し怯んだ。


 なぜだろう。


 自分でも分からない。


「ありがとうございます」


 レオが頭を下げる。


 私はなぜか落ち着かなくなる。


 当然だ。


 舞踏会なのだから。


 相手は必要。


 何もおかしくない。


 それなのに。

 胸の奥が少しだけ重かった。


***


 その日の放課後。


 舞踏室。

 音楽が流れる。

 いつもの練習。


 でもどこかぎこちなかった。


「お嬢様」


「なに?」


「今日は調子が悪いですか?」


 ドキッとした。


「どうして?」


「三回踏まれました」


 私は足を見た。


 本当だった。


「ご、ごめんなさい」


「大丈夫です」


 レオは笑う。


 それがまた少し腹立たしい。


「何でもないわ」


「そうですか」


 数歩歩く。


 回る。

 止まる。


 そして。

 私は聞いてしまった。


「舞踏会の相手」


 レオが瞬きをした。


「はい」


「本当に決まってないの?」


「決まってません」


 即答だった。


「誘われたりしないの?」


「何人かには」


 胸が変な音を立てた。


「そう」


「ですが断りました」


 今度は私が止まる。


「どうして?」


 レオは不思議そうな顔をした。


「課題があります」


 またそれだった。


 だけど。

 今回は少し違う気がした。


「舞踏会で恥をかかないこと」


「それだけなら相手は誰でもいいでしょう?」


 気付けばそう言っていた。


 レオは少し考える。

 本当に少しだけ。


「そうかもしれません」


 そして。

 真っ直ぐこちらを見た。


「でも」


「?」


「せっかくならお嬢様と踊りたいです」


 音楽が止まった気がした。


 呼吸も。


 思考も。


 全部。


 レオはいつも通りだった。


 課題の話をしているだけ。


 そうなのだろう。


 でも。

 私の胸は全然そう思ってくれなかった。


「……」


「お嬢様?」


「し、知らないわ!」


 私はレオの手を振り払うように離れる。


「舞踏会のことは舞踏会になってから考えなさい!」


「分かりました」


 レオは素直に頷いた。


 本当に。

 どうしてこの人は。


 こんなにも簡単に。

 私の心をかき乱すのだろう。


 窓の外では夕日が沈みかけていた。


 そしてリリアナはまだ知らない。


 舞踏会での一曲が。

 自分の気持ちを誤魔化せなくなる最初の一歩になることを。

お読み頂き、ありがとうございます。

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