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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第一章 学院編

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第十九話 初めての庇護

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 中間試験まで一か月。

 学院内では既に首席争いが話題になっていた。


 アレクシスか。

 レオか。

 それとも別の誰かか。


 生徒達は好き勝手に予想している。


 そして当の本人達は。


「この問題はどう解くんだ?」


「こうです」


「なるほど!」


 レオはいつも通りだった。

 首席を狙っている人間とは思えないほど。


 昼休み。

 私は図書館へ向かっていた。


 課題で必要な資料を探すためだ。


 すると前方から言い争う声が聞こえてきた。


「だから平民には無理だと言ってるんだ」


 聞き覚えのある話題だった。


 足が止まる。

 声の方向を見る。

 上級生が三人。


 そしてその向かいにはレオがいた。


「何がですか?」


 レオは不思議そうな顔をしている。

 本当に不思議そうなのがこの人らしい。


「首席だ!」


 一人が苛立ったように言う。


「勘違いするな」


「勘違い?」


「学院で少し活躍したからといって調子に乗るなという話だ」


 周囲に人が集まり始める。

 良くない流れだった。


「貴族には貴族の責任がある」


「はい」


「平民とは積み重ねが違う」


「そうですね」


「なら首席など――」


「関係ありますか?」


 言葉が止まる。


 レオは首を傾げた。


「試験は皆同じ問題ですよね」


「そういう話ではない!」


「そうなんですか?」


 本当に分かっていないらしい。


 私は思わず額を押さえた。


 この人は。

 こういう時だけ絶妙に相手を怒らせる。


「無礼な!」


 上級生が一歩前へ出る。


「平民風情が!」


 その言葉を聞いた瞬間。


「やめなさい」


 気付けば口にしていた。


 場が静まる。


 全員がこちらを見る。


 私自身も少し驚いていた。


「リリアナ様……」


 上級生達の顔色が変わる。


 公爵家。

 さすがに無視できない。


「学院は身分を競う場所ではないわ」


 静かに言う。


「勉学と実力を学ぶ場所よ」


 父や家庭教師から何度も聞かされた言葉だった。


「首席を争うのなら試験で争いなさい」


 一歩前に出る。


「身分を理由に否定するのはみっともないわ」


 沈黙。


 上級生達の表情が強張る。


「……失礼しました」


 やがて頭を下げる。

 そして立ち去っていった。


 残されたのは。


 私と。

 レオと。

 野次馬達。


 しまった。


 少し言い過ぎたかもしれない。


「お嬢様」


 レオがこちらを見る。


「助けてくれてありがとうございます」


 真っ直ぐだった。


 その顔を見ると。

 少しだけ恥ずかしくなる。


「勘違いしないで」


 私は顔を逸らした。


「課題の邪魔をされたら困るだけよ」


 自分でも苦しい言い訳だと思った。


 案の定。

 レオは少し笑っている。


「そうですね」


 全然信じていない顔だった。


「首席を取らないといけませんから」


「そうよ」


「頑張ります」


「頑張りなさい」


 それだけ言って図書館へ向かう。


 だが。

 背中に視線を感じる。


 野次馬達だった。


「今の見た?」


「リリアナ様が庇ったよな?」


「完全に味方してただろ」


「やっぱり仲良いんじゃ……」


 聞こえている。

 全部聞こえている。


 顔が熱い。


 違う。

 そうじゃない。


 私はただ。


 あれが気に入らなかっただけだ。


 そう。

 それだけ。


 図書館の窓際に座る。

 本を開く。


 だが。

 文字が頭に入らない。


『助けてくれてありがとうございます』


 何度も思い出してしまう。


 ふと窓の外を見る。


 グラウンド。


 レオがもう木剣を振り始めている。


 さっきの出来事など気にしていないように。


 一振り。


 一振り。


 真っ直ぐに。


 私は小さくため息をついた。


 きっと。

 これからも何度も同じことが起きる。


 平民だから。

 貴族だから。


 そんな言葉は消えない。


 だけど。


 もしその度に。

 レオが前を向き続けるのなら。


 私は少しくらい。

 味方をしてあげてもいいのかもしれない。


 そんなことを考えている自分に気付き。

 私は慌てて本へ視線を戻したのだった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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