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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第二章 貴族社会編

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第四話 夜会への招待

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 数日後。

 私は学院長室へ呼び出されていた。


 別に悪いことをしたわけではない。


 たぶん。

 恐らく。

 きっと。


「リリアナ」


「はい」


 学院長は一通の封筒を差し出した。


 金色の紋章が刻まれている。

 見覚えがあった。


「王都春季舞踏会への招待状だ」


 私は目を瞬いた。


 王都春季舞踏会。

 王都でも有数の社交界の催し。


 若い貴族の登竜門とも言われる場所だ。


「今年は学院からも数名招待される」


「そうなのですね」


「お前は当然選ばれた」


 公爵令嬢だから。

 その言葉は飲み込まれたが、言わなくても分かる。


 問題は次だった。


「首席のレオも選ばれた」


 私は思わず顔を上げた。


「レオも?」


「ああ」


 学院長は笑う。


「平民出身での首席だ。王都でも話題になっている」


 少しだけ胸が熱くなる。

 自分のことのように嬉しかった。


 それを認めるのは悔しいけれど。


***


 教室へ戻ると、既に噂になっていた。


「聞いたか?」


「舞踏会だろ?」


「レオも呼ばれたらしいぞ」


 ざわざわと騒がしい。

 そして当の本人は。


「舞踏会?」


 首を傾げていた。

 本当に何も知らないらしい。


「レオ」


「お嬢様」


 私が声を掛けると、素直に振り返る。


「招待されたそうね」


「みたいです」


 他人事のような返事だった。


「驚かないの?」


「課題ですか?」


「違うわ」


 反射的に返してしまう。


 周囲から笑い声が上がった。

 最近は皆、課題と聞くだけで笑うようになっている。


「舞踏会ではダンスを踊るのよ」


「なるほど」


「だから練習していたの」


「そういうことだったんですね」


 今さら気付いたのか。

 私は少しだけ脱力した。


***


 放課後。

 舞踏室。


 今日も練習だった。


 音楽が流れる。

 手を取る。


 歩く。

 回る。


 以前よりずっと自然になった。


「上手くなったわね」


「お嬢様のおかげです」


 最近はその返答に慣れてしまった。

 前ほど動揺しない。


 ……少しだけだけれど。


「舞踏会では誰と踊るんですか?」


 レオが不意に聞いた。

 私は一瞬動きを止めた。


「普通は婚約者候補や家同士の付き合いがある相手よ」


「そうなんですか」


 レオは納得したように頷く。

 それだけだった。


 なのに。

 なぜか胸の奥が少しだけ重くなる。


「お嬢様は人気がありそうです」


「なに、それ」


「たくさん誘われるんじゃないですか?」


「どうかしら」


 実際そうなるだろう。

 家格だけなら王国でも最上位だ。


 今までだって似た話は何度もあった。


「大変ですね」


「そうね」


「断るのも」


 私は思わずレオを見る。


「断る前提なの?」


「踊りたくない相手もいると思ったので」


 真面目な答えだった。

 少しだけ笑ってしまう。


 そして。

 ふと思いつく。

 本当にふとだった。


「レオ」


「はい」


「舞踏会で恥をかかないこと」


 レオが瞬きをした。


「それを次の課題にするわ」


 言ってしまってから気付く。


 まただ。

 また課題を作ってしまった。


「分かりました」


 レオはいつものように頷く。


「達成します」


 迷いのない返事。


 その返事を聞きながら。

 私は胸の奥で思う。


 本当は。

 舞踏会で恥をかいてほしくなんてない。


 誰よりも格好良くいてほしい。


 誰よりも堂々としていてほしい。


 そして。


 できることなら。


 少しでも長く。


 一緒にいたい。


 そんな考えを追い払うように、私は視線を逸らした。


 まだ認めない。


 認めるには早すぎる。


 だけど。

 いつか認める日が来るのかもしれないと。


 そんな予感だけが、胸の中に残っていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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