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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第二章 貴族社会編

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第一話 ダンスを覚えなさい

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 学院首席。

 その課題を達成してから数日が経った。


 レオは相変わらずだった。


 朝は誰より早く登校し。

 授業を受け。

 放課後は剣を振る。

 そして暇を見つけては勉強する。


 課題を達成したのに何一つ変わらない。

 本当に不思議な人だった。


 問題は私の方だった。


「お嬢様」


 執務室。

 学院から戻った私は、机に肘をついて唸っていた。


 エミリーが困ったような顔で見ている。


「どうされました?」


「課題よ」


「ああ」


 納得したらしい。

 最近のエミリーは察しが良すぎる。


「思いつかないの」


 これは本当だった。


 街一番の冒険者。


 学院剣術大会優勝。


 学院首席。


 全部達成された。


 正直なところ。

 少し前までなら簡単だった。


 無理そうな課題を出せばいい。


 それで終わりだった。


 でも今は違う。


 レオは達成してしまう。


 本当に。

 何でも。


「次は何がいいでしょうね」


 エミリーが笑いながら言う。


「知るわけないでしょう」


「お買い物に付き合っていただくとか」


「却下」


「お茶会のお相手とか」


「却下」


「デー「却下」」


 最後まで言わせない。


 エミリーが楽しそうだった。

 非常に腹立たしい。


***


 その日の夜。


 私は父の書庫にあった本を読んでいた。


 社交界。

 貴族の役割。

 礼儀作法。


 ページをめくる。


 そして。

 ふと手が止まった。


『舞踏会』


 貴族社会において欠かせない文化。


 ダンス。


「……」


 少し考える。


 そして。

 思いついてしまった。


「これだわ」


 険しい公爵家の問題でも。

 国家の問題でもない。


 もっと身近で。

 もっと難しい。


 貴族の課題。


***


 翌日。

 レオはいつものように挨拶をした。


「おはようございます、お嬢様」


「おはよう」


 私は席に着く。


 レオも座る。


 そして。

 真っ直ぐこちらを見る。


「課題ですか?」


 なぜ分かったのだろう。


「まだ何も言ってないわ」


「顔がそう言っています」


 そんな顔をしていたのかもしれない。

 少し悔しい。


「なら聞きなさい」


「はい」


 レオの姿勢が良くなる。

 本当に真面目だ。


「次の課題よ」


 教室が静かになる。


 周囲も慣れてきたらしい。

 普通なら人の課題など気にしない。


 でも。

 レオの課題となると話は別だった。


「ダンスを覚えなさい」


 一瞬。

 沈黙が落ちる。


「ダンス?」


 珍しくレオが聞き返した。


「そう」


 私は頷く。


「貴族社会では必要よ」


「なるほど」


 レオが考え込む。

 本当に考えている。


「つまり」


「なに?」


「お嬢様と踊れるようになればいいんですね」


 教室が静まり返った。

 私も固まった。


「ち、違うわ!」


 反射的に叫んでしまった。


 周囲から笑い声が上がる。


 アレクシスが机に突っ伏していた。

 肩が震えている。

 笑っているのだろう。


「課題はダンスよ!」


「はい」


「私じゃなくて!」


「はい」


「貴族社会で踊れるようになること!」


「分かりました」


 レオは素直に頷いた。


 だが。

 少しだけ考えてから。


「練習相手はどうしますか?」


 私は止まった。


 それは考えていなかった。


 いや。

 考えていた。


 本当は。

 最初から。

 答えなんて決まっていた。


 でも認めたくなかった。


「そ、それは……」


「それは?」


 レオが待つ。


 アレクシスも待っている。


 ルイーゼ達も待っている。


 全員面白そうな顔をしていた。


 最悪だった。


「……仕方ないでしょう」


 私は顔を逸らす。


「私が教えてあげるわ」


 一瞬の静寂。


 そして。

 教室中が笑いに包まれた。


「お嬢様?」


 レオだけが不思議そうだった。


 だから。

 本当に。

 そういうところなのよ。


 私は真っ赤になりながら窓の外を見た。


 その時はまだ。

 この課題が。

 一緒にいる時間を増やすためのものだと。

 自分でも気付いていなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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