第二十二話 首席
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
中間試験が終わった。
そして一週間後。
運命の日がやって来た。
***
朝から学院中が落ち着かなかった。
試験結果発表。
順位発表。
成績優秀者掲示。
生徒達は朝から掲示板の前に集まっている。
「緊張するな……」
「首席誰だと思う?」
「アレクシス様だろ」
「いやレオかもしれない」
そんな声が聞こえる。
私は少し離れた場所でその光景を見ていた。
「お嬢様」
隣にはレオ。
「緊張してる?」
「少しだけ」
意外だった。
「珍しいわね」
「課題なので」
やっぱりそれだった。
私は少し笑う。
「そう」
「はい」
そして。
掲示板に紙が貼られた。
一瞬の静寂。
次の瞬間。
「出た!」
人が殺到する。
騒ぎになる。
歓声。
悲鳴。
ため息。
いつもの風景。
だけど。
今日は少し違った。
「うそだろ……」
「本当に?」
「え?」
ざわめきが広がる。
そして。
人混みが自然に割れた。
私も順位表を見る。
一位。
首席。
そこに書かれていた名前は。
レオ。
総合成績一位。
学院首席。
静かに息を吐く。
取った。
本当に。
この人はまた達成した。
三年前。
街一番の冒険者。
今。
学院首席。
全部。
全部。
やり遂げてしまった。
「おい」
上級生が呟く。
「本当に首席になったぞ」
「平民だろ?」
「関係ないな」
別の誰かが答える。
「レオだからだろ」
その言葉に。
私は目を見開いた。
『レオだから首席だと言われるくらいになりなさい』
自分で出した課題。
そして今。
目の前で達成された。
完全に。
文句の付けようもなく。
達成された。
その時。
「おめでとう」
アレクシスが歩いてきた。
順位は二位。
悔しいはずなのに。
笑っていた。
「ありがとう」
レオも笑う。
「負けたよ」
「また勝負しましょう」
「ああ」
二人が握手する。
周囲から拍手が起こる。
教師達も。
生徒達も。
皆が祝福していた。
もう誰も。
平民だからとは言わなかった。
レオだから。
それだけだった。
気付けば。
私も拍手していた。
自然に。
本当に自然に。
「お嬢様」
レオがこちらへ来る。
人混みの中。
真っ直ぐに。
「課題達成しました」
少しだけ誇らしそうだった。
私は思わず笑ってしまう。
「そうね」
「はい」
「達成したわ」
本当に。
本当に。
よく頑張ったと思う。
三年間。
そして学院でも。
誰よりも。
「だから」
レオが言う。
「次の課題を――」
「駄目」
私は即答した。
レオが固まる。
「え?」
周囲も固まる。
私は少しだけ笑った。
「今日は駄目」
「ですが」
「駄目です」
今日は。
課題の日じゃない。
達成した日だ。
だから。
「今日は褒めてあげる」
その言葉に。
レオが目を見開いた。
本当に意外そうに。
「よく頑張ったわ」
静かに言う。
「おめでとう」
ほんの少しだけ。
レオが照れた。
初めて見た。
その顔が。
なぜだか。
とても嬉しかった。
窓から風が吹く。
青い髪飾りが揺れる。
三年前。
教会で出会った男の子。
無茶な課題を出した。
絶対に無理だと思った。
でも。
この人は。
また一つ。
私の予想を超えていった。
そして私はまだ知らない。
次に出す課題が。
私自身をもっと困らせることになるなんて。
今はまだ。
知らなかった。
お読み頂き、ありがとうございます。




