アークの悩み
いつもありがとうざいます!
先日から沢山の誤字報告を頂きました。
しっかり見ているつもりでも、勢いで書いていると間違いが沢山残っているなと痛感しました……。
投稿前に読み返す癖をつけなければいけませんね!
「最近ダンジョンのアイテム屋してないなぁ」
「えっ!?」
「どうしたのアリス?」
「いえ、なんて言うか急によく分からない事を言い出したので……すみません」
「だってさぁ、外出てばっかりでこのお店にいる事が少なくなってきてない?」
「まぁそういう事もありますよ。それに殆どはお仕事なんですから仕方がないと思います」
「そっか……でも、もう明日には王都へ出発だよ? こんなに店主の私がお店を空けてちゃ私のファンががっかりするんじゃないかな?」
「残念ながらさくらを訪ねてきた人はいませんでした」
「え、あ、そう……」
「ところで、その王都へ行く話なんですが……」
「んー?」
アリスがチラリと店の片隅を見る。
そこにはこちらの会話など耳に入らないと言った様子のアークがずっと同じ棚を拭いていた。
「え、どうしたの? 」
「さくらがセイバーンへ出かけた日からずっとあんな感じなんです。どこか抜けていると言うか考え事が頭を支配しているみたいで」
「そんなに王都へ行きたくないのかな?」
「どうなのでしょう。よく考えると私達はアークの事をまるで知りませんからね。彼も自分の事を語りたがる性格ではないようですし……もしかしたら王都にはなにか苦い思い出があるのかもしれません」
「確かにねぇ。ま、でも行かないとは言ってないし行くって返事してきたのはアークだから、何かあれば言うんじゃないかな?」
「そうだといいんですけど」
そんな感じで話をしているとお店の扉が開かれる。
咄嗟にお喋りを止めて営業スマイルを浮かべるアリスを見て少しだけ笑ってしまったが、私もそれを見習わなければいけない。どれどれ、にこりと。
「いらっしゃいませ」
「すまんが、武器の買取はしてもらえるかね?」
入ってきたのは少し身長の低いフード付きのローブを被った男性。
声の感じから歳をとっているように感じるけど詳しい事は全然わからない。きっとローブをすっぽりと被っているからなんだと思うけど。
「大丈夫ですよ。見せていただいてもいいですか?」
男性はローブの下から一振りの片手剣を取り出すとカウンターの上へと置く。
品定めしようと私がその剣に触れる瞬間、いつの間にか近付いていたアークが剣を持ち上げ驚いたように凝視している。
「アーク……?」
「この剣……義兄上より賜った宝剣……! この剣をどこで!?」
あの冷静なアークが珍しく取り乱している。
男性は少し気圧されたのか、ぽつりぽつりと剣を手に入れた経緯を語り始める。
「実はな、つい先日までメリオンやセイバーン周辺を荒らしまわっていた盗賊団がいるんだが」
「ああ、知ってる。確か騎士団が討伐に向かって壊滅したんだよね?」
「あぁそうらしい。そいつらがアジトにしていた元ダンジョンの近くで行き倒れていた男が握っていたのがその剣なんだ。ワシも討伐されたと聞いて木こりの仕事を再開したんだが、あいつらのせいで暫く仕事にならなかったからな。売って生活の足しにしてやろうかと思って取ってきたんだ」
「なぁるほどぉ」
「遺体はちゃんと埋葬してやったんだ、盗賊にしては悪くない死にざまだと思うぞ」
「そ、その男というのはどんな風貌だった!?」
「ひ、髭面の大男だが……」
「そうか……」
アークはじっと剣を見つめると少しだけ悲しげな表情をする。
「さくら、すまないがこの剣を……」
「うん、じゃあ買取しようか。ちょっと待ってね」
私は買取をするためにスキルを操作する。
以前は異空の中へ収納する必要があったけど、このお店の中自体が異空の内部という解釈なのかここでは特に面倒な事をせず買取結果を算出することができる。
「ええと……ん? 測定不能、か」
「どういうことですか?」
「価値がないのか、逆に価値がありすぎるのか……まぁ価値がありすぎるってことはないと思うけどね。ただこの状態だとどこのお店でもあんまり明確な金額は出ないと思う。外見も相当傷んでいるし。おじさん、この剣幾らになればいい?」
「そうだな、まぁ金貨50枚くらいになればいい方かと思うがな」
「じゃあ金貨100枚で買うからここですぐ売ってくれない?」
「いや、そりゃ構わんが……いいのか?」
「どうやらうちの店員の知ってる剣みたいなんだ、むしろウチに持ち込んでくれてありがとうね」
「いやぁ、あんたの店の噂は冒険者やっとる息子から聞いてたからな。たまたま近場のダンジョンに扉があるって今朝訊いたんで訪ねてきて良かったよ」
「はい、じゃあこれお金。又何かあったら来てね! あ、あとこれお土産。うちで最近売り出した塩飴だよ。木こりの仕事する時に舐めると力が出るよ」
「おぉ~! すまんな恩にきる! またよろしく頼むぞ!」
男性は頭を下げると鼻歌交じりに店の扉から外へと出ていく。
私は剣をアークへと手渡すと初めて彼に質問をしてみた。
「ねぇ、アークってここに来る前は何をしていたの?」
「さ、さくら!」
「ん、いや、せめてこの剣のお代に何か教えてくれるかなって。でもごめん、確かに卑怯だったね」
アークは剣を受け取り大切なものを愛でるように撫でる。
「いや、さくらの言う通りだ。本来であれば雇い主には全てを話す義務があると思う。特に私の境遇ではな……。だが、その答えは待って欲しい。……嫌でも王都へ行けば語る事になる。その時に私の処遇をどうするのかはさくらに任せるよ」
「処遇って……まぁ教えてくれるなら待とうかな。ただ、王都へ行っても私もアリスも変わりはしないと思うよ」
「そうか……ありがとう」
その時からアークの迷いは消えたみたい。今朝までの憂いが嘘のように、まるで人が変わった様に明るくなった。
ただそれが明らかに無理をしているように感じたのは、少なくとも彼の事を理解できはじめていたからかもしれない。
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「ん? なんだって? もう一度言ってくれないか?」
「だからぁ! 私一度王都へ帰らなきゃいけなくなったの! なので暫く冒険者はお休みさせて!」
「いや、そんな急な!? 何だ、お見合いでもするのか!?」
「ち、違うよ!? 何でそうなるかなぁ……ただちょっと、小さい頃親の代わりに育ててもらった所から頼みごとをされちゃって。なんでもそれが5日後に予定があるから急遽来てもらえないかっていうの」
「5日後とはまた急な……いや、まぁここからならギリギリ間に合うが」
「だからごめん、準備して帰らないと。いずれ恩は返したいと思っていたし」
「そう、か」
こうして私は相方のセレナが王都へと帰ってしまい暇を持て余しているただの暇人になってしまった。
「冒険者が冒険しなかったらただの無職だろ……」
けれど今更パーティを組んでダンジョンという気分でもないし、元々私はなんでもズバズバと物を言う癖が災いし元々居た街ではパーティを組んでもらえなくなったという前例がある。
最近では少し抑えられてはいるしセレナとは色々な面で気が合うのかお互いに肩肘を張らず付き合えているが、そんな私が数日とはいえ他の人間とパーティを組むなんて出来るかと言われると正直に言ってかなり不安だ。
「あー……これなら私も一緒に王都へ行けばよかった。……いや、他意はないぞ」
誰に言っているのかわからないがとりあえず言い訳をしておく。
「失礼します。エリィ=ゼンヒュートさん、いらっしゃいますか?」
「いるぞ、少し待ってくれ」
ベッドの上で不貞腐れてボーっと天井を眺めているとふいに扉を叩かれ名前を呼ばれる。
声からしてこの宿の店員だろう。
「どうかしたか?」
扉を開けるとそこには赤毛の小さな少女がお辞儀をして待っていた。
「お休みのところすみません。先ほど出掛けられたお連れの方が30分後に渡してほしいとこれを……」
そう言って差し出してきたのは四つ折りにされた一枚の紙。
礼を言って受け取ると開いて中を確認する。
『どうせ暇していると思ったのでメモを残していきます。今朝他の冒険者から教えてもらいましたが、近くの《響きの鼓音》にさくら商店の扉が開いているそうです。何もすることがないなら貯め込んだアイテムを買い取ってもらってきてください』
「なんだ……お使いか」
私はメモを放り出すとベッドへと横になりまた天井を見上げる。
しかしそれも5分と続かず、結局はダンジョンへと出かける準備を始めてしまう。
「ここからなら……ダンジョン行きの馬車で20分ってところか。まぁ夕方には帰れるな」
そう算段をつけると宿屋の主人に事情を説明し《響きの鼓音》へと出かけていく。
なんだかんだ、彼女に会うのは久しぶりだしあれから元気にやっているか心配もしていたから悪い話じゃないなと思い直す。
装備を整え軽く身体を解すと気分も新たに馬車乗り場へと向けて歩き出すのだった。




