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臨時ダンジョン調査員サクラ

お久しぶりです!


昨年より体調不良が続き一時期休止していましたが、ようやく復帰の目途がつきました。

長い間お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。


今後はゆっくりとですが、更新を再開していこうと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします!

「タクマ、ミドウ?」

「そうじゃ」

「ミドウ、タクマ――あ、日本人だ」


 私が納得したように手を打つとシリウスは頷き髭を撫でる。


「名前の響き、というのかの? おぬしの名とよく似ておると思っていた」

「んー、確かに。っていうかもしかして最初から気が付いてたんですか?」

「ある程度はな。じゃが中には似たような響きの名でこの世界の生まれの者もいる。主も特に何も言わなかったので少し静観しておったのよ」

「そうなんだ……あれ、でもどうして私はそのことを言わなかったんだろう?」

「それはわからんが……お主たちのようにこの世界に流れてきたものをワシらは『流れ人』と呼んでおる」

「流れ人……」

「いかなる理由か、異なる場所よりこの世界にやってくる者じゃ。異なる論理感や教養を持ち多くの知識、知恵を持っておる。まぁ高度すぎて再現できないような技術も多くあるがの」


 そういえばいつか道で出会った宿屋のおばあさん、あの人の旦那さんも流れ人だったんだろうか?


「じゃが自分から言わなくて正解じゃな。流れ人はこの世界に様々な恩恵をもたらしてきた。中にはその『力』をわがものにしたいと考えておる者もおるからの」

「そう、なんだ。だから言わなかったんですかね」

「何かひっかかるのか?」

「んー……なんていうか、伝えることを完全に忘れてたというか、口に出さないように無意識に何か……」


 シリウスは黙ってカップのお茶を飲み切ると茶請けとして出していたお菓子を頬張る。

 このお茶菓子はファリアがここにある材料で作ってくれたマガリオッサ名物のお菓子らしく、控えめな甘さと柔らかさが病みつきになる。

 見かけによらず甘いものが好きなのか3個ほど続けて食べると満足したように頷き口を開く。


「まぁなんにせよおぬしはこの数か月で色々な発見をしてきた。流れ人がこの世界に与える恩恵は様々だが……そうじゃな、おぬしはタクマよく似てアイテムに愛されておるようじゃな」

「それが、アイテムリンカー?」

「そう、アイテムと人を繋ぐ者。だからこそおぬしに頼みたいことがある」


 シリウスは懐から一枚の手紙を取り出すと机の上へと置く。


「ここには冒険者ギルドからの依頼書と一枚の許可証が入っている」

「許可証?」

「そうじゃ。そして依頼内容に関してじゃが……お主を『臨時ダンジョン特別調査員』として雇用したい、ということじゃ」

「ん? え、な、なに?」

「臨時ダンジョン特別調査員、じゃ」

「え、つまりどういう?」

「タクマが就いていた職じゃ。長らく空席となっていたがおぬしの働きを評価して復活させようという話になってな」

「えー、なんか面倒そう」

「ははは、そういうな。まぁ職に就いたからと言って今と何ら変わらんよ。ダンジョンに潜り、商いをし、アイテムを持ち帰ってくれるだけでいい」


 そういうと手紙をついと目の前へと押してくる。

 私はその手紙を受け取ると照明にかざしてみるけど透けて見えるようなことはない。


「中に同封されている許可証があれば他国での活動が楽になるだけでなく、各冒険者ギルドの利用に関しても円滑になる。まぁ冒険者カードの上位の証明書程度のものだ」

「まぁそれならいいですけど……」

「……今この世界はおぬしが現れたことで何かが動こうとしている。冒険者ギルドの中にはおぬしの活躍を怪しむ者もいるが、まぁそちらはなんとかしておいた。それにマガリオッサで現れた自称アイテムリンカーのこともある。どのように転がるかはわからんが、おぬしの存在が何かしらの抑止力になると考えておる」

「よくわからないけど……まぁ普通に生活してればいってことですよね?」

「そうじゃ。肩書を与えたのはおぬしの活躍を考慮し今後動きやすくするためじゃからな」


 冒険者ギルドで肩書を得ることに意味があるのかわからなかったけれど、特に何かを制限されるわけじゃないのなら受けてもいいかな。

 

「それと報酬じゃが、成果に応じて支払うことになる。内容はまだ何とも言えんが、とりあえず前回の『次元トカゲ』の発見に関してはアンパルに家を一軒構えておいた」

「え、家?」

「お主のこの店、ダンジョンへ潜れる者なら問題なく訪ねてこられるだろうがそうではない者にとっては少々利用しづらい。扉の一つはアンパルの冒険者ギルドの裏庭とつながっているようじゃが、アンパルに店舗としての入り口を構えれば利用者も増えるじゃろう」

「あ、なるほど」

「一部の者を相手にするのも悪くはないがこの店は多くの人間に利用してほしいと考えておる。それに向こうは実際には店舗として利用するわけではないしのう。あくまで扉としての役割と割り切るのがいいじゃろう」


 確かに悪くはないかも。

 前に一度はアンパルにもお店を開けないか考えたけど、その時は売地がなくて断念したんだった。というのもほとんどはギルドが管理している土地で普通には購入できなかったしなぁ。

 それにいざというときにアリスやファリアの避難先にするのも悪くはないし。


「まぁ何を成すべきかはワシにもわからんが、今はおぬしの思うように動いてはどうかな?」

「ん、じゃあありがたく。後でその家見に行ってみるよ!」

「パスティに聞けば案内してくれるじゃろう。まぁ気に入ると思うぞ? 何せ同じ日本人が住んでいた家じゃからな」

「そうなの?」

「うむ。まぁ楽しみにしておけ」


 シリウスは不敵に笑うとお茶菓子を何個か口に放り込んで部屋を後にする。

 私も続いて店へと出ると、アリスとファリアが少し心配そうにこちらを見ている。

 

「では邪魔したのう。茶菓子もなかなかうまかったよ」


 片手をあげ挨拶をするとアリスとファリアは頭を下げて見送る。

 シリウスは振り返ることなく扉をくぐると店は静寂に包まれた。


「お、驚きましたサクラ。まさかマスター・シリウスが訪ねてくるなんて」

「そうかな? 前までアンパルに滞在してたから毎日会ってたけど……」

「マスター・シリウスって冒険者ギルドのギルドマスターでしょう? どこのギルドもそうだけど、ギルドマスターって普通はめったに人前に出てこない。特に冒険者ギルドみたいな大規模なギルドのマスターともなると一人でウロウロしているのが信じられなくらい」

「そうなんだ……」


 アリスとファリアは共に頷くと二人で会話を始める。

 あのアリスがここまで興奮しているところを見るとマスター・シリウスはただのおじいちゃんじゃないんだなぁと感じてしまう。

 例にもれず、私も異世界転生の王道を歩んでいたということなのかな。


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